2019年8月19日月曜日

黒豚に化けるデッサン(続)

5月から懸案になっていた「黒豚に化ける肉屋さんのデッサン」(5/15参考)、その後彼が作品を写真から選び、安いからまとめ買いしたいつもより底が深い額に、実験も兼ねて大きなドローイングでは初めて底板から浮かせ縁から少し距離を取って写真のように装丁した。肉屋さんは昨日の日曜、朝市に店を開いたものの、バカンス、天気も悪くお客さんが少ないのでアトリエに歩いて取りに来た。なので来週から黒豚!!!

夕方には自宅に飾った写真も送ってきてくれて、私の思った以上に気に入ってくれているみたい。
かつアトリエの床で念入りに乾かしている大傑作の「アーク 2」別称「バナナの皮」も「いいな〜」と言っていたので、これまた思った以上に「見る目」もあるみたい(笑)。これで投機の夢を捨ててもらえれば申し分ないのですけど6/5参考)

バナナの皮

「月曜朝断水」と張り紙がしてあったのでブログ書きをすることにしたのだが、ちゃんと水が出ている。また日にち間違えたかな〜(来週あるいは来月かも) 

後記:ちゃんと今日だった

2019年8月18日日曜日

例で見る所得再分配

税務署から所得税課税額通知が来た。と言っても私の場合は零ユーロ、つまり非課税通知なのだが(笑) でもこの事実に恥じいることはない:実にフランスの56%の世帯は非課税。つまり私はごくフツウの市民なのだ。

まあそのぐらいの統計と税金の使い道の円グラフなんかは毎年同封してあったと思うが、今年は見出しに「所得の再分配はどう行われるか?」と書いてあって、年収73160€(約880万円)のカップルと3260€(約39万円)のカップルの家庭で比較がしてある。 おそらく課税対象収入だとは思うが後者は私より低収入だから目を疑うが、そういうこともあるとして続けると:

右図で双方とも、最初の下向き矢印は社会保険費の支払い、第二が直接税(主に所得税、住民税?) 当然後者カップルは所得税はゼロのはず、住民税も収入によるはずだから30€は何かわからないが、飛ばして次に行くと、第一の上向き矢印は家族手当(多分子供二人を前提か?)で所謂「貧乏家庭」は一挙挽回、収入を超えた。第二の上向き矢印は住宅手当、第三は就業手当と最低生活保護を得て年収は約1万ユーロ(約120万円)、つまり元の3倍になり、「高収入家庭」の1/20だった「低所得家庭」が1/5に格差を縮めた! 

「こうして貧富の差がつきにくい社会を形成しているのですよ〜」とアピールしている。「社会主義」の面目躍如?
私は日本でしばしば「よく生活できますね〜」と感心されるが、実際私もかなりおかげを被っているわけ。だから私は「フランスでなければ生きて行けなかった」と大いに感謝している。しかしその一方一般的には貧富の格差は広がるばかり(これは歴然たる事実)で、昨年秋から「黄色いベスト」運動で低所得者層の憤懣が噴出したのはご承知の通り。富裕層の大統領とその政府という批判を緩和したいという願いがこの例ににじみ出てるような。

加えて先に就業手当と訳したPrime d'activité * はマクロンが引き上げた。とは言ってもこれは先の「黄色いベスト」の突き上げを食らったからの懐柔策で、それがなかったらそんなことは考えなかっただろう。そもそもマクロン君は社会主義的社会をフレキシブルにする(解体する)つもりで大統領になったのだから、心なくも採った政策を逆利用した結構面白い自己宣伝のようで感心したな〜(笑)

でもそもそも年収1万ユーロ(約120万円)で子持ち夫婦が生活できるか??? 何かわかったようでわからない例だったので詳細があるのかと、「もっと知りたい方へ」とあった文字通り「私の税金は何に役立つか」というアドレスのサイトも見たがほぼ深まらなかった。まあいつも課税限度に達しないので見もしなかった逓増所得税の計算の仕方を初めて理解できたことだけは収穫だったが。

実はフランスは「源泉徴収」が今迄なくて今年がその切り替え年、だから普段よりはこんなチラシを読む人も多いかも。まあともかくマクロン君、人気挽回に懸命みたい。


* 政治経済の話題を1月23日以来取り上げていないが、そのときに書いた上の例にあったPrime d'activitéは無事にもらえて我が生活には大助かり。これは12月の「暴動」のお陰でしょ。「結局は暴力しかないんだよなー」と見切ったのだが(勿論煽る気は毛頭ないが)、「暴力はいかん。だが警察(政府)側の暴力もある」という私には欺瞞的に思われる「良識ある見解」が一般的。また「黄色いベスト」運動も経済要求から警察暴力反対運動のようになってきて、私には何がなんだかよくわからないのですわー。

2019年8月10日土曜日

レスピューグのヴィーナス

(texte français en bas)

最近すぐいろいろなことを忘れてしまうので、これも昔は知っていたに違いない「再発見」。でも新鮮でした!(本当に知らなかったのかな?(笑))

日本語ウィキもあるのだが、なんか妙な記述があるので改めて書かせていただくと:

マンモスの牙から彫られた高さ14.7cmの女性像で、ピレネー山脈の山麓レスピューグ Lespugue の洞窟で1922年に発掘され、発見された地層から2万2000から3万1000年前と想定される。
発見時に発掘用のピックで破損されてしまい、写真でわかるように先史ヴィーナスで見られる豊満な垂れ乳が正面部からパックリとなくなっている。

この一撃(?)を食らわしてしまった作業者(?)はいたたまれなかったろうが、この壊れ方がなかなかで、曲面(丸み)と平面(直線)ががっぷり四つで拮抗し、かつ自然な面もあるし、それが見事に調和、とても素晴らしいのだ。
それに傷かどうかわからないほどの顔の表情もニクい。

きっとキュービズムの作家にも影響を与えただろうと思ったが、発掘が22年ではリプチッツ(Lipchitz)やローレンス(Henri Laurens)が立体主義彫刻作品を発表しているのはその何年も前なので私の想定は成り立たない。

この像はパリの人間博物館の所蔵品で、博物館のサイトでは写真を3Dで見られることを発見:
http://cabinetdecuriosites3d.mnhn.fr/fr/content/v%C3%A9nus-de-lespugue

背中側も見られるし、ライティングも変えられるし、わざわざ二度も参拝することなかったかという感じ。

というのはこの「再発見」(?)、実はポンピドーセンターで開かれている「先史時代」展(Préhistoire) にてで、私はとてもこのヴィーナスに感銘を受け、かつ展覧会規模が大きすぎて一度では全部見られなかったこともあり、再度足を運んだのだ。

同展では前面しかよく見れない展示になっており、上の3D写真のようなことはできないし、謎の臀部から脚にかけた三角状に引かれた線は見られない。場所はどうあれ私は誇張された陰毛かと思ったが(それこそピカソ?)、この時代に陰毛描写された例はないらしい。(というわけでこの想定もバツ)

同展では考古学品と主に近代の芸術作品が沢山並らぶ。こういう極めて博学的かつ恣意的な展示って意味あるのかなーと思うけど、普段は見られない美術館の所蔵品も出てくるのでそれなりに行く価値あり。


そうそう、わたくし的にこの展覧会でのもう一つの大目玉はイタリアのアルテ・ポーヴェラ Arte Povera 系の作家クラウディオ・パルミジャーニ Claudio Parmiggiani の "Cripta"。これはジンバブエの美しい洞窟絵画の巨大な模写(右写真)が並ぶホールにあるので 、そちらに目を奪われ、背をかがめないと入れない暗室の外からチラッと覗いて手形が壁にあるだけかと結論してしまう人が多いのだが(既に沢山の展示品を見て大抵の人はもう疲れているのでパスする)、中に入って少なくとも1〜2分はいてほしい。すると目がだんだん暗闇に慣れて、どんどん手形の数が増え、かつ色も違い、最初に認識しえなかった数えられない数の手形で壁が覆われていることがわかる。でも不思議なのはそれから、その手形が動き出す:まるでこちらに手を振っているように。どういうことだろうとサイトで調べてみたのだが、「可視不可視」「写真再現性のなさ」「実体験」「通過儀式」など哲学的に議論されている割に、「手が沢山見えてくる」とは書いてあっても「動き出す」という記述が見当たらない。私の目が変なのか??? 見に行って確かめてください。


「先史時代ー現代の謎」(Préhistoire, Une énigme moderne) 9月16日まで 



Pour les Français je saute le premier sujet « La Vénus Lespugue ».
Le second c’est "Cripta" de Claudio Parmiggiani, une installation également exposée dans l’exposition « Préhistorique » au Beaubourg actuellement.
Il s’agit de l’espace pénombre, le mur intérieur est couvert par les empreints de main. Vous pouvez entrevoir quelques mains de l’extérieur, beaucoup de gens déjà trop fatigués d'avoir vu très nombreuses pièces exposées, se désintéressent vite, ils n’y entrent pas dans la bouche. Mais il faut le faire et rester au moins 2 minutes. Au fur à mesure que les yeux s’habituent au noir, on commence à voir de plus en plus de mains. Mais ça n’arrête pas là, ils commencent à se balancer !!! Surpris par cet effet optique, j’ai parcouru des documents sur cette installation. On la décrit et l’interprète à manière philosophique, pourtant personne écrit clairement que les mains bougent. Alors suis-je halluciné ? Je suis dérouté par cela.
J’aimerais bien que vous allez la voir et dire s’il me faudra aller voir un ophtalmo…