2019年9月24日火曜日

水漏れに思う

dégâts des eaux というのを直訳すると「水害」ということになるだろうが、台風や津波のないフランス、もちろん雷雨で川が氾濫して家が浸水ということもあるが、ふつうは洗濯機が壊れてとか配管のジョイントが痛んでとかで絨毯が水浸しという程度の「水の被害」。

「水は低きに流れる」、私のアトリエは日本流で1階が入り口、地下に大きなスペースがあるので何かあると我が家に「水」がやってくる。一度は上階に水道水を送るためのポンプが壊れ、もう一度は配管不備、これは理由が明白だったが、3度目は雷雨の雨が不思議な経路で我がアトリエに至った(これはひどい雷雨がないと発生しないだけにどこから来ているのか一年以上わからずアトリエ奥の天井に穴が開いたままだった)。

そして今回は、天井からの水漏れなので二階の留守らしい住人の水を止めれば解決と思ったのだが、それが止まずユー島のバカンスから帰らざる得なくなった。このため我がアトリエの上にアパートが2軒あることを初めて知ったのだ。そのもう1件はガーディアン曰く「『ごみ屋敷』で修理工が入れない」(でも住人がいるので水は止めれない)!!! 公団住宅にかけあうと「ソーシャルサービスの許可を取らないと入れない」と意味のわからないことを言う。「実際に水がポトポト落ち続けているのに何なんだ」と怒って、受付の玄関払いとわかっていても毎日電話&メールしていたのだが、突然解決! 
その糸口は日本流でいう4階にあるHさんのアパートの床に水が侵入、Hさんが被害を訴えた故にそのお隣Dさんの水道の配管不備で我が家にも「害」にあったことが発覚した。しかし2階3階のアパートには何も被害なし。だから難しいケースであったのだが、19日もかかった :(

これで万事解決と言いたいところだが、なかなか。
フランスでは住宅は保険に入ることを義務付けられていて、こういうことが起きると「被害届」を被害者と事故の元となった住人とがそれぞれの保険会社に送ることになっているのだが、Dさんから連絡(返事)がこない。これは私が孤軍奮闘ではなくHさんもいるので助かるが、そのHさんは今朝ガードマンに「全部住宅公団が請け負うからDさんのサインはなくていい」と言われたとか。だが私のところには前日公団住宅から「Dさんに連絡するよう」という手紙がきて、さっきやっとそのDさんからメールが来たところなのだ。またまた情報の錯乱、、、。 

ところでこの「水の被害」たるもの、非常に稀なものと思われるかもしれないがフランスでは頻繁に起こる(ちなみに前述のように我が家で4度目。いつでもたいてい知り合いの誰かの家で起こっている!)。F夫人の意見では dégâts des eaux は日本からの新参者が知るべき最重要単語だとか(笑)。電子機器に自動的に老朽化して使えなくなるよう仕組まれているとかいうスキャンダルがあったが、フランスの配管工事もローテクながらそういう細工をして、後日修理工事を請け負えるようにしているのではと私は真剣に疑ってしまう。

工事請負人はこれで儲かるが、住宅保険制度は不思議なもので、被保険者は被害を大きく申告して賠償金をもらうというのが常識なっていて、水漏れ程度では哀れがられるどころか、「しっかりお金取りなよ!」と応援される。「天井以外に被害ないけど」などと言っていると「こいつはバカか」としか思われないのである。でも本当にないし、、、。画用紙みたいな安い紙を濡らして、最高級の紙がダメになったということにするべきらしいのだが、私としては天井工事で毎日8時に起こされる日が来ると思うと憂鬱になるので、工事の時期に他のアトリエをもらいたい、、、。

工事・賠償金は、事故の元となったアパートの住人が加入する保険会社が支払う。だから私の歴代の「水の被害」は私の保険会社には痛くもかゆくもなかったはずなのだが、かつて「事故が多すぎる」という理由で契約打ち切りを一方的に通達された。事故処理が商売なのに、事故に関わる気がまったくないのだ。

「カフカがなぜフランスで生まれなかったのか?」とよく思うが、フランス人のほとんどはKをまどわす「城」の住人に他ならない。かつ彼らは一旦被害者となるや、Kやエイゾウとは違って「不条理」に悩まず、憤懣を大発散しながら見事にサーフする、カフカにはなかったラテン的天性を備えているのである。羨ましい。。。

私はこの「城」では知恵の回らない聖人君子の類だから、ちょうど水が垂れ出した日にちょうど友達が留守の我が家に泊まりに来ていたのですぐに発見され、かつ作品にはまったくダメッジがなかった、かつ汚水でないから、ということで文句は言いつつも、内心「あーよかった」と満足。つまり決定的な闘志に欠けているのだ〜。


2019年9月13日金曜日

天国と地獄

「天国と地獄」と言うと明らかに大げさだが、小バカンスにでかけたユー島(Ile d'Yeu)から上階のアパートによる(と思われる)水漏れのためパリに呼び戻されてしまい、この1週間は本当にくだらないことに明け暮れ。それなのに全く解決していなくて、、、でもそんなことをかこつのはもうよそう、天国を思いだして。。。

二年前に行ったようにKさんのお宅にご厄介になったのだが、着いたときはKさん宅でお隣さん家族を呼んでのパーティーがあり、その後にKさんの友人のMPさんが到着。彼女は料理、食べることも作ることも大好きで、蟹、魚そしてオマールと、毎日すごかった〜。
「画伯」には高嶺の花でしかなかったオマールを食べきれないほどいただき、それもMPさんがマダガスカル育ちなので香辛料のきいた南国風! そもそもオマールは漁師の船が朝港に戻った時に埠頭で買った。その新鮮でピチピチしているオマールたちは家に戻るや生きたまま手(ハサミ)足をもぎ取られお鍋に放り込まれた。このダイナミックなレシピで葬られた彼らは無念だろうと(オマール火炎地獄?)、それを弔うためにも特に丁寧に丁寧に風味させていただきました(=甲殻類はやっぱり食べるのに手間がかかる😀)  もう一生こんなことはないかもしれないし。

感動のオマールはともかく、ユー島はやはりきれいだ!以前に行った時に写真を撮りまくった(下のリンク参考)ので今回はカメラなし、でも携帯で少しは撮った。



今回は水彩スケッチもした。絵葉書サイズなので東京の個展で作品を買ってくださった方々に送ろうかなんて思ったのだけれど、食べるのが忙しくて郵便局は結局行かなかった(笑)。私の水彩はちょっとした印象の記録でフワフワっと描くだけなので、少々絵心があれば誰でも描けると思うのだがFBに載せると海水ドローイングよりずっと人気があって怖い。




それから「曇らない」と何処かで宣伝を見た顔全体を包む水中マスクをパリで買って出かけたのだが、これがかなり画期的製品で、魚たちと一緒に泳げて感動、「天国感」が一層高まった。 (ビーチで意外に多く見かけたので結構売れているみたい)


ユー島に関する以前の投稿:


2016年9月2日金曜 ユー島紀行

2017年8月29日火曜 ユー島の海岸

2017年9月2日土曜 ユー島の海岸(続) 
2017年9月4日月曜 遥かなるユー島