2022年6月8日水曜日

シュールレアリストの女性作家たち

あんまりに沢山のものをいっぺんに見るのは混乱する。私は今まで色々見て絵画史の流れ(メインストリームと異文化の吸収というプロセス)を一応把握しているからまだしも、若い人が戦前戦後のシュールレアリスム、アールブリュット系、民族系(第三世界のアート)、マイナー的現代アートを並べられたら何がなんだかになりそう。別にそんな位置付けができなくても作品を鑑賞にするにあたって構わないかもしれないが、世界の歴史を一つ一つの国か地域から見るのではなくて総てを全くパラレルに把握するというのは大変なことなのと同様、一つの視点を持っていたほうが理解がしやすいと思うのだが、今回のヴェネチアビエンナーレのキューレータ、セシリア・アルマーニの狙いは、シュールレアリスムにスポットを当てながら私の持つような「伝統的な男性優先の美術史」の座標を打ち砕くということにあるらしい。 
 
今回のビエンナーレには”The Milk of Dreams”というテーマがついており、れはレオノラ・キャリントンLeonora Carrington (1917-2011) が子供用に作った本の題名から取られたもの。キャリントンは戦前マックス・エルンストの恋人で彼と南仏に住んだイギリス生まれの画家、エルンストにアンドレブルトンを紹介されてシュールレアリスト展にも参加した。私は昔からエルンストが好きなのだが、エルンストはキャリントンばかりでなくペギー・グッゲンハイム、その後は画家ドロテア・タニングDorothea Tanningと上手いこと女性達を口説くのだが、私は彼の恋人たちの絵にはほぼ興味がなかった(←キューレーターにまた叱られる?) 日本ではキャリントンは人気あるのかウィキに細かく書かれており、かつブログの記事「3分でわかるレオノラてのがキャリントンの人生をとても楽しく語っておりましたのでご参考に。
 
キャリントンは1942年にメキシコに亡命、画家としてはそこで本格的な制作をした(その頃のメキシコはディエゴ・リベラとフリーダ・カーロ夫妻がいてロシア革命のトロツキーもいた)が、同じくメキシコに逃げてきたカタロニア出身の女性画家 レメディオス・バロ Remedios Varo と親友となる。バロさんも日本では人気なのかな?こちらもウィキにしっかり書かれている。バロは天体と錬金術の混ざったファンタジーで黒魔術系のキャリントンの絵より私には面白い。この戦前戦後の女性シュールレアリスト達はペギー・グッゲンハイム財団の特別展「シュールレアリズムと魔術」に多く展示してあった(これは着いた日に見た)が、今までコマーシャルでひどい画家だと思っていたレオノール・フィニ Leonor Finiもしっかりした絵があってびっくり。
 
 
以下良い写真ではありませんが、先ずは気味悪げな世界のレオノラ・キャリントンの作品
 
Leonora Carrington
Leonora Carrington

Leonora Carrington
Leonora Carrington

Leonora Carrington
Leonora Carrington

Leonora Carrington
Leonora Carrington

Leonora Carrington
Leonora Carrington

 
次の3点はもう少し可愛いファンタジーのレメディオス・ヴァロ
 
Remedios Varo
Remedios Varo

上の絵は上方が切れていますが、星を集めてグラインダーで砕き月に食べさせています


Remedios Varo
Remedios Varo

Remedios Varo
Remedios Varo

 
次は表現に多彩な面のあるドロテア・タニングの作品
 
Dorothea Tanning

 
 
まともな絵も描けることがわかったレオノール・フィニ
 
Leonor Fini

 
女性作家さんたち、それぞれ面白い想像力があって楽しめるのだけど、パーソナルな物語性が高くて挿絵的になりやすい。それに比べてエルンスト、キリコ、ダリ、イヴタンギー などの男性陣の絵画はもっと抽象化(世界観化)されていて、だから絵画史のマイル・ストーンになったのだと思うのだけど(←キューレーターにまたまた顰蹙?!)
 
 
その中タンギーと結婚したアメリカ人ケイセージ Kay Sage(1898-1963)は工事の足場のような建造物がある風景を描いて異質だ。(彼女のことも「3分でわかるケイ…」があったのでご参考に
 
Kay Sage
Kay Sage

 
 ”The Milk of Dreams”がタイトルだからキャリントンはビエンナーレの Giardini ゾーンの大パビヨンでも再度登場する。そこでは当時の女性写真家たちも紹介されていたが、私が同じ屋根の下で暮らしたドラマール意味のわからない方はこちらへがいなかったのは不思議中の不思議。いつもドラマールと連んで、彼女の写真のモデルにもなっていたジャックリーヌランバ Jacqueline Lambaはいたのに:ランバはアンドレブルトンと結婚したから外せないかもしれないが
 
1941年マルセーユで米国行きの船を待ちながらシューレアリスム達はタロットカードを作って遊んだ。これはランバが描いたカード「革命の輪」

Jacqueline Lamba
 
展示会場ではそこからシュールレアリスムからの派生、現代的展開と続くが、キリないからここまで。
 

先に挙げた「3分でわかる」ブログはこれらの作家のことを楽しい読み物として完璧に網羅。びっくりしました。
 
  
著作権もクリアしているとかで絵の写真も沢山掲載されており、プロのお仕事。感心、感心。ブログ界にも立派な方がおられるものです。勉強になりますよ。備忘録としてリストコピーです(笑)
 
上の「3分間」にあるトワイヤンもあったが、彼女は今パリの近代美術館で大回顧展が開催中。これがなかなか良いのだが、実はワクチンパスがいらなくなったらまたすぐ携帯を忘れるようになって、、、旅行前にみたが写真が撮れなかったのでまた近い将来にでも
 
これはキャリントンが描いたエルンスト像
 
Leonora Carrington

 
この秀作は誰かなーと迷ったらヴィクトールブロウネル Victor Braunerだった。 ケイセージ と反対で男性だが女性的でした(またジェンダー分けして顰蹙かな?)
 
Victor Brauner
Victor Brauner

 
ところでインスタで展覧会のことだけのページを開きました。このブログとは違う写真も使うようにしていますのでよろしく
 

 

後記:トロワイヤン書きました(こちら)

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