しかしそれでも私は行く甲斐があると思うのは「ダンス」があるから。マチスの「ダンス」はニューヨークのMoMAと前記のエルミタージュにあるのだが、ともに2.6 x 3.9m の壁画的大作。前者(2番目の写真)は1909年制作で、マチスは「もう一つだな」と思い翌年(1910年)新たに描いた(最初の写真)。
「これはロシアの富豪シチユーキンが注文したが発表当時大不評で、、、」という美術史の解説は何かの本に譲りたいなあと思ってグーグルしたら、この事情を面白可笑しく書いてあるすばらしいブログを発見、ご参考に(でもこのブログは4本の投稿しかない!マレヴィッチの四角のこともありますので今回の私の投稿にはばっちりです:
http://d.hatena.ne.jp/ankeiy+art/20120515/1337035243
さて、では改めてこのロシアから来た「ダンス」見て戴きたい。マチスは簡単な一筆書きのマンガのようなデッサンでも何度も何度も線を引き直し、白い紙が陰影をつけるためでもなく黒ずんでしまうのだが、その執拗な線の探求がダンサーのよじれた足、背中、肩ににじみ出ている。輪になって踊る床さえも丸ではなく湾曲し、それがアクセントをつけ、
できた踊り手たちの姿はまさに「これでなくては!」とマチス同様私も思うのだが、皆さんはどうだろう? ピカソの「アヴィニョンの娘たち」が描かれたのはこの3年前、ピカソと同じくプリミティブアートに惹かれたのはありありと伺えるが、キュビズムの知的なアプローチで人体を歪めていったピカソに対し、マチスは音楽、リズムを現させる為に描いては消し描いては消しの画家の「視覚」のみで挑む。私がマチスに圧倒されるのはそこだ。そして色彩はというと、深い青、緑は「鮮やかな色」と言えても身体の赤茶は、絵を描かれるとわかるだろうがこれはとても重い色。それが「ダンス」するのだ! ドイツ表現派のキルヒナーが好むような色合わせで、彼の絵では断然重くなる(彼の世界がそうだからそれはそれでいいのだが)。つまり私はこの絵が本当の傑作(ほぼ奇跡)だと思っている。
そして「叫び」、これは大変なことになりそうですが、、、本当の「叫び」はオスロ美術館の油彩(写真上)。財団に来ている、美術館から一度盗まれたという曰く付きのテンペラ画の「叫び」(写真下)は、黒い特別スペースに入れられて「御開帳」されていますが、「これは大したものではない」の一言でおしまい(笑)
中学校で、今でも覚えています、ムンクの叫びを画集で見つけた友達が「すごい絵がある!」と見せに来てくれた。勿論「すごいな〜」と思ったが、実はその頃でもマチスのダンスの方が上だと思っていた。今回何十年ぶりに「本物」と再会してどうなるかと思ったけれど、飽きっぽい私には珍しくこのダンスは「一度惚れたら一生モノ」のようです。(女性だったら良かったのに!?)
7月6日まで。財団の展覧会サイト
* 注:「情熱の鍵」と訳しましたが、冠詞の含みを入れると「ある情熱の幾つかの鍵」となるでしょうか
追記:11月にあんなにきれいだった建物11/2紹介、今回は「叫び」ではないが、夕暮れ時はどうだろうかと夜11時まで開館の金曜日の宵に行った。ちょっと曇りがちなこともあったかもしれないが、結局はスッキリと青空が背景の方が冴えるように思われる。その上ガラスの外壁も少し汚れて来ているし、そして白い壁には金属接合部分からは錆のような色の流れた跡までついている!!!どうなるのだろう。掃除難かしそうだが、、、
私のブログが難解などとは到底思えないが、二つのダンス、二つの叫びが来ているのではありませんのでくれぐれもお間違えにならないように。
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