2019年3月24日日曜日

初めてのクラウドファンディング

2013年の「海水ドローイング」の始まりの逸話から去年の夏に至るまでの発展経過を本にしようと思うのだが、その出版にクラウドファンディングなるものを試してみることにした。
本の内容は既に肩が痛くて仕事にならなかった夏に書き始めたが、秋になって結末の大転回があり、書き直し(何のことかは本が出来上がってからのお楽しみ)。年末にカレンダー * を作ってこちらで予約購入を募ったのだがそれほど集まらず、マージンが小さかったので30部だけ刷ったのだが新年になってからほしがる人が幾人も登場し、、、私はこういう管理運営(?)に向いていないので、はじめからファンディングを募って余裕で事を運んだ方が良いと(笑)。
それにクラウドファンディングの大先輩 ** にきくと、ファンディングだけでなく知らない人に企画を知ってもらう手段でもあるとのこと。私の本は日仏2カ国語なので日本のファンディングサイトを使うかフランスのかと迷って調査検討した結果、色々な言語を(必要ならばページ下方で)チョイスでき、手続き・条件などを日本語でもフランス語でも読んでもらえ、そしてわざわざアカウントを設けなくても融資できることからキックスターターを使うことにした。デメリットとしてはアメリカの会社なので利用者の大半が英語圏の人であること。でも「やっぱりこれか」と決めたのが1月で、それから他の人の企画を見て研究、でもやってみないとわからないことも多くてもたもたしていたが、やっと一昨日に立ち上げた。



だから今晩で丸2日なのだが、出版に最低限必要な目標金額20万円の半額を越えた!!!嬉しい! 融資者に大感謝。とはいえ直ぐに協力してくれそうなファンの方のあとが大変なのかもしれない。

普通の人は「英三君は寄付しなくても生活に困る訳ではないし」と思うに違いないが、キックスターターの他の企画をみてもらってもわかるように音楽とか映画とか新アイデア商品とか、これは「寄付」ではなくて「企画への支援・参加」。今日出資して下さった方では40ユーロの枠なのに150ユーロも寄金して下さった知人もいて(大感謝)、そういう風にポジティブな参加意識で考えて下さいね〜。
そしてこれは "All or Nothing" で、目標に到達しなかったらボツ、つまり集金されないという徹底したシステム。
だから融資希望者の意思を無駄にしない様に頑張らねばなりません。

参考:
* カレンダーとはこれのこと




** クラウドファンディングの大先輩で集める金額も少なくとも一桁は違うの岩名さんの映画『すさび』は今大阪上映中です

2019年3月18日月曜日

謎のビデオ?



これはFBに先週水曜に掲載したビデオだが、「何を言っているのか知りたい」というリクエストに応えて。
大体のところは:

「今度またHCE画廊でドローイングを展示するのですが、その作品の一つは昨日までここに飾ってあったものです。グループ展は『オルフェの歌』というテーマがあって、作品は卵型のモチーフのシリーズの一つですが、オルフェの竪琴の様にも見えますよね。上の方の黒い部分は地獄の景色、地獄への回廊を思わせるでしょう。勿論いつもの様に白い部分に結晶があってバリエーションがあるのですが、この作品では黒い部分も様々に異なりを見せています。こういうところは実際の作品を目にしないとわかりませんのでサンドニまで来て下さい」

という宣伝でした。
編集なしの一発流し撮りにしては私としてはよく演じれた(笑)但し3回NGだしましたが



上は土曜日のオープニングの模様。いや〜、パノラマ写真も本当に簡単にFBからコピーできる! (嬉)
私の「オルフェ」は端の方でよくわかりませんけどね

2019年3月11日月曜日

「奈良の宝」展


ちょっと新しい方法発見。FBの写真と書いたことがブログに写せるみたいなのだ。
写真の興福寺の筋肉もりもりの金剛力士像に関して私は特に書けるほどの視点をもってない。その前日に行った「キュビズム」もは既に終わってしまったし、今更私が書くことないでしょう。強いていえばこのポンピドーの年代順に追った展覧会、膨大な数の絵を前に数年間のピカソとブラックの色々な新技法試みのおびただしいスピードを再認識。
実は「今更キュビズム」と思って最後の週まで放っておいたので、最後まで到達するまで頑張った。つまり法外の量の作品があって本当に疲れた。
その翌日は「奈良の仏像展」と思って行ってみたら、金剛力士像と地蔵像の3作が円形図書館ホールに鎮座するのみ(今サイトを見ると展覧会名は「奈良、3つの仏教の宝」となっていた〜)。興福寺の開陳ではどうなのか知らないが、ギメ美術館では横からも後ろからも、かつ空いているのでゆっくり衣類の装飾の詳細まで眺められる。それに右のような中綴じA4版の立派な冊子(仏あるいは英語)までも貰えた! まだ残ってるかな? 会期は後数日、16日まで。

2019年3月10日日曜日

Hicham Berrada 展

3年前に書いたことがある、「化学の実験」をアートに仕立てるヒシャム・ベラーダHicham Berradaの個展が6区の画廊で行われている。彼の「出世作」(?)は「présage(兆候)」と呼ばれるシリーズで、酸の中に金属(鉱物)粉を垂らして、泡立ったり色が変わったりたりしつつ、突然にょきにょきと新たな海中で新たな生物でも発生したかの様な金属化合物の不思議な動きをビデオで捕らえた作品。実はこれは小さなビーカーの中の世界なのだが、大きな画面にプロジェクトしてスケール感を変える。今回は画廊地下でほぼ360度円形に投射して、見る人がその幻想的な空間に入り込みやすくしてる。


ただの化学現象と言えば化学現象だが、こういう唐突な美しさを探して酸度を変えたり鉱物を調合したりする科学者はいないから、アーティストの彼がいなければこんな魅惑的世界は我らの前に現れなかった。
画廊の地上階はというと、ビーカーの中の「にょきにょき化合物」みたいなブロンズ彫刻が並んでいる。これは溶かしたワックスを水中に落としてオリジナルを作った。これまたロウの組成、温度、水のpHで生成が変わるらしい。
もちろんすべて化学者にサポートしてもらい技術探求したのだが、どこまで制御されているかは謎?

私は結局前回取り上げたような「織ったり編んだり」の手仕事で作り上げる世界より、こういう偶然性が高い、パラメーターは考えるけど後は自然にお任せする作品の方が好きみたいだ。(自分の作品でもかなりそうだが(笑))
といってもビーカ内の小宇宙をビデオできれいに再現するのも一筋縄ではないと思う。

ブロンズ作品は幾つもあったが、ひとつだけ真っ白の、珊瑚かイソギンチャクのミュータントみたいな作品がある。これは「発生学」の数理研究から生まれたアルゴリズム* を使った作品で、3Dプリンターで作られた。そう聞くと簡単そうだが、複雑だからプリントにすごい時間がかかり、幾つかの部分に分かれていて手仕事するところもあるそうでこの一作に3ケ月(4ケ月だったかな?)かかったとか。だから一点のみ。貴重だからなのか上の方の手の届かぬところに飾ってあった。壁も白いから見逃しますよ(笑)。

彼は若き(86年生)売れっ子現代アーティストなのだが、シャイな少年風で、話すとただただ実験的制作が大好きでという気さくさが表れすごく好感が持てる。1年半前に郊外の町の修道院が改造されたアートセンター abbaye de maubuisson** で個展があり(あのときは記事にしなかったけど)、そのオープニングの時にも色々質問に答えてくれたので今回もちゃんとオープニングに行って話をして来ました。

kamel mennourのセーヌに近い第二スペース画廊
6, rue du Pont de Lodi 75006 Paris
にて4月13日まで


* 実は私は大学の時そういう方向に進む可能性があって「イソギンチャクの触手発生モデルやるか?」なんて担当教授に勧められたことを思い出した。今は昔

** そうそう、この旧修道院のアートセンターは2013年にシャプイザ兄弟の展覧会で大きくとりあげてました

2019年3月8日金曜日

縫・織・編

Judy TADMANとソーニャ・ドローネ
前々回に一つの流行とも言えそうな「縫い物アート」について触れたが、まさに「織る、編む」をテーマにした展覧会に遭遇した。テーマも手法も作家の世代も、幅広く紹介という感じで、数少ない作品で傾向を一望。私が皮肉めいたことを述べた「手芸ドローイング」の類いは不思議になかったが、その道の一人者を中心に集めた割にはインパクトがない。それぞれの作品は悪くはないが、「織る、編む」という行為は(展覧会では避けているが美術界一般に見て)似通った作品を産むようで、作家の個性が出にくい世界のようだと再度思った。
この展覧会はEspace Monte-Cristoという、20区の庶民的エリアに新しくできたスペースで行われているが、ここは南仏のアヴィニョンから近いきれいな町の Isle-sur-la-Sorgueに2014年にできた財団 Fondation Villa Datris のパリ出張所(?)で、昨年開催されたテーマ展の一部ということ。

Tissage/Tressage
6月29日まで続きます。入場無料(笑) 
Marinette Cueco 彼女は草を絡ませて繊細な作品を作る。今回の展覧会では特別大きく取り上げられている


Cathryn BOCHの地図を縫い合わせた作品
Stéphanie Maï Hanus ゴミ袋の結びあわせたドレス
この展覧会の参加の圧倒的大多数は女性で、だから概してジェンダー問題に発展させられがちなのだが、ごく少数ながら男性作家も。最後の丸い作品はSupport/ Surface シュポール/シュルファス(美術用語辞典)というフランスの70年代の運動の作家の一人のPatrick Saytourのもの。こういうほぼ何も手仕事してない作品の方が結局私の趣味かな。男性らしいと言おうか(笑)*

この展覧会でちょっと異色だったのはジョアナ・バスコンセロス Joana Vasconcelos
ポルトガルを代表するこの現代作家は今、2年前に塩田千春のインストレーションが行なわれた百貨店のボン・マルシェ(Bon Marché)のエスカレーターが行き交う大きな吹き抜け空間に、ディズニーのアニメ漫画の美意識から産まれたような超巨大でLEDが光るキッチュでバロックなオブジェをぶら下げている。この悪趣味さ、あまりにあまりなので面白い。空虚な装飾性がテーマなのかとは思うが、その(批判的行為)のためにこんな空虚なものを創るというのは「現代アート」ならではと、今更ながら驚く。作家の写真・ビデオを見る限りそんなにシニックな人には見えないのでコワイ:あるいは私の完全な読み間違えか?と今調べたら、これの宙に浮く作品は「シモーヌ」と言うそうで、アウシュビッツを生き、妊娠中絶を合法化したフランスの政治家シモーヌ・ヴェイユ(日本語ウィキ)と「第二の性」のシモーヌ・ド・ボーヴォワールへのオマージュだとかで、彼女は社会問題を取り上げる作家だそうだ。全然わからんけど。

3月24日まで。勿論これも無料です

参考


ボン・マルシェの展覧会サイト

先にもリンクした私の2017年1月の投稿

当然ながら最初に取り上げた展覧会には塩田千春の作品も含まれています。

* 注: 「編む」でも竹や藤となると男性の仕事になる。ケ・ブランリ博物館で日本の竹細工の展覧会 "Fendre l'air" が催されていたが、これは逆に全員男性だったのではないかな。竹とは思えない繊細な工芸品が一杯でした。(最後の写真は一番現代アート的作品):4月7日まで

前々回の投稿も宜しく