2015年12月30日水曜日

ベルナール・タピ事件の新たな展開

昨日投稿の銀行口座の維持管理費、有料化の背景に関しpommeさんから貴重なコメントを頂いておりますので読んで下さいね(コメントがクリックしないと出てこないのですが、この設定の変え方が見つかりませんのでご了承ください)

銀行と言えば13年に投稿の怪人ベルナール・タピの訴訟事件、今月になって新たな展開があった。

前の投稿を読み直してもらいたいが、超簡単に復習すると、1993年に彼がアディダス社を売却した際に当時の国立クレジ・リヨネ銀行が不当に利ざやを稼いだとして彼は同銀行を訴えたが、その後クレジ・リヨネ銀行は倒産、そのため彼の訴訟相手は不良債権などを処理するCDRという国家機関となった。2008年に15年間紛糾する訴訟を解決するためサルコジ政府は調停審査という異例の処置をとり、結果彼に賠償額4億ユーロを払った。このタピへの「優遇」を疑問視して検察は11年より調査を開始、13年の投稿の2013年には元財務省大臣クリスティーヌ・ラ ガルド女史を含め大規模な事情徴収となった。

そして今月3日、クレジ・リヨネには不正はなかったとしタピに4億ユーロを返済せよとの控訴院の裁決が下った。タピはまたまた破産だがまだまだ闘志満々(?)、最高裁に行くしかないとするばかりか、20日には政界に復帰するとも、、、(それを期待する人がいるとは私には思えないが)
それに加え17日には、当時の財務大臣、現IMF総裁のクリスティーヌ・ラ ガルド女史(写真右)は「注意不行き届き」の容疑で訴えられることとなった。

以上粗筋は書きましたが、何しろ20年越しの事件だから本当はもっともっと複雑。法律+財務という不得意分野ということもあるが、ルモンド紙サイトのビデオ「5分でわかるタピ事件」を見てもあまりよく分かった気がしない。pommeさんのような事情通からの補足コメントを期待したいところです。

ともかく以上、熱心な読者(仮想?)のためのご報告として
 

2015年12月29日火曜日

銀行の横暴

Je parle de l'histoire des frais de tenu des comptes que BNP nous imposera à partir de janvier prochain. Il reste encore deux jours à écrire votre désaccord à la banque ... (réf)

月初めに帰って来たとき、銀行口座サイトを開いたところ、11/18日付で「来年から口座維持費を月額2.50ユーロ(現在レートで約330円)取りますというメールが届いていた」。勿論今まで個人口座の維持費はゼロだった。日本の定期貯金の利率が限りなく零に近いなんてどころではなく、私のような利用者は負の利率の口座を持ったようなもの。
そのときは「やっぱり私の銀行はアメリカに借金があるから、そのせいだろうな〜」と勝手に推測した。
どういう話かと言うと、昨年、BNP-Paribas銀行はアメリカのイランやキューバ等に対する経済封鎖に反し、それらの国とドル建ての取引を行ったと言う理由で65億ユーロ(8600億円)の罰金が課せられ、罰金額が行き過ぎではないかという仏政府の声もあったものの譲歩はなく、米国で商売が出来なくなると困る同銀行はそれを受け入れたのだった。
(この米国がフランスの民間銀行を罰しうる不思議な訴訟は私には難しすぎるので、良く知りたい方はルモンド紙の記事などをご参考に)

さて、そのBNP-Paribasは私を含め700万人もの一般利用客があり、これで年間2.1億ユーロがやすやすと銀行の懐に入る計算になるが、前記の罰金との差はあまりにも大きいのでやはり私の予想は的外れのようだ。それどころか実際BNPだけでなく、すでに維持費を取っている銀行もあれば、多くの一般銀行がその方向にあるという。
カードの普及で減ったとはいえフランスではまだまだ個人用の小切手も流通しているし、一般銀行に口座がないと困る。だから小額とはいえ横領されたような気がする。こんな不正義がまかる通るはずがないと思うが、社会党政府は威勢良くテロ戦争の旗を振るばかりで、こんな小市民の疑問には関心がない様子。というか一般市民もテロとクリスマスに押し流されて関心がないのか、ソースとして参考にさせてもらったLa Dépêche紙の記事の「ノンと言おう」という「フランス銀行利用者の会」の呼びかけが盛り上がっているということはきいたことがない。私は遅ればせながら今日やっと、銀行に書き留めで「拒絶書」を送ったところ。(効果があるかは悲観的だが、何れにせよ年内の送らないと全く意味がないのです)

しかし投資の負債も国が助けてくれたし、手数料も勝手に設けられるし、こんな銀行経営でいいのなら私にもできそうですなー。

2015年12月19日土曜日

あざなへる勝利と敗北

先週日曜のフランス地方選挙、結局極右のFNは北部でも南部(プロヴァンス・コートダジュール)でも、社会党が決選投票への出馬を取りやめ、FN阻止を有権者が意識したため共和党に予想以上の大差で敗北し、大事にはいたらなかった(つまり一つの地方も制覇できなかった)。

だから前回はちょっとのんびり、書きかけだった「日本旅行記」を書いたが、フェースブックで「FNは各地で破れた!」との威勢のいい投稿が廻ってきて私はかなり驚かされた。決選投票でも28%、682万票:これは第一次投票より81万票増で新記録! つまり左右連合してやっとのことで突破口を塞いだにすぎない。前々回書いたように上記2地方の議会では右派の共和党と極右FNしかいないという異常な構成になる。結果的にはFNの敗北とは決して言えない。

社会党は大敗するという予想に反して5地方で勝利し(図のピンク)、まあこれをポジティブとみればポジティブ、圧倒的勝利ができなかったものの共和党は勝利は勝利(図のブルー)。党内右派の候補の方がいい結果をだしたので、党首サルコジは自らの路線に間違えはなかったとし、決選投票で反FN民主連合をとることを拒否した彼を批判した手強い部下(?)ナタリー・コシゥスコ=モリゼ(4年前に旧ブログで紹介)を副党首から即解任した。

かくして勝利と敗北はあざなへる縄のごとし、楽観的なオランドもごり押しのサルコジも、1年半後の次期大統領選では第一次投票でFNマリー・ルペンに継いで2位につき*、決選投票で逆転という上記2地方のなさけないシナリオを採択したかに見える。彼らの耳には私のご神託どころか、多くの投票者の「警鐘」も届きそうもない。

注:三党体制になってしまったフランスだが 、コルシカ島だけは変わっていて(?)独立派が勝利、だから地図は黄色です

* 追記:投稿してからお昼のニュースを見ていたら、三者が立候補したとしての最新の世論調査結果ではオランド、サルコジ、ルペンが 22:21:27% とのこと

2015年12月14日月曜日

無量寺への旅

串本の無量寺、ここにはなにかすごい絵があったはずだと思ったのは白浜のホテル。だが私のガイドブックにはページの片隅にお寺の写真があり「応挙芦雪館がある」と書いてあるだけで、見たい絵が何だったかも思い出せない。確か大きな龍でなかったか?という程度の裏覚えなのだがこのお寺の名前には確信があった。

串本は紀伊半島南端の潮岬のある町。無量寺は駅から徒歩で10〜15分ぐらいと近いから2時間後の次の列車までにはちょっと海岸で「海水採取」もするつもりだったのが、、、

お寺に着くと「猫目の虎」* の絵のポスターが張ってあったから「ああこれだったか」と記憶違いではなくてほっとする一方で期待に気持ちが高鳴る。11月のとある日(といっても土曜だったが)に来るのはやっぱり私ぐらいで、鍵を開けて入れてもらう。デジタル再生の襖絵と他の収集品のある展示室と本物の襖絵のある収蔵庫、そしてデジタル再生の襖が入った本堂の三部形式で、オリジナルを見るのと見ないので閲覧料がかわるのだが、ここまで来て本物見ない人っているのだろうか? 

 「すごい絵」は何かと言うと先ずは襖一杯にはみ出んと登場する「虎」、そしてその対面の、こちらは身体が襖から飛び出してしまって頭がぐっとアップになった「龍」(つまりこれも私の完全な記憶違いでもなかった☺)共にかなりグラフィックな現代的構図。皆さん、これが本堂で阿弥陀様の左右にあったなんて想像がつきますか? (下の写真は本堂のデジタル複製品。これも撮影禁止でサイトから転載)



無量寺のサイトに説明に詳細は譲るが、津波で全壊した寺を再建した際(1786)、住職が親交のあった円山応挙に襖絵を依頼、応挙は障壁画12面を描いたが、多忙な上に年齢的なこともあったため、弟子の長沢芦雪(ウィキ)に名代として京から南紀に向かわせた。応挙は優れた技術で几帳面な絵を描く(私の意見)。その師の技術を習得した芦雪だったが、この南紀串本で才能が開花、師にはなかった開放的な画風に発展する。「虎」「龍」は応挙には絶対あり得ない大胆な構図、そして師から受け継いだ腕前の鶏や鶴、それ以外にも自分の子供時代を描いたような、寺子屋で遊ぶ楽しく生き生きした「唐子遊図」と、この寺に残した43面の襖絵はどれも傑作。彼は約十ヶ月間の滞在中に270点余りもの絵を描き、まさに画業の絶頂期を迎えた。当時33歳。その後京都に戻った彼は子供2人に夭折され、自身も46歳で大阪で客死する。

ところであんな虎と龍での阿弥陀様の挟み撃ち、その当時の串本は田舎も田舎、おそらくほとんど住民は襖絵など見たこともなく、意外に誰も驚かなかったのかもしれない。それどころか京都から来た大先生と崇められ一気に彼の才能が開花したのではないか。(自分のことを引き合いにするのもなんだが、私でも田舎のアーティスト・レジデンスで村民に何でも感心されると調子に乗って色々作ってしまうので)

ともかく見学は監視の方と一対一だったから、気兼ねをしないこともなかったが、絵に圧倒され、たっぷりと見せてもらった!

串本にはトルコ人なら誰でも知っている「エルトゥルール号話」(ウィキ)の記念館もあったので、パリのトルコ人知人へのお土産話にと思わないでもなかったが、それどころではなくなり、紀伊勝浦の島の中の海岸温泉に行くべく走って駅に戻ることになった。

ところで白浜は親戚が今、パンダとペンギンの飼育で有名らしい「アドベンチャー・ワールド」で仕事をしているので見に行った。 ちょっとファミリー向け(つまり子供向け=日本の常か?)にし過ぎるところもあるが、それはそれで十分楽しめた(プログラムが頭に入っているガイド付きなので尚更)。上の写真はそのイルカショーと餌やりでした☺

無量寺のウェブサイトは何かわかりにくい。収蔵品案内ページへ入って一間一間見ること(頁下の「XXの間へ」というのを随時クリック)を推薦します。

串本は遠いけれど最近は「熊野古道」もあるので近くに行く機会は増えたかも。そのついでに?(でも興味ない人には閲覧料高いでしょう)

* 有名なお話ですが、猫目になったのはその頃の日本人は虎を見たことがなく一種の架空の動物で、芦雪は猫をモデルに写実(?)したからです

2015年12月12日土曜日

明日の選挙

前々回書いたように、日曜に現内閣で13の広域地方にまとめられたフランス地方議会選挙の第1回投票があり、極右のFNが全13の地域圏のうち6地方で第1党となった。
全国の得票率でもFNが約28%で首位。サルコジが党首の共和党中心の候補者リストが約27%で続き、オランドの社会党中心のリストは約23%。

この地方選挙では第一投票の得票率10%超の政党が明日の決選投票に進出。ここで首位に立った党が議席の25%を獲得し、残る 75%の議席は首位等も含め得票率に応じて割り振られる。つまり首位に立つと安定多数が得られる仕組み。だから一層FNが単独与党になると大変と、社会党は3位になった地方から撤退(但し中央からの指令に造反1名)、つまりその地方では6年間議席ゼロとなる決断をしたが、逆にサルコジは反FN戦線結成を拒否した(党内にも反論が多く、いまのところは失策。いつも書くようにやっぱり彼の考えていることは読めない)。

極右のFN支持でも政権を取らせるつもりはないという層が多い不思議なFN投票者、および社会党も共和党も国民(特に51%の棄権者)に「民主主義を守れ」と強く訴えており*、広い連合をすればFNより投票数は多くなるので、決選投票の世論調査ではFNが与党になる地方はないということだが、私はそれを当てにしていて良いか疑問を持っているし、そもそも多くの地方議会が与党と極右しかないということになるのが考えに余るほど異常なこと。やっとのことで洪水を土嚢を積んで押さえているような。。。

* 首相のヴァルス君は危機感あまってか士気高揚にか「内戦になる」とまで言って、、、どうも「戦争」という恐ろしい言葉が最近インフレ気味で私は気分が悪い)

「洪水の水位上昇」を所為を連続テロにするのはあまりにも安易すぎる。党首で次期大統領選候補であるマリー・ルペンは北部で主に失業問題により労働者層をうまく懐柔し、南部地中海地方の筋金入りのナショナリストの姪のマリオン・マレシャル・ルペンは主に移民と保安問題で富裕層に支持され共に40%を越す投票率。共に大衆受けしやすいプロパガンダが両側からに浸食している。

「人を変えて体制を変えよう」というマリー・ルペン(どういう体制なのかが問題なのだが)に対し、オランドもサルコジも再選戦略ばかり練って、彼女を応援しているとしか私には思えないのだが、、、国民の大多数も望んでいないのだから二人とも「出馬しない」と即宣言しなさい。それだけでも水位が下がる。これがフランスの将来を憂う私の今日の御神託です。

(最近のマリー・ルペンはニコニコ顔が多くて、、、写真掲載して右傾化した日本で人気が上がると困りますので今回も写真なしです)

2015年12月6日日曜日

ジンガロ

 火曜日に見に行った「出し物」は「Zingaro(ジンガロ乗馬劇団)」。馬、騎手、楽団という大所帯だから日本では知られていないだろうと思い、これまた説明が大変だと思っていたら、何のことはない、既に東京公演もして有名みたい。助かったとばかり先ずは某サイトからプレゼを転載です:

 「『ジンガロ』は、主催者であり制作や演出を手掛ける鬼才・バルタバスが、さまざまな国籍の団員や馬を率いて、パリ郊外のオーベルヴィリエを拠点に世界各地で公演を重ねている騎馬劇団。1984年の創設以来、多彩な民族や文化にインスパイアされた独自の舞台作品を創造し続け、そのアートと馬術が融合した類まれなパフォーマンスは、世界中で高い評価を受けている」

さてこの有名な劇団、色々な友達から薦められていたが今まで見たことがなかった。実際私は「馬」にそれほど興味がないし、写真を見るととてもキレイそうで、もう一つ自分の趣味でないだろうと思い込んでいた。それが今回見ようと思ったのは「創設者で演出家の58歳のバルタバス Bartabas が10年ぶりに舞台に出る」そして本人が「ジンガロの出し物の最高傑作の一つ」と語っているのを聞いたから。加えて"On achève bien les anges" (「天使のとどめを刺す」)というタイトルも気になっていた*。そこで予約サイトを見たところ、前から三列目の良い席が一席だけ空いていて(12/1記)、その後は年末までほぼ満席。これは行くしかないですよね。

上のプレゼにあった会場のオーベルヴィリエ Aubervilliers:ここは何十頭の馬の厩舎であり、練習場であり、劇場である。そしてここには何十人ものスタッフが住んでいると言う。
開演待ち用のレストラン
地下鉄(Le Fort D'Aubervilliers)からすぐの大通り沿いに西部劇遊園地の入り口のような木の大門があり、その中に大きなサーカステント型の大きな木造のレストランがある。中に入ると今までの出し物で使われた衣装や道具などが飾られ、写真やビデオもあり、開演までの時間を過ごすようになっている。公式開演時間を十分に過ぎた頃、道化姿の楽団が登場、席ごとに随時劇場に誘導される(劇中には言葉はないが、このときだけは必要最低限のフランス語が必要かも。まあ最後まで取り残されても案内してもらえるだろうが)。

これも木造の、教会のような劇場に入ると、直ぐに馬(馬糞?)の匂い。廊下のしたは何と厩舎で、馬を上から見ながら、所謂サーカス型の丸い舞台沿いに入場。舞台は馬の為に白い砂がひきつめられているが、この砂が光が当たったり外されたりするだけで意外に幻想的な効果を生む。サークルを疾走する馬に乗った騎手が所謂「曲芸」もしたりするが、ジンガロのオリジナリティーは馬が勝手にお互いどうし撫であったり、ごろんと寝たり、鼻を鳴らしたり、自然体としか思えない自由さが「スペクタクル」に反映されていること。その一方ではどこまで調教されているのだろうと思えるまで音楽に合わせたり、人に答えるようしてステップを踏む(踊る?)。そしてその指揮をとるバルタバスは大きな仕草などなく、かすかな身動きで馬と以心伝心。これはお見事。彼は調教ではなく「馬を聞く」そうだ。
こうした馬と人の夢想的なスケッチ(彼によれば「儀式」)は、多くは堕した天使が馬に付き添われ庇われているような印象を与える。これは人間の奢りに対するバルタバスのメッセージであろう。彼はこの作品を1月のテロ事件のショックを契機に作ったそうである。

会期は延長されて2/21まで! (1月以降はまだ簡単に席が取れます)
階段状の席は列数も少ないので何処でも楽しめると思うが、やはり馬の鼻息が感じられる前の方がお勧めです。開演すると2時間ぶっとうし、途中では出られない(各出口の裏にはきっと馬や鳥たちが出番を待っているはず)なのでご注意を。ここまで詳しく丁寧に報告(推奨)するのは、おそらくこの魅力的な「地元会場」でなければできないこともありそうだし、これだけのものが海外に行ったら入場料は数倍になるに違いない等々

下の某TV局の紹介ビデオにはこの劇の沢山の場面が出て来ますので、インタビューが分からなくても楽しめるでしょう(幾つかYoutube等のビデオを見ましたがこれが全般的で一番良い。勿論言葉がわかれば千倍楽しめる) 。劇団の公式サイト英・仏)の2006年度の作品Battutaのページのプレス資料には日本の雑誌のコピーもありますので、説明はこれもご参考に

子供から大人まで、だれでも楽しめる内容だが、いつも思うことながら観客に「移民層」は極めて少ない。「文化は隔たりを埋める」というのはやはり入場料の前では「絵に描いた餅」なのだろうと思ってしまう。見渡してもアジア系はひょっとしたら私一人? いえいえもう一人、それも舞台に:オカザキ・ユカという女性が道化楽団の笛吹きにいました(上写真、騎士はバルタバス) 

*「天使」ではなくて「馬のとどめを刺す」というフランス語のタイトルのシドニー・ポラックの映画がある。日本語タイトルはまたまた違って「ひとりぼっちの青春」


2015年12月5日土曜日

二重国籍 誤謬訂正

前回「テロ対策二重国籍廃止を検討」としたのは正しくなかった。「国籍失効」でした。

フランスでは仏国内で生まれた外国の子は親の国籍(「血の国籍」)とフランス国籍(「地の国籍」)が得られる。日本のように二重国籍を認めない国だと18歳の時に片方を選ばねばならないが、そうでなければ二重国籍となる。二重国籍は、ほかにはフランスに住んで naturalisation つまり帰化申請をして「国籍取得」してもなりうる(フランス人と結婚してももらえるけどこれも申請が必要だと思う)。これまでの法律だと「重罪」を置かした場合、後者の二重国籍者は仏国籍を剥奪される可能性があった(ごく稀)。これを前者にも適応するのが新しい法案だった。(大誤り失礼しました)

もちろんテロ犯を前提にした改正だが、勿論「容疑」で国籍剥奪はできない。つまり犯罪を犯し、求刑された後の話。かつ聖戦テロは自爆犯だし、テロ抑止に効果があるとは到底思えない。そんなことで今までの「国の基本原理」を変えていいのかというので物議をかましている。(単一民族の「血の原理」にしか馴染みのない日本人にはピンと来ないかもしれない。私が改正法案の箇条書きを見て誤解したのもその所為だろう)

さて、そもそも今まで「国籍剥奪」は極右が得意になって振りかざすプロパガンダだった。それを社会党政権が実現する???  この現政権の「超右滑り政策」は選挙対策。実は明日「地方選挙第一次投票があるのだが、極右FNが幾つかの地方で第一党になるという大事態が起きうる。私の想像するところ、オランド君は超右派政策をとることにより、「極右対民主勢力」という図式を明らかにさせて(ひょっとしたら極右の馬鹿者どもがもっと逸脱するかもしれない。それは大チャンス)、FN支持層をサルコジに吸収させ、来る大統領選では反サルコジ票をまとめて再当選(可能性はこれしかない)という筋書きか? 私の想像が正しいとしたら、大統領の大計としてあまりにも悲しいですよね。
僕はサルコジが大嫌いだったが、彼の「策略」は読めず、大失態がいつも人気上昇につながるという怖い人間だった。オランド君はその点読めてしまって(?)、政治劇と傍観するに決めても本当にツマラナイ。ともかくこれ以上サルコジ(保守党支持者では常に大人気)を起こしてもらいたくない。

ところで秋のノーベル賞の発表の時、日本で「ノーベル賞受賞の日本人は米国籍取得者を含めこれでXX人」と報道されていたが、これって何なんでしょう。米国籍とったら米人でないの?二重国籍認めないんなら。

 サルコジ関連投稿:2013/7/5 ここに書いてあるタピのことも2年ぶりに進展ありました、また報告しなきゃ?(政治はどんどんニュースがあるからしんどいなぁ。やっぱり「美術」のほうが楽だ)

2015年12月2日水曜日

これでは安倍政権と変わりない

Note en français pour éviter des malentendus :  

J'ai fait le deuxième voyage depuis deux mois à cause de la cérémonie bouddhique qui intervient au 49e  jour après le décès. En fait j’ai perdu ma mère en septembre. 
À cause de ce calendrier, j’ai été au japon le 13 novembre.  Tout naturellement, mes proches me disaient gentiment “C’est bien que tu n’as pas été à Paris”. D'une part, c’est vrai, j’en suis content, mais d'autre part j'aurais bien aimé être là pour partager la tristesse et la colère avec les Parisiens... Je me disais que j’ai acquis, d’une manière, la solidarité française après 30 ans de vie parisienne.
Et de retour du Japon, je regarde les journaux depuis 2 jours, je commence à douter de quoi j'aurais pu être solidaire…  Heureusement je suis passé devant le Bataclan ce matin.
昨日話したように、私は日本にいると全く「情報外」、パリに戻って聞くニュースも驚きの連続でガリバーになったような気分。

世論調査では不人気だったオランド大統領の支持率が今月22%上がった!
結局昨日紹介した中日新聞のは例外的に冷静な留学生にあたっただけで、大衆は「IS撲滅戦争」を承認したのだろうか?

現在政府は8500の公安および司法職の創設を発表。こうして財政安定化より保安が優先と宣言したが、実際のところはそれがなくてもEUと約束した財政赤字軽減は達成できないのでちょうどよいカムフラージュ。

加えて「緊急事態」体制を延長のための憲法の改正、二重国籍の廃止* も含む政策をあげている。これではまるで極右のマリー・ルペンが次期大統領選に勝ったときの地ならしではないか!

* 12/3記:さっきニュースを聞いていたらこれは正しくなかったことが判明。今度訂正を記載します

私の大好きな(勿論アイロニーですよ) のセゴレン・ロワイヤル(元大統領候補、元オランドの夫人、現環境大臣)が大衆紙パリジャンのためにポーズしたこんな写真も見つけた。
私は国旗や国歌が好きではないが、フランスでは左派の人も「生温い」寛容さを持っている。だが植民地政策を過去に行った国家は、いくら三色旗が「自由・平等・博愛」の象徴と言おうが、被植民地化された国民にとっては弾圧の象徴でありえることをわきまえなければならないと思う。加えて今現在の情勢は植民地時代のツケを払っているようなものだから尚更のこと。

本当に これでは安倍政権と変わりないではないか、、、

「私のソリダリテ(先々日参考)は何だったのだろう?」と思ったが、お昼に近くに行ったので寄り道してみたバタクラン劇場の前、亡くなった人々の写真に私は「政治劇」から「現実」に引き戻され、悲しいながらも花束や寄せ書きにちょっと安心するところがあった。

Extrait de la prière de Saint François d'Assise sur papier jaune
黄色い紙には聖フランシスコの平和へ祈りの抜粋が

参考投稿
不人気のオランドのことは例えば 2013/4/26
ロワイヤル夫人のことも書いているはずだけど出てこない。不思議
フランス国歌のことは1月のテロの後に書いた 2015/1/14 など

最後に私の今日の結論:「凡庸なる指導者は権力強化を好む」

2015年12月1日火曜日

昨日の補足

パリの連続テロのことは14日の朝実家の近所の人から電話で聞いて知った。(昨日書いたように当然「パリにいなくて良かったですね」と言われ) 私は愛知の実家にいるとネットもテレビもない生活。それはそれで好きなのだが、今回のように大事件が起きると困る。ご承知の様にNHKのラジオのニュースは僅かなことをお経の様に繰り返しているだけで全く役に立たないから、新聞を読みに喫茶店に行った。
15日の地元の中日新聞 では、名古屋に留学中の女子学生(確か17歳?)が「これが復讐の連鎖にならないように」と述べていて、「フランス人は若いのにしっかりしているわ」と思ったが、オランド大統領が彼女や私の期待に沿わなかったのはご承知の通り。記事のこと裏覚えですので中日新聞会員の方はこれをご参考に

私は言葉の定義を持ち出して云々する議論は好きではないが、戦争というのは「国家間の紛争の最終手段」を意味すると思っていた。だから「イスラム国」に対する戦争と言われると、「イスラム国」を国家として承認してしまったことになるような気がするが???
何れにせよ今日のテロはフランスが国内に内包する(フランス社会がその土壌を養っている)問題なのでシリアの暴力武装集団を攻撃することで解決はしない。勿論一朝一夕の対策はないし、手を拱いていたら右派の突き上げを喰らうばかりで凡庸なる大統領にはほかの方策は思いつかないだろうと私も同情はするが、残念。

パリに戻って、例の「銀行の展覧会」*の一連で、昨日は新しい支店に作品搬入、今日は展示、明後日はオープニングというスケジュールで、パリを発つ前に新しい作品も描き、額装もして、出品リストを早々と送ったところ中止になったことを知らされた。だからのんびり、今晩は見たことのなかった有名劇団、一席だけまだ空いていたのですかさず予約して見に行くことにした。期待どおり良かったらまた書きます。展覧会なくなって本当に良かった(笑)

*銀行の展覧会、過去の関連投稿
9月2日 ジョルジュVからVユーゴへ
6月7日 パッションより本職 
6月14日 銀行での展覧会

写真は手入れする人もいないのに大豊作だった実家の柿。11月まで残されて甘みが乗り美味しかった☺