2018年8月1日水曜日

81歳のバイタリティー Kim Chong-hak

先日アジア美術のギメ美術館のへ地図に関する企画展(Le Monde vu d’Asie)を見に行った。これは地図の概念が曼荼羅などの宇宙観図から浮世絵師が想像したパリ風景など拡大解釈されすぎていて、「普通の地図」の色々が見たかった私にはもう一つ。

少し常設展でも見て帰るかと入り口に戻ったところ、Kim Chong-hakという韓国人作家が展示しているとあった。ポスターでは面白そうになかったのだが、最上階のロトンドという円屋根の特殊な空間なので、どんな風に使っているのかなと思って上がっみた。

それが展示方式は全く工夫なしで巨大サイズの絵が立ててあっただけ。だがきわめて「ヤンチャ」に描かれた、花や虫がひしめき蠢く極彩色のその大絵画はとても生き生きとしていて、「田舎の村での自然の目眩き繁茂はこんなだったなァ」と思わず8年前の韓国へ夏のレジデンスに行ったときの暑さと湿度感が身体に蘇った * 。


これでも左が欠けている
詳細

韓国のバッド・ペインティング(美術用語)? 若い作家かもと思ったら、1937年生の81歳の長老で、絵の裏側にあったビデオの彼は大きなキャンバスを床に敷いて、その上を歩きながら絵の具をふんだんに盛り込んでぐいぐい描いていた。

韓国では超有名らしい。ネットで調べてみたら日本でも小山登美夫ギャラリーで紹介されていたから知られているかも。
まあそのお陰で話が早くなる。以下結構詳しく書かれた同ギャラリーのページを参考にさせてもらうと:

名前はキム・チョンハク。

ダイナミックな具象画に至ったのは50歳近くで、作家曰く「1970年代から80年代までの韓国の画家達は、厳格な抽象絵画を追求し、主題は政治的、社会的であるべきだと信じていた。そんな中、彼は時代に逆行して具象絵画に立ち戻り自然を描き始め、アートに対する燃え上がる情熱を取り戻した」。そして「私の作品は抽象絵画をベースにした『新しい具象画』」であり「韓国の伝統的美から引用し、そこに西洋の現代美術の知識を加え、それらを混ぜ合わせたもの」との自身を定義している。

彼は韓国の古美術の蒐集家でもあり、上の引用のように伝統的モチーフからインスピレーションを得ているとのことで**、2階の韓国美術コーナーでは彼のコレクションの家具と自分の絵を一緒に並べている。それらが「対話」しているというほどしっくりているとは思えなかったが、ロトントの「夏」とは違った、冬枯れした野原など、また違う持ち味の絵が飾られていた。
韓国では「四季の画家」と言われているらしい。「冬枯れ」でも勢いがある。

2階の展示


右の瓜類とヒマワリなどのは絵画の一部です。

展覧会は10月1日まで 



参考

ギメ美術館のキム・チョンハク展に関するページはこちら(仏語)

キム・チョンハクさん自身のオフィシャルサイトはこちら(英語)

補足
 
* フランスの自然になれてしまうと日本や韓国の夏の緑の周密さは驚嘆に値します

** だから勿論日本画的なところもある


今日はなんで気に入ったかもう一つ分からないので一杯写真を貼付けました。 私は肩の不調だけで今夏は制作を断念しているので、81歳でのこの元気さに圧倒されたか? 私は絵を描くことはストレスでもあると思う(なかなか満足しないから)。「制作中止」はストレス抜きにとも思っているのだが、「描かないと気楽、でも寂しい」。今のキム・チョンハクさんはストレスなさそう。多分この辺が問題かな?

ついでに最後は「地図展」の方の江戸時代の日本地図。シュールでいいねー。





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