「『ジンガロ』は、主催者であり制作や演出を手掛ける鬼才・バルタバスが、さまざまな国籍の団員や馬を率いて、パリ郊外のオーベルヴィリエを拠点に世界各地で公演を重ねている騎馬劇団。1984年の創設以来、多彩な民族や文化にインスパイアされた独自の舞台作品を創造し続け、そのアートと馬術が融合した類まれなパフォーマンスは、世界中で高い評価を受けている」
さてこの有名な劇団、色々な友達から薦められていたが今まで見たことがなかった。実際私は「馬」にそれほど興味がないし、写真を見るととてもキレイそうで、もう一つ自分の趣味でないだろうと思い込んでいた。それが今回見ようと思ったのは「創設者で演出家の58歳のバルタバス Bartabas が10年ぶりに舞台に出る」そして本人が「ジンガロの出し物の最高傑作の一つ」と語っているのを聞いたから。加えて"On achève bien les anges" (「天使のとどめを刺す」)というタイトルも気になっていた*。そこで予約サイトを見たところ、前から三列目の良い席が一席だけ空いていて(12/1記)、その後は年末までほぼ満席。これは行くしかないですよね。
上のプレゼにあった会場のオーベルヴィリエ Aubervilliers:ここは何十頭の馬の厩舎であり、練習場であり、劇場である。そしてここには何十人ものスタッフが住んでいると言う。
開演待ち用のレストラン |
これも木造の、教会のような劇場に入ると、直ぐに馬(馬糞?)の匂い。廊下のしたは何と厩舎で、馬を上から見ながら、所謂サーカス型の丸い舞台沿いに入場。舞台は馬の為に白い砂がひきつめられているが、この砂が光が当たったり外されたりするだけで意外に幻想的な効果を生む。サークルを疾走する馬に乗った騎手が所謂「曲芸」もしたりするが、ジンガロのオリジナリティーは馬が勝手にお互いどうし撫であったり、ごろんと寝たり、鼻を鳴らしたり、自然体としか思えない自由さが「スペクタクル」に反映されていること。その一方ではどこまで調教されているのだろうと思えるまで音楽に合わせたり、人に答えるようしてステップを踏む(踊る?)。そしてその指揮をとるバルタバスは大きな仕草などなく、かすかな身動きで馬と以心伝心。これはお見事。彼は調教ではなく「馬を聞く」そうだ。
こうした馬と人の夢想的なスケッチ(彼によれば「儀式」)は、多くは堕した天使が馬に付き添われ庇われているような印象を与える。これは人間の奢りに対するバルタバスのメッセージであろう。彼はこの作品を1月のテロ事件のショックを契機に作ったそうである。
会期は延長されて2/21まで! (1月以降はまだ簡単に席が取れます)
階段状の席は列数も少ないので何処でも楽しめると思うが、やはり馬の鼻息が感じられる前の方がお勧めです。開演すると2時間ぶっとうし、途中では出られない(各出口の裏にはきっと馬や鳥たちが出番を待っているはず)なのでご注意を。ここまで詳しく丁寧に報告(推奨)するのは、おそらくこの魅力的な「地元会場」でなければできないこともありそうだし、これだけのものが海外に行ったら入場料は数倍になるに違いない等々。
下の某TV局の紹介ビデオにはこの劇の沢山の場面が出て来ますので、インタビューが分からなくても楽しめるでしょう(幾つかYoutube等のビデオを見ましたがこれが全般的で一番良い。勿論言葉がわかれば千倍楽しめる) 。劇団の公式サイト(英・仏)の2006年度の作品Battutaのページのプレス資料には日本の雑誌のコピーもありますので、説明はこれもご参考に
子供から大人まで、だれでも楽しめる内容だが、いつも思うことながら観客に「移民層」は極めて少ない。「文化は隔たりを埋める」というのはやはり入場料の前では「絵に描いた餅」なのだろうと思ってしまう。見渡してもアジア系はひょっとしたら私一人? いえいえもう一人、それも舞台に:オカザキ・ユカという女性が道化楽団の笛吹きにいました(上写真、騎士はバルタバス)
*「天使」ではなくて「馬のとどめを刺す」というフランス語のタイトルのシドニー・ポラックの映画がある。日本語タイトルはまたまた違って「ひとりぼっちの青春」
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