2017年11月29日水曜日

税務の曲芸

「パラダイスペーパー」のテーマ作品、前回書いたようにやる気満々だったのだが、これというアイデアが出て来ず久しぶりに相当悩んだ。最近のドローイング作品はアイデアなしで描き始めるほぼ「即興」なのでその悪い癖が付いたかも?
一応自分で月末を締め切りとしたのでまた悩み直し、できたのがこれ。


 作品は写真も撮らずに送ってしまったが、 税法の目をかいくぐるのはブスブス刀を刺された箱からニコニコして出てくる「曲芸師」のような仕業と、サーカスの写真を見ては色々描いたみたのだが、「何これ!」というほど曲芸師の柔軟な身体の不気味な不思議さが出て来ない。「ピカソは上手いこと描いていたよなー」と思い出してサイトで見たら脱帽。これには適わぬし、「曲芸師」を描くことが目的でもないのであっさり頂戴し、下手に似顔絵描いて誰か分からないのもいただけないのでアルノー氏もサイトからこれも写真で頂戴*し、いとも簡単にできあがり。でもピカソの有名な言の如く「それまでの何十時間もの思索がありましてー」。考えたから良いってものではないが、自分としては結構満足。

「天才」と称されるピカソ、私は意外に頭でっかち(戦略的)と思うので褒めないことが多いのだが、次の「アクロバット」とか「ミノトール」とかのグラフィズムではまさに天賦の感性がほとばしり目を見張らせる。



 以上順に1930年、28年の作品だが、今パリのピカソ美術館ではその直後の「ピカソ 1932年 エロチックな年」という特別展を開催中。あまりにもタイトルが酷い(観客を馬鹿にしている?)が、考えを改め参拝してみようかなー。(2月11日までだから超余裕)

話を元に戻すと、こんなに税金を免除できるという「曲芸」も良いんですよ、法の不備を指摘して「エライエライ、拍手!」しますので、アルノーさん、やっぱり地位に見合った社会貢献してくださいな。

以上作品説明をしてしまったが、これは事情を知らぬ日本人向け。展覧会(南仏ヴァール県のロルグ Lorgues という田舎町にて)では「無題」で、各人の解釈にまかせます。 →画廊サイト


注*:実は写真を拝借した「笑顔のアルノー氏」はマクロンと握手しているところでした〜

2017年11月20日月曜日

悲しきパラダイス

前回防衛大臣の給料の話で我田引水的に私の持論「スポーツとしての資本主義のススメ」を持ち出したのだが、その直後にパラダイスペーパーが発表されたて「何これ!」。だって私の「ススメ」とまったく正反対のことをお金持ちが精を出して行っているのだから。(私の「逆転の思想」の逆だからまっとうなのだけど、、、)

昨年のパナマペーパが収入隠しの「犯罪」だったのに対し、今回の「パラダイス文書」は法の不備をつく「ウラワザ」。だから「合法的」で後ろ指をさせない(のかなぁ?):誹謗として訴えられる可能性があるのだろう、ニュースの解説なんか何度も「あくまでも合法的」と「おことわり」が入り、何とも滑稽で、、、(悲)。

にもかかわらず気分を害するお金持ちは当然いて(?:そう言う意味では人間性がまだある?)、我がブログでお馴染み、フランス一の資産家のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏**は、豪華ヨットを税金の安いマルタの会社の所有として自分はレンタルしているという手口など、コンサルタント会社を通して資産を6カ所もの「パラダイス」に布石していると「紹介された」のだが、その為にアルノー氏率いるLVMHルイヴィトングループは「年末までルモンド紙の宣伝を切ることにした」と某紙にすっぱぬかれた。ルモンド紙は「パナマ」「パラダイス」の膨大な機密流出情報を調査するメンバーの一員なのである。
でもLVMHはその後「従来紙の記事削減は長期展望による決定で某紙の勝手な解釈」でしかなく、「ちゃんとルモンド紙上の宣伝は続いています」とのこと。だからあくまで「?」です(笑)。

こんな具合で、友達が「パラダイスペーパー」をテーマに展覧会をするから何か作れと言って来たときはやる気満々だったのだが、こういうふうに「憤懣」というか、言いたいことがはっきりしていること*って文章で十分で「美術作品」にならないんだよなーと朝から悩み、結局今日はブログで終わり。


*言いたいことは勿論「お金持ちの倫理高揚」施策。でもブログを書く為にネットで記事を見ていたら「私だって金持ちだったらそうする」なんてコメントする倫理なき貧乏人もいて悲しい限り。
 この「合法的行為」の仕方は参考にこのルモンドの記事をご参考に。下の方にイラストもあるのでフランス語読めなくても大体分かる(私は読めても大体しかわからないが)。掲載写真も同記事より。

しかし先月のマクロンの「大資産税」改正で豪華ヨットがどうのこうのと言っていたがあれは何だったのだろう??? これはまた気が滅入るので次の機会に


**アルノー氏が登場する既掲載記事
2015年5月23日土曜日 身も心も 
2016年4月11日月曜日 I ♥ Bernard

 

2017年11月5日日曜日

給料は5分の1!

マクロン大統領下の防衛大臣は5月に Sylvie Goulard 女史を任命されたが、加入する中道政党 Modem の不正雇用の疑惑が起こり即辞任。
まだ半年なのに記憶の外に遠ざかってしまったように思えるが、マクロンが当選したのはそもそも右派共和党のフィヨンが奥さん子供を「架空雇用」していたことが、新聞の暴露され、法的「取り調べ」までに至ったのにもかかわらず候補を下げず、特攻隊的に選挙に猛進したからだった(参考投稿)。だからマクロンにとって「政治道徳の回復」が最初のモットーで、防衛大臣だけでなく法務大臣になったModem党首のフランソワ・バイユーも就任1ケ月で辞任したのであった。

その後を受けて6月に新たな防衛大臣になったのはまたまた女性:Florence Parly。シルヴィーさんは外務畑出身らしかったが、フロランスさんは財務のプロで、エアフランスそして仏国鉄という赤字に悩む国営企業の経営再建に当たっていた人だったのでかなり異色の抜擢だった。

マクロンは「政治界一新」の旗印の下、経済界から大臣を多く募ったので、お金・利害関係が「うさんくさい」ことは避けられないのだが、最近の新しいスキャンダル(といっても「話題」程度で今のところおさまっているが):フロランス・パルリが大臣に就任するまでの今年度6ケ月の仏国鉄での収入が315 418€(つまり月当たりにすると約680万円)で、2016年度の年間収入が365 561€だったの対し異常だというのである。それに加え2014年に仏国鉄総裁に任命されてエアフランスを辞任した時の退職見舞いが675000€(税込)というのもあがってきて、、、。先に書いたように「両方とも職員には緊縮を強いる赤字企業ですからね〜」

だが実は豈図らんや、私がこの話題を、1ケ月のブログの休みをブレークして紹介するのは、フロランス・パルリの「高所得」を非難するためではない。
フランスの大臣の月給は現在9 940€(約130万円。といっても手当などの優遇処置があるから複雑だが)。フロランスさんの就任前の6ケ月間の収入を月割りにすると約680万円、つまり5分の1以上の減給を受け入れても大臣になったという事実ゆえ! つまり高額所得者にとっても「金」だけがすべてではない(それだけが評価レベルではない)のではという一縷の希望が私に芽生え、、、。
 
というのは私が度々引き合いに出す持論「スポーツとしての資本主義* のススメは、ふつう「高額所者の課税を増やすと海外に逃げるだけだから」と一蹴されるのだが、事実がそうでも(参考投稿)そんな嘆かわしい論理がまかり通ってはいけないのだ。そういうことをする金持ちは世界中の侮蔑の対象になるべき。「経済人としてのもっと高いモラルがあるでしょ、それをもっと高揚せねば」というのが私の唱えるところなのだ。
だからフロランス・パルリのこの例、「醜聞」にするより、「超減給に甘んじても国・社会への貢献を選んだ行為として褒めるべき」だと思うのです。(この逆転の発想、分かってくれる人いるかなぁー? 勿論これは人の何十倍、何百倍もの収入を是としない私の主張と矛盾するものでは全くありません)

この記事を書く為に写真を探したら彼女、54歳なのにいやにカワイいですね〜。でもそれには私の意見はまったく影響されていませんよ(笑)、だってアップの写真なんか今まで見たことなかったから。(しかしこれも女性蔑視発言になるのかなァ…)

ところで彼女の収入はスキャンダルと言っても「暴露」というより、オランド政権でのカユザック経済大臣の隠し口座スキャンダル(参考投稿)があったので「政治の透明性」を高めるため大臣は資産を報告せねばならなくなった結果で、健全な兆候とも言えます。
それから経済界といっても彼女の場合は生え抜きエリート育成の「国立行政学院」出身で、経営者というより高級官僚と言った方がよいでしょうから、その分モラルが高くないと困りますけどね。 かつ社会党(今でも?)だし、、、(苦笑)。


* 注:「スポーツとしての釣り」が捕った魚を測ってから河、海に返すように、儲けたお金は評価・表彰した後に社会に還元してもらう。
テーマとしてこちらもご参考に: 2013年10月7日100歳の税金