2023年7月16日日曜日

黄金比はゼン?

Wagner画廊でのトーク

黄金比なるものが本当に理想的な美を体現しているのか私にはよくわからないし、コンパス定規の幾何の問題を思い出されてあまり好きになれないのだが、好きな人は五角形を線と円を辿って描くことで心が落ち着くらしい。そんなことを言っていたのがパンチョ Pancho Quilici さん。

Pancho Quilici は 今ラテンアメリカ館 La Maison de L'Amérique Latine で大規模な二人展をしていて、そのSF的な地形図のような大きく細かいドローイングは圧倒的だった。(もう一人のMilton Becerraさんも見応えあります)

私にはできないというか、到底やりたいとも思わない世界なので余計に感動。ちょうど見た翌日がパリでの画廊での個展の最終日で「トーク」があるというから出かけて上述の発言を聞いてまたまた驚いたのだった。

 

トークするパンチョさんの後ろの大作の一部。私は絶対やりたくない世界
 

絵だけでなくこれまた多角形が入り混じったようなトンネルみたいな立体とか、流石に建築を勉強しただけのことはある。

それがねじれスペースシャトルみたいな立体にもなって。よく作るよ!

ラテンアメリカ館で展覧会があるのは彼がヴェネズエラ出身だからで、キネティック・アートもそうだが幾何学的なアートでは南米出身の作家が夥しく多いが、パンチョさんの作品は幾何学から投影された宇宙探検的ポエジーがある。

これはラテン・アメリカ館の展示作
 

これとは全く性質を異にした、シンボリックな形と金箔などを用いて私は「日本の絵画ではないか?」と思ったアンナ=エヴァ・ベルグマン Anna=Eva Bergman。彼女の大回顧展がパリ近代美術館で開かれていたのだが、ピュアで素材感の豊かな大作絵画だけでなく、ドキュメントも豊富で、スケッチ帳の構想図などもあったが、そこに黄金比に興味を持った彼女は、シンプルな抽象化された形を作り出すのに丹念な幾何図面を描いていた。私は細かい製図に感心しながらも「作品は直接的に訴えかけてくるものがあるけど、この形描くのにのになんでこんなものが必要なのかさっぱりわからん」とため息。絵の中に時空の座標軸を張り巡らしたようなパンチョ君なら納得だったが、こちらはかなり違和感を感じた。(やっぱり心が落ち着くから? プルターニュの企画で一緒だったイタリア人のAさんも幾何学曼荼羅を描くと落ち着くと言っていたが、そういう人多いのかねー)




上のもっこり形を描くのにコンパス定規を使って、、、(これはスケッチ帳のビデオより)

山の形も計算が必要。ほんとかよ〜???

これは形がなくて安心? 形は私が作った(笑)

アンナ=エヴァ・ベルグマンの回顧展は16日まででもう終わっていた。フィガロジャパンに日本語の解説+写真があるのでご参考に:https://madamefigaro.jp/paris/230527-anna-eva-bergman.html 

パンチョ君(君呼びするのは友達の友達だったから)の方はあと数日、22日まで。 La Maison de l'Amérique Latineのサイトをご参考に:https://www.mal217.org/fr/expositions/loutreligne-milton-becerra-pancho-quilici 

そうそう二人展のインスタレーションの写真はインスタに載せていたのだった。

2月にもブログで紹介しましたがラテンアメリカ館は質の高い展覧会をしますよ。


2023年7月15日土曜日

残った納入品と花火

これが私の荷物でしたが
お笑いです。知り合いの車に大きな作品と私と一緒に出発するはずだったのに、おそらくは彼の家族の荷物で作品の入るスペースがなくなって、、、
私だけなら乗れるのだが、実はまだパリにいて終えた方がいいことも色々あって、やめー。
せっかく冷蔵庫の残り物食べ切ったのに〜(笑)
 
ことの次第は5月に戻る:
 
作品をいくつか持っている知り合いコレクターのカップル、5月の二人展の期間はずーと田舎に行きっぱなしで、見てもらえないなぁと諦めていたのだが、展覧会の最終日にその一人が画廊に来てくれた。私は歯医者さんの診療日で行かなかったのだが、画廊から「大きなドローイングが売れた」と電話があった! 私には急に最後に表れてもう田舎にほぼ引退だし「まさか」だったが、買ったPさんもそのつもりはなかったから当人もびっくりした!?:これって「心揺さぶった」ということなので嬉しい限り。
 
画廊主が領収書のために名前を聞く− その姓Dは「あれっ?」と思う名前なのだが、その彼らの新しい田舎の住所を全く他人の画廊のスタッフは承知していた! 「なんで〜?」 実はその家はスタッフの奥さんのものだった(つまり売主)ということで、、、 
 
「ありえないよなー」と後日(=買ってもらった作品は展示してあった糸杉シリーズの未公開作品で、展覧会の後いつものように私自らアトリエで額装、それができた際に)話していたら、スタッフさんは夏休みにその村に行くという。じゃあ一緒に持って行こうよということに決定! これが前回書いた「南仏への急な出発」の所以だった。
 
それが昨晩電話があって、結局車にはいらないことが判明!梱包したから縦横10センチずつは大きくなっているが、子供三人の家族、荷物が満載されて余裕が無くなったのだろう。
座席はあるから来るかーと言われたが、 まが抜けているし、コレクターさんの家も夏休みで家族が来るので一泊しかできないし、それになんといってもパリで進めたい仕事がいくつもあって〜、、、:これで話は冒頭に戻りました。
 
しかしせっかくしっかり準備したのにこんなことってありか〜? なんか気が抜けてー、昨晩はテレビで花火を見た(昨日はパリ祭)。
テーマが「フランス海外領土」がテーマで花火の色も南国風に赤、黄、オレンジ、緑といつもと配色が異なり、音楽も楽しいし、かつ風が強かったのかエッフェル塔から放たれる花火がシンメトリーにならずに流れるところがよかった!
しかしエッフェル塔、シャイヨー宮、シャン・ド・マルス(公園広場)、このために作ったとしか思えないほど素晴らしいロケーションじゃないですかと7月14日の花火を見るたびに思う。死ぬ前にシャイヨー宮の上あたりから本物みたいなー
 
 

 
今日になりコレクターさんとその後に会いに行く予定だった田舎の知り合いに電話して、第3の訪問予定先だったMさんに電話して考えるところ、Mさんのところは勝手知ったるリュベロン(例の21年に2ヶ月も滞在したドラ・マールの家のある地方)、あそこは天国、「やっぱり息抜きに行くわ〜」とまたまた予定大変更。
 
それから一気に、南仏から戻ったらすぐ手をつけられるようにと昨日水張りしておいた紙二枚にドローイングしました:テンパってます(笑)←それほど焦るほどのことはないのだけど、この夏はできればした方がいいということがいっぱいあって。。。


2023年7月12日水曜日

バスキア サウンドトラック

光陰矢の如し、本当に最近はあっという間に時間が経ってしまう。自分の能率がよっぽど悪くなったのかと訝しんでしまう。
 
最近何をしているかというと、実はあいも変わらず 展覧会の準備で、、、 9月にパリの違う画廊で個展があるのだが、まずは夏休みになるまでにカードなんか相談して決めなければならない。それと画廊のチョイスが5月のとは全く違っていて、額に入っていた作品総入れ替え!そりゃそうでしょう(同じ町で同じものばかり展示できない)という感じもするが、実は裏にはまた画廊とのズレがあって、意外に悩み多いです。まあそれは将来の話題にして、、、。でも「今から額装してなくてもいいのでは」と思われるだろうが、それに必要な物を売る店が夏休みになると面倒だし、8月末から9月に地方のグループ展が2つあって、それが単純に次から次へとの移動がしにくいスケジュールで、今できるものは早く切りをつけておきたい、上手くいけば私もバカンスしたい(9月になったら無理なので)という思惑。
 
それが今週末から急に南仏に行くことになって:これもまた行ってからのお話にして、、、

というと何も書くことないので、インスタにあげたバスキア展のお話でも。といっても今更バスキアの話は書く必要もないけど、、、見たのはパリのコンサート会場のフィルハーモニーの展覧会会場、つまり彼の音楽との関わりがテーマ。チャーリー・パーカーなどの黒人ジャズミュージシャンをヒーローとしていた彼だが、1980年頃のNo Waveと言われるノイズ派みたいな数々のバンドと強く関わっていて、彼自身もクラリネットを「習わずに」 演奏してバンドに加わっていた。その連中のコンサートのチラシとかレコードジャケットとか書いて描いて?)、そういうあまり展示の対象になってなかったものとかそん頃のバンドや彼の写真とかグローバルに紹介されている。その優れた落書きグラフィックをそのまま絵にしてしまって、私だけでなく80年ごろ彼の絵を初めて見たペインターの多くは好き勝手に無茶苦茶やりやがって、くそー」と嫉妬したのです(←若い方へ:ほんとにあんなのは初めてだった!その後すぐに亜流であふれるようになった。それが美術史というもので)
 
 

これは83年のkokosoloという大きな絵で繰り返し貼られた落書きコピーがジャズのコード進行と呼応していると言われればまあ納得はしますが、チャーリー・パーカーと聞き見比べてどうですかねー
 
 
 
マリア・カラスも好きだったと言われると、「それで〜」と言う気もしてきますが(贔屓の引き倒しみたいで)

 「バスキア、サウンドトラック」展、7月30日までだったのでもうすぐ終わりです。 
 
ルイヴィトン財団で「ウォーホール x バスキア」もやってます。サウンドトラック展はコロナで延期されて今の時期になったと言うことで、二つを合わせようとしたことはないらしい。私はウォーホールもバスキアも高く評価してますが二人のコラボは全然面白いと思ったことがないのでこちらは無視。