前回最後にちょっと触れたポンピドーセンターのジェルメーヌ・リシエ(Germaine Richier)、終了間近(6月12日まで)なので端折って書きますと:
彼女は第二次大戦の経験からだろう(旦那の故郷のスイスに避難した)、植物や昆虫に生の根源を求めるしかないと思ったようで、樹木から型を起こし、葉を型押したラフで神話的なブロンズ彫刻を作った。これが戦後直後の1940年台後半。スタイルもアプローチも異なるがルーツでは重なり合う現代のエコロジー的美術のスターであるペノーネ(参考投稿)の先を越すこと30年?!
女性作家だから長年干されていたなんて報道も聞いたが、それは最近の風潮(?)からの歪みではないかな。というのも彼女の彫刻はその表現主義的なパワーある個性的な作品は早くから認められ1954年には女性として初めてパリ市近代美術館(ポンピドーもなかったその頃ではフランスでは最大の現代美術館)で「巨匠彫刻家」として個展がされ、大画廊で南仏サン・ポール・ド・ヴァンスに大きな美術館のあるマーグ Maeght 財団ではいつでも作品が展示されている。逆に旦那さんも彫刻家だったらしいが、彼の作品は見たこともないし(笑)、、、ともかく女性というハンディキャップなんて完全にはねのける才能があった。
それがである、彼女はこの近代美術館での個展の年から癌で衰弱し3年後に56歳の若さでなくなってしまう。これが知らない人が多くなった(かもしれない???)の主な理由だろうが、先に書いたようなシャーマン的、エコロジー的な現代アートの潮流を先取りしたところがあるのが特に今注目される由縁だろう。でもそれ以前に一度見たら鮮明に焼き付く造形性のオリジナリティと力強さが圧倒的だと思うけどな〜。
私は鳥獣戯画を思い出してしまう近代美術館の個展用に彼女が特別に作った作品(54-55) |
上の作品の細部:木の枝、樹皮、骨などの型取りしたブロンズから構成されいます |
次は私が彼女の面目躍如たる作品と目している「森」という46年の作品。家族に送ってもらったオリーブの枝が手となり、その顔を覆って絶望して立ち尽くす姿は正面も背の区別ももはや意味を持たない。だから投稿の最後に掲載したビデオ撮りました。ビデオの最後の壁にあるのは彼女の言葉: 「物のルーツから出発しないといけないと思う。それはというと木の根、あるいは多分昆虫の四肢かもしれない 」
これは初期のものだがかじった果物の汁が乳房の間から臍、そして陰部へと滴れ垂れ落ちていく生命感溢れた作品 |
追記:インスタで写真追加。最後のは晩年の作で、結構アールブリュットしています
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