2016年4月29日金曜日

イメージの尻取り

「玉突き衝突」"Carambolages" という妙なタイトルの展覧会がグランパレで開催中美術館サイト。これは私のブログでよく紹介されるジャン=ユベール・マルタン氏 (Jean-Hubert Martin、いつもと同じ紹介になるが、彼は「大地の魔術師たち」展を企画したことで有名)がキューレート(関連投稿)。色々な地域•時代の作品を並列的に展示する「キャビネ ド キュリオジテ」型展覧会だが、今までにまして歴史性も思想性も見られないので評価が芳しくないように思われる。それは実にもっともな批判なのだが、おそらく的を得ていない。というのもここで展開されているのは、一つの絵の中の一つのモチーフが次の絵に引き継がれるという、ただの「意匠の尻取り遊び」にすぎないからだ。

つまり真面目に考えてはいけない。私にはとても楽しいひと時だったが、そういうことに意味があるのか?と問う人にはきっと面白くない。 単に「見る楽しみを共有したい」というがマルタン氏の意図だと私は思う。それを物語るように会場には博物学的な展示作品に関する詳しい説明は一切ない。

だから私も色々なサイトから写真を拝借して以下に単に並べます。





楽しませてもらった私が残念だったことは、いつも「世界には一杯面白いものがありますよー」と知らないものを紹介してくれるマルタンさんにしては、今回はほばすべての展示作品がパリ近辺の国立美術館の所蔵品で「大発見」がなかったこと。こうして私の新たな知識を求めたがる一種の教養主義も否定されたかとも思ったが、これは単純に財政削減が原因というのが私の「確かな情報筋」の話です。

会期はまだまだ、7月4日まで


過去の関連投稿
現代「キャビネ ドゥ キュリオジテ」論 続 ...
現代「キャビネ ドゥ キュリオジテ」論 

写真をもっと見たい人は例えば Rouge Dreams というブログをご参考に

葡萄酒は土壌?


シャンパーニュ地方で不思議に思ったことがあった。葡萄畑の表土にガラスかタイルの破片のように見えるものが一杯光っていたのだ。葡萄栽培に良いなんて思えないし、、、?

そうしたらちょうど偶然TVニュースで、ロゼワインで知られる南仏コート・ドゥ・プロヴァンスの葡萄農家が建築業者から瓦礫を引き受け、副収入としていることの報道があった。危険物質が含まれない限り違法にはならないのだが、地名を冠し、「葡萄酒は土壌と気候」と世界のワインに対していつも胸を張っているフランスワインが「他所から運ばれた土を混ぜて作るとはなんじゃいな?」 いわんやそれが瓦礫ではねー。
次のビデオがその放送




物知りのMさんによると「シャンパーニュでも同様のことがある(あった?)。そもそもシャンパーニュは石灰質の痩せた土地で、シャンペン向きのブドウ以外は育たないからねー」とのことなのだが、それだからいいことにはなりませんよねー。Mさんの言が本当か「シャンパン」と「瓦礫」をキーワードに情報検索してみたのだが、なかなかコート・ドゥ・プロヴァンスのようは話に行き当たらない。
やっと見つけたのが1995年のリベラシオン紙の9月の記事(source)。これによると「90年代前半までシャンパーニュ地方ではパリなどの大都市のゴミをどんどん引き受け、生ゴミで土壌を豊かにすると同時に瓦礫でと土地の浸食を防ぐということが広く行われていた!!!」 専門家の分析では「味には関係しない」(笑)とのことだが「流石に高級品のシャンパンのイメージにそぐわないから行われなくなった」ということで、、、私の見たのはその残存だったのか???(土地に混ざった瓦礫はそのまま残るでしょうから)

と言う訳で「葡萄酒は土壌と気候」とよく言われるが、結局土壌なんか関係なく気候あるのみということではないか! そうなると地球温暖化をもっと心配した方が良い。そのうちボルドーでもとんでもないワインしかできなくなるかも。

2016年4月25日月曜日

ちょっと一言、近況報告

ちょっと間があいてしまったので近況を少し。

最近色々なことに振り回されて、、、というか自分で自分を振り回しているところも多いのだが。先ずは大きな卵を2つも産んだ。というのも南仏プロヴァンス(リュベロン)のアート作品一杯のB&B(かつ画廊)のChambre Avec Vue にイースターで飾ったらと送った3つの卵(イースターには卵がつきもの)の2つが売れてしまって、他にないかと問い合わされ、、、産むしかないか?!?
実は売れたのには全然驚かない。というのも銀行の展覧会でもこの二つは一番人気で幾つか口約束はもらっていたのだが、如何せん仲介役のフォローがないから話はちょん切れ。それが南でやっと孵った感じ。
人気のあった2つの卵は絵の右側
卵は2014年制作「今日世界は生まれた」シリーズだったが、新しい作品は別物:以前より真ん中の区切りを強調した「水平線」シリーズ。
昨日今日はまた暖房を入れ真冬用ダウンを着る寒さに戻ってしまったのだが、1週間前はぽかぽか陽気で塩も小粒ながらしっかり結晶。そしてできたての卵をシャンパーヌ地方の中心都市ランスReims まで配達(ランスにガーナのワークショップの同輩であったフランク君がシャンパン会社の事務所に作品の設置をしていて、そこへ画廊の人も来ることになっていたので)。今やTGVでパリから45分!あまりの近さに驚き。
ランスは歴代のフランス王が戴冠した大聖堂で有名だが、「微笑みの天使」の写真に馴染みすぎていて行ったことがあると思い込んでいたが、街に出てやはり初めてだったことを確認。大聖堂正面はあらまー、工事中でした。この日も天気がよくて、久しぶりに田舎を散歩した。

写真:大聖堂は戦災にあったからだろう、現代ステンドグラスが多く、これはシャガールのもの。晩年作にしては職人の腕がよかったのか、意外にちゃんとしていた(笑)

そしてパリに戻り、この調子で「一気にテーマ展用のドンキホーテの大作も」と連日がんばったのだが結果はもう一つ二つで、、、。画廊スペースはどんなかと見に行ってみたら「小さい」と言われてはいたが思った以上に小さくて天井も低く、一つで十分と「個人的」に結論(一つなら「なんとな〜くドンキホーテ」の昔の作品があるのです)、これにて一件落着。がんばる必要なかった。

4/10記のサンドニの画廊からは「次の展覧会予定まで間があるから個展をしよう」と突然言われ、その気になって何を新たに飾るかを考えたのだが、急なうえに、よくカレンダーを見ると祝日などがあり開廊日は僅か3、4日。「これはやるに及ばない」と結論。言い出しっぺの画廊も意外に簡単に納得。なんだこれ?

作品設置中の Frank Morzuch
そして私が2012年以来やめてしまったランドアートのフェスティバル、久しぶりに「まさか入るまい」と安心して出したラフな企画が通ってしまった。これも現地制作4-5日という「私の哲学」には相容れないものなので、「魂を売っていいのかな?」と一晩自問したが、「見知らぬ地方に行けるし、野外制作は健康的だし、ペイもいいか」という安易な考えで受諾(かつコチラが提案したの話ですからね〜)。しかし具体的に全く考えていないので水曜からボルドーを流れる開催地のジロンド川の河口地方へ行く。こういうイベントは「村興し」を兼ねているのでまたまた辺鄙な場所で、視察は迎えに来てもらえるけど制作時はどうしたらいいんでしょうね???(こんなことも担当者と相談せねばいけませんので9月の話ですが即視察です)

こういう自分の話はウラを取らなくても良いので、一言のつもりが長くなりました☺


関連投稿
上記プロヴァンスのB&Bのイースターに関しては旧ブログの
http://blogs.yahoo.co.jp/eizoart/67420631.html
とその次の投稿(矢印をクリック)をご参考に

関連する新作デッサンに関しては「毎日の作品」の4/16
http://eizodessine.blogspot.fr/2016/04/horizon-paleozoique.html
前後をご覧下さい

後記:ランスとは余程性が合ないのか何年か前はアミアンと勘違い、今回は間違えて、昨日レンヌと書いていました。大間違いを指摘してもらい訂正しました

2016年4月11日月曜日

I ♥ Bernard

J'aime le batiment de la Fondation LVMH. Donc j'ai écrit sur elle (article du 2/11/14) mais je l'ai fait également sur l'histoire de la concession du Jardin d’acclimatation(réf) et sur Monsieur Bernard Arnault (article du 15/05/15) pour les lecteurs japonais.
En fait le premier est un article le plus consulté dans mon blog, par contre le dernier est très peu lu. Dommage, donc je fonce le clou.

統計によると私のブログで最も読まれているのは2014年に開館したルイ・ヴィトン財団の美術館に関する記事(2014/11/02)で、ヴィトン財団の代表取締役のベルナール・アルノー氏(Bernard Arnault)のことを書いた2015/5/23の記事は殆ど読まれていないのは残念至極と思っていたのだが 、彼に捧げられた映画「メルシー パトロン」が現在パリで上映中。

映画は美術館とは全く関係なく、I love Bernardをスローガンにアルノー氏と系列企業の底辺の労働者との会話を築こうとする(笑)、François Ruffinのドリュメンタリー映画。仏北東部のピカルティ地方の「KENZO(高田健三)」の服を作っていた系列企業を2007年にポーランドへ生産拠点を移すことで工場閉鎖、その結果失業し借金で家を売るしかなくなった夫婦をRuffin氏が悪知恵(?)でヴィトングループにプレッシャーをかけて助けるお話。

こんなマイナーな映画が何週間も上映されるに至ったのは3/8に触れた「労働法改正法案」反対運動と、それに触発されてフランスでも遂に起った先週以来毎日レパブリック広場を占拠し始めた「99%」的な反制度運動が背景にある。この流れはフォローできていなくて、、、
その一つの理由は、実はHD化でテレビが使えなくなって、、、あまり必要ないから最低25€するらしいアダプターを買わずお釈迦にするかと思っているのだが、今回は6月からサッカー、ヨーロッパ杯があり、前回の地上デジタル化のときは南アでワールドカップがあった。「サッカーと連動させるのはずるい!」と一人で叫んでいます




メルシー、ベルナール とはいえ私は軟弱で(?)「坊主憎けりゃ袈裟まで憎し」ということがないことは以下の投稿を読んでもらえれば分かります。

 
ヴィトン財団 関連投稿 
フランスの新名所 ルイ・ヴィトン財団(2014/11/2)    
ルイ・ヴィトン財団 追加写真 (2014/11/2)    
二つのダンス、二つの叫び(2015/5/20)   
身も心も(2015/5/23 

2016年4月10日日曜日

今度はサンドニ!

Nouvelle exposition "Garden Lab #2" à laquelle je participe : jusqu'au 28 avril, HCE Studio Galerie à Saint Denis.
Les mardi, jeudi et samedi de 15 à 18h ou sur RV..

En fait je parle un peu de la ville de Saint-Denis aussi bien que l'expo aux lecteurs japonais.
Vous les francophones, vous allez voir le lien ci-dessus à propos de l'expo.

エジプトの「王家の墓」がルクソールならば、フランスのそれはパリ北郊外のサンドニ!
写真のサンドニ大聖堂(Basilique de Saint-Denis)には歴代のフランス王が眠っている(ウィキ)

一方サンドニは19世紀より貧しい工業地区として知られ現在も移民層、特にヨーロッパ外からの移民が人口の30%以上で、目抜き通りのレビュブリック通りに出ると人並みも多いが街頭商人が一杯、「どこの国に来たのだろう」という新鮮な驚きとある種の熱気につつまれる。日本のヘンテコな「おフランス」というイメージに対して私は「フランスは第三世界の玄関口」と言っているのだが(蔑視的な意味ではなく歴史的現実的見地から)、まさにそれを証明してくれるような、、、。エキゾチックで楽しくもあるのだが、犯罪率も高くて、行くのを怖がるパリジャンも多い。

もう一つサンドニで有名なのはフランス最大のスタジアム。これが象徴するように近年都市開発が急速に進んでいる。


さて、今度の展覧会はそのサンドニ、前述レビュブリック通りのすぐ近くという「思いもかけない立地」のギャラリー。展示のメインは画廊のある小路地を緑化しようという民間主導型プロジェクト。雨樋の近くに植物を這わせるようにする。これは若きジュリアン君(Julien Bellenoue)とニコラス君(Nicolas Gimber) の設計。彼らはコンポストの写真をディジタル処理した作品も展示。同じく造園設計を勉強したアメリー嬢(Amélie Blachot)のヴェルサイユ宮の庭のプラタナスの輪郭をたどったドローイングとグルノーブル近郊の等高線ドローイング。ここまでが主題のガーデン・ラボで1階に展示、私の「海水デッサン」は「おまけ」で、主に2階の事務室に。

今回はそういう事情で画廊のGさんにアトリエで作品を選んで持って行ってもらい展示も画廊任せ、昨日のオープニングまでどんな展覧会か知らないままという、ガニーとは全く反対の贅沢(参考)をさせてもらった。

そのガニーの展覧会の終了後、作品が戻って来たので、アトリエを整理して収納スペースを作らねばと思っていながら何もしていなかった。だから突然「おまけ」として招待してもらって大きなデッサンを7品も持って行ってもらい、かつ南仏リュベロンの画廊にも卵三作を引き渡した。お陰で「大掃除」の必要がなくなり大助かり。

展覧会 Garden Lab #2 は4月28日まで
(火木土、午後3〜6時)


関連リンク:

HCE画廊
Julien Bellenoue
Nicolas Gimber


そう言えば1/11に紹介したニコラ・セスブロン君の不思議なアトリエもサンドニの工場跡でした。


注:聖堂の写真はPHという歴史遺産紹介サイトから、レパブリック通りはUne Balade à Saint Denis(サンドニ散歩)というサイトから転載しました
Note : j'ai pêché la photo due la Basilique du site PH et celle de rue République de site Une Balade à Saint Denis