2022年9月24日土曜日

歳を取らないムンク

 
 ベッドに座るか細い少女、その後ろに大きなバルーンのような不可思議な影が、、、この結構大きな絵、これを初めて見たのは1970年大阪万博でだったはず。「万博なんて〜」とバカにしていたのが行ってみると意外に面白くて、学校からと家族でと2度も行った。 ムンクの「思春期」こんな素晴らしい絵が見られるならそれだけでも来た甲斐があったと思った。ノルウェー館だと思っていたが、今調べてらそんなものはなく(スカンジナビア諸国の合併館があったが、そこはエコロジーがテーマだったらしい。さすが北欧諸国はエコの根が深い。「温暖化」ではなく「環境汚染」と言う意味では先進国はその頃から目覚めていたはずなのだがこの様だ。それはさておき)、世界の大美術展なるものがあってムンクの作品もきていたようだから、多分記憶に間違えはない。(だが作品目録は不明)
 
この「思春期」。オルセー美術館で始まったムンク展に行って再会したが、我が思春期の感動が蘇る:それだけでも大したもので、ムンクの絵は今見ても新鮮だ。 ムンクは自分自身でもそう言う傾向があったのか、キス(抱擁)とか吸血鬼とか、橋の上の少女とか30歳ぐらいで描いたモチーフを何度も何度も同じものを繰り返し描いている、、、。風景もいつも同じですごい狭い世界(村?)に住んでいたのか、リテイクの所為か疑問に思ってしまう。
 
リテイク(1901-03)なのに昔より具象的。「田舎のマリリン」の気持ちがわかる?

 「かつムンク展ってあったばかりじゃないかい?」ググってみるとポンピドーの結構見るのがしんどかった大回顧展(写真とかもいっぱいあって)は2011年、私にとってはついこの間だが、若い人を思うと10年に一度、ムンク級だとそのぐらいあった方がいいのかも。
 

この紫色の横線は何なんだ?キャンバス束ねて絵具がくっついたとしか思えない?(部分)

雪なんかぺっぺっぺです。写真にしたらわかんないけど(部分)
 
ムンクの絵は「ぞんざい」だ。でもそのぞんざいさが確かなデッサン力に支えられているのが私が好きな理由だろう。特に版画はすべてを擦り落としエッセンスに走っている。だから大好き(上のインスタ内の写真もご参考に)
 
ごく初期の作品、ほっぺたの白は何でしょう?やっぱり保管が悪かった?モチーフ的には既に「メランコリー」
 
ドキュメント的意味で面白かったのは私のコメント同様(?)みんなに「なんだこれは〜」と最初不評を買ったムンクも「国民的(国家的)画家」となって、晩年モニュメンタルな仕事をこなすようになり、、、「叫び」はしなくても不可思議な風景をチョコレート工場の食堂(?)にちりばめたりするようになる。
 
チョコレート工場の壁絵。従業員は幸せだっただろうか?カルフルだからいいのかな?

今回のオルセーの回顧展は比較的小さく、十分一つ一つ堪能できて心地よい。
 
我老いたり 私もこんな感じかな〜? 髭なし草間彌生カットで頑張ってますけど
 
あんまりいい写真撮れなかったし、出発前なのでまた端折りましたが、今更ながらムンクには脱帽です。
 
しつこいですが私の東京の個展もよろしく(笑)

 
参考
 
 
「叫び」は来ていません。そういえば数年前こんなのありましたね二つのダンス、二つの叫び
 

2022年9月19日月曜日

偉人を祀るパンテオンの現代美術

おフランスおよびヨーロッパには毎年9月の第3週のウィークエンドに「文化遺産の日」というのがあって、大統領のエリゼー宮とか普段は入れないような歴史的建造物を見学できる。そういう珍しいところに入れる機会なのだが、私はどこに行ったかと言うとフランスの偉人が眠るパンテオン(ウィキ)。ここは入場料払えばいつでも入れるのだけど、推薦された現代アートのインスタレーションがありまして、、、でもこれが地球の自転を証明するフーコーの振り子(ウィキ)の下の床にガラスを引いただけに思われるインスタレーションで、それ見るだけに11.5€ って高いよなと、この週末を利用。きれいな作品でした。

 
こちら振り子が動いているのが見えるビデオ

 

それが知らなかったけどキーファー(Anselm Kiefer)のガラス箱もあって、またキーファー詣でしてしまった。半端じゃない設置と思ったら、これは2022年11月以来の常設らしい。
 

 

そのあとは地下の墓参り 
 
こちらルソー

 
こちらヴォルテール
 
まあこんな立派なのはこのお二人だけで、ユーゴ、ゾラ、デュマの三大作家は相部屋で眠っています(笑) 

パンテオン Panthéon のサイト: https://www.paris-pantheon.fr/
Ann Veronica Janssensのインスタレーションは10月31日まで
 
 

2022年9月9日金曜日

クールでシュールな恭子さんの絵画

あれれ、いるはずの動物がいない。フレームから出てしまった。つまりひょこっといるのです
恭子 (Kyoko Dufaux) さんに初めて会ったのはいつだったかな〜? その後名古屋でちょうど個展をされていたので顔を出したが、その時は単なるイラストという印象しか受けなかった。その彼女が最近急成長、風景の中に動物(達)がぽつりといる何とも不思議な「クールでシュールな世界」* を描き出すようになった。エドワード・ホッパー調の孤独とメランコリーあり、アンリ・ルソーの素朴派ぽいエキゾチックさあり(ルソーは南国に行ったことはなかったが、彼女はナイジェリアだったかな?アフリカ生活の経験がある)、そして動物が猿鳥犬の桃太郎トリオだったり、宙を浮いたり、そりに乗ったり、一体動物たちは何を目指しているのだろう? 昔のメルヘン調を残しつつとても暗示的な世界を作っている。こういうのってありそうでなかったような気がする。

最近あまり余裕がないのでこれにて終わり、写真もインスタにて割愛しますが、パリのみなさん、見に行って考えてみてください。18日まで

Galerie Treize-dix : 13 rue Taylor

 

 

注:女性シュールレアリストの世界は葛藤および魔術的な世界が多いですからね〜(参考投稿