夏の大デッサンに挑む前に、きっかけは忘れてしまったが「マーラの死」をテーマに連作を描いた(毎日のデッサン、5/26〜6/9参考)。頭にターバンのようにタオルを巻き、暗殺されてバスタブにぐったりと横たわる、ダヴィッドの有名な絵の本歌取りである。マーラを殺したのは穏健派のジロンド派のシャルロット(Charlotte Corday)だが、この女性による殺害は謎があるのか(調べたことはないので全く知らない)、女性に弾劾されて然りと思うる男心をくすぐるのか(これは私の解釈)、文学や絵画のテーマになっている。
現代作家で扱った人はいるのかなと検索してみたところ、Andrea Mastrovito というイタリア人の若手作家(78年生、ニューヨーク在住。彼のサイト)の、彫刻上にダヴィッドの絵が写されたものが見つかった。鉛筆? 何故左右逆なのだろう、複写? 彫刻との関係は? まさかダヴィッドだからダヴィテ像というギャグではなかろうし、、、で本物を見たいなと思ったら、何たる偶然か、南仏モンテリマでこの夏展示されていた! というのもGさんのアルデッシュの田舎の家への最寄りの駅はモンテリマ、だから彼の誘いにホイサッサと乗ったのであった(8/26記載)。
さて、このモンテリマの展覧会は、長く牢獄として使われていた町の中心にある中世の城 Château des Adhémar(アデマール城、主に12世紀に築城) で行われている個展で、城という空間と歴史をお背景にしたサイトスペシフィック(場特有)な展示が試みられている。
かくして例のマーラの砕けた彫刻は城内の壁石がころがる「強者どもは今何処」的光景と呼応し、牢獄になっていた城の母屋(下写真)にはホモが理由で2年間ブタ箱入りしたオスカー・ワイルドが牢獄で知った死刑囚の話を元にし、刑罰の残忍さを訴える長編詩"The Ballad of Reading Geôle"をイラストしたカフェの丸テーブルが複数並んでいるという具合。写真はその丸テーブルの一つだが、テーブル上に新聞が開かれているように見えるが、実はこれはテーブルに直に書かれた鉛筆デッサン。その上に実物の本やナイフ、コインなどが置かれているが、その表面もすべて細かく鉛筆デッサンが施され、新聞の「騙し絵的効果」を一層引き立てている。勿論マーラも彫刻上に丹念に鉛筆描き、つまりMastrovitoは何にでも鉛筆でシコシコと描く作家であった!
上階に行くとカラフルなプラスチック定規で出来たステンドグラス。この定規にも鉛筆デッサン。それから園芸雑誌の写真をこれまた丹念に切り抜いたお庭があり、、、本当にこの作家は細かい仕事が好きらしい。
色々アイデアがあるばかりか、その背後に細かい手仕事があり、加えて何にでも鉛筆で落書きしてしまう無邪気さもベースにあるように思え、所謂「現代アート」とは少し切り口が違うかなと、私はかなり好感を持ったのだが、流石に「現代アート」展、説明パネルには、例えばマーラの作品では「砕かれた彫刻は社会の変動と抗争を表わし、挫折したマーラの夢を象徴する」なんていう言わずもがなのことが書いてあってうんざりさせられた。まあこれは学芸員の所為かもしれないので、目をつぶることにしましょう。(結局ダヴィテと左右反転の謎は判らずじまい)
10月4日まで
ヌガの都、モンテリマに行かれる方は少ないだろうが、リヨンからも遠くないし、アヴィニョンやアルルに行くついでどうでしょう?
(モンテリマ近辺の他の二つのお城でも同時展示しているとのこと。私は知らなかったが、こんな大規模に展示させてもらっているし、NY在住だし、マストロヴィト君、既にかなり活躍しているのかもしれないけど、今後注目です)
Exposition Andrea Mastrovito
Château des Adhémar - Montélimar
jusqu'au 4 octobre 2015
FBでなくてブログの方にコメントをと言う、ここの家主様のお薦めに従い、こちらにFBコメントをコピーします。
返信削除いいですね。Montélimarと言えばヌガー、白くて中にピーナツなんか入ってて、歯にくっつくやつ・・・食べました?(ってパリでもいっぱい売ってて、わざわざ買いに行くものでもないか。)Maratを殺害したCharlotte Cordayの死刑判決文の原文、だいぶ前にMusée de la Police(パリ5区、無料ですが、ちょっと猟奇的過ぎるかも?)で見ました。すごい美人だったらしい。マダムMaratが「絶対家に入れない」と遮るのを「まあまあ、入ってよい。」なんて、皮膚病治療のために入浴中の部屋まで入れるなんて、よっぽど美人じゃないと有り得ないよねー・・と思うのはきっと私だけじゃない。これ以上書くとやたら長くなるので続きはまた後日。
Montélimarのヌガといえば比較的最近のブリジット・フォンテーヌの歌にもあります。彼女はブルターニュのモルレ生まれだそうで、そこはアルデッシュの前に行ったバカンスで降りた駅でした。実は私は歌がなかなか聞き取れなくて、、、しかし今やこんなビデオと歌詞をリンクするサイトがあり、助かります。でも何が言いたいのかさっぱりわからないけど(面白いからよい?)
返信削除http://www.musictory.fr/musique/Brigitte+Fontaine/Le+Nougat