2025年8月16日土曜日

16世紀の城の現代美術、オワロン城

気温が37度になると人間の吸う息の方が吐く息より低くなるのだろうか。つまり人間は外気に対しクーラーになるのだろうか??? フランスでもそんな暑さになることがあるようになりました(ただし我が地下アトリエは快適ですが)残暑お見舞い  
 
ここからが本題:

「初めてビートルズのサージェント・ペパーズを聞いたときの感動は一生忘れられない」と言う友達がいたが、彼は私よりいくつか年齢が上だし英語ネーティブだからまさにエポックメーキングなイベントに出会った感動というのがずーっとあるのだろう。

美術展に関しての私のそうした感動は1989年の「大地の魔術師たち(Magiciens de la terre)」にある。これもその時代を経験をしないと、つまりその以前と以降の空気を肌で感じていないとカタログを見たからと言ってその感動は伝わらない。とはいえ各人個人史の違いがあるからをその時サージェント・ペパーズ聞いて感動しなかった人も「大地の魔術師たち」をみて感動しなかった人も大勢がいるのは当然だが。

まあともかく 「大地の魔術師たち」はその後の美術展の一つの節目、融解点であり、その後はかつての美術展のフレームが溶けて色々な方向に流れ出したように私には思われる。

その融解零度の感触を守った感のある場所がフランスの何処とも説明しがたい片田舎に忽然と立つルネサンスのお城にあった! それもそのはず、そのコレクションの基礎は「大地の魔術師たち」のキューレーターだったジャン=ユベール・マルタン Jean=Hubert Martin によるものだからだ。 

 



「軍隊の間」(パノラマ写真)
 
16世紀の天井画 

そのChateau D'Oiron(オワロン城)、その現代美術はおフランスの国立コレクション、つまり国立美術館なのだが、周りはほぼ真っ平らな畑が広がり近辺にこれといった街も観光地もない田舎で、知る人ぞ知る(?:実は私も最近まで知らなかった)。車でしか行けないのだが8月で駐車場の車の数が指折り数えられる程度だったからよっぽど興味を持つ人以外は来ない。(このままだと好き勝手言いたい放題の今の嫌な女性文化大臣に予算をカットされてしまうのではないかと心配になってしまうので非力ながら宣伝致します)

ここは16世紀に栄えた地方領主のお城、その頃はラファエロとかその時代のアートのコレクションがあった。その盛衰は歴史通でなければチンプンカンプン😅、有名どころとしてはルイ14世の寵姫のモンテスパン伯爵夫人が凋落後この城を買って最晩年に住んだ。 

それはともかく国が1943年に廃墟化していたこの城を買いフレスコ画や装飾を修復し、今やなかなか絢爛。だからポンピドーセンターとヴィレットというニュートラルな展覧会場で開かれた「大地の魔術師たち」とはかなり趣を異にするはずなのだが、ここでは城の建築も含めてキャビネ・ド・キュリオジテ的な融合というマルタンさんのエスプリがどっぷり。このコレクションが立ち上がったのが1993年だから時代的には「大地の魔術師たち」のすぐ後で、おそらく展示品も重なっているものもあると思う(確証なし&記憶に自信なし)。

アーティト側からそれに応えて作った作品もある。例えば2階に上って最初の大広間 「軍隊の間」、この立派な装飾豊かなサロンにはかつてルイ13世時代の戦争の英雄の絵が飾られていたらしいのだが、今ではそれを漫画化したような辻褄のない物品を組み合わせて作った可笑しな鎧のようなオブジェが飾られている。それら自体はそれぞれかなりゴタゴタしたものなのだが、空間の広さもあってか不思議にあっさりと極彩色の天井画と調和している。これは食事後のテーブルをそのまま固定した作品で有名な Daniel Spoerri で、ちょっと意外なようなやっぱりのような(笑)

この投稿の一番最初の百姓一揆みたいなBraco Dimitrijevicの作品もここだけのサイトスペシフィック。 

こんなふうに書いていくとキリないし、大きな空間の展示は写真も難しく、その場のハッとする感覚がでないのでごく簡単に終えてしまおう。ともかく見るものたくさんあって3時間以上いたけど最後は多少端折り、、、というのもここはカフェテリアとかいう洒落たものもなく近くの村もほぼ何もなし、じっくり長期戦するならお弁当持参で庭でピクニックしかない!


 

インスタで上げた写真は:

最初の動画はランプをワイングラスの影に映し出すBill Culbertの作品

次の写真二つは先の述べたDaniel Spoerriのアッサンブラージュで、動画は「軍隊の間」全体

「王の間」のイカルスの墜落がテーマの17世紀の天井画、その次が「美の女神達の間」 

Thomas Grünfeldの怪物

鏡の中で青い曲線が円になるFelice Varini

Tom Shannonの反重力彫刻

Charles Rossのレンズを通して太陽光が木を焼くのを毎日記録した作品  

オワロン城に招かれて食事した人のプロフィルが青線で描かれたRaoul Marekの作品

足で絵を描く白髪和男と川名温の日付画があったのはちょっと意外だった!

最後は私が苦手とする Marina Abramovic、クオーツのバイブレーションを感じて心の旅に出てくださいって、、、石の枕、痛いだけで何も感じないのですが

 


結局ここを私が非常に気に入ったのは史料では計り知れない「大地の魔術師たち」の「あの時」の新鮮味が保たれていることがあるのだが、単にノスタルジーを超えて私はやっぱりサイトスペシフィックな作品が大好きなのだと自ら確認するに至った。10年以上続けた海水ドローイングばかり続けてきたが、少し転換の兆しあり?や否や?

 

参考

オワロン城のサイト https://www.chateau-oiron.fr/

その中の現代アートコレクション Curios & Mirabiliaは https://www.chateau-oiron.fr/decouvrir/la-collection-curios-mirabilia

 日本語での簡単な解説:https://artscape.jp/artword/6068/

「大地の魔術師たち」とマルタンさんに関しては過去の投稿で書いています(ただし他のサイトに画像を頼っていたので絵抜け状態)


オマケ:YouTubeにこんなのもありました。Shannonの反重力彫刻の設置の様子です。 ちょっと面白い
 

 

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