2022年1月23日日曜日

ペノーネと過ごす「時」

前回はフランスで活躍していた画家の作品をどう紹介しようか困って諦めて簡単になったが、今回もまたまた簡単、というのは私もどきが説明する必要がないペノーネ (Giuseppe Penone)さんでして、カタカナで検索してみると、、、

私が以前書いたことのある庭園フェスティバルを開催するショーモン城 * のサイトに、彼のプロフィールおよび制作アプローチのしっかりとした日本語の記述があって 、これ以上足す言葉(知識)がありません:

https://domaine-chaumont.fr/ja/zi-ran-toyun-shu-nozhong-xin-di/akaibu/2016nian-atosizun/ziyuzetupepenone

知らなかったのだけどわが故郷の愛知県が誇る豊田市美術館が幾つも作品をコレクションしていて、その解説を見聞きして貰えばもうこれで全てガッテンでしょう:

https://www.museum.toyota.aichi.jp/collection/giuseppe-penone 

 

はいここで今回のミテラン国立図書館の展示風景の写真をつけて、これでおしまい。簡単に終わった〜(笑)

上の写真の奥にある、年輪から削り出されたかつての木の姿の作品

ペノーネはこのように天井の支柱の中に木を見いだした

林のフロッタージュ

小品も:皮膚(唇)に銀杏の葉

背景の緑のドットは指の跡。吊るされているのは手で握られた粘土

 

簡単すぎるので言わずもがなのことを書くと、ペノーネの作品のキーポイントは:

その1「触感(触覚)」:自分の手や体で粘土に型押した作品や木の幹のフロッタージュ、身体の転写など。元々ペノーネもメンバーだった60年代にイタリアのアルテ・ポーヴェラ**の運動は、具体的な行為や現実の「もの」を提示して既成の芸術に反旗を翻したのだった。

その2「時間」:我々人間の時間、植物の時間から鉱物の地質学的な時間に及ぶ。その時間が残した変化:木の年輪、大理石の縞、我々の宇宙(地球あるいは自然)を時間の形跡として読み取る。

指紋のグリグリは生成的にはどうなのかわからないが、写真の緑の絵画は彼の愛読書(?)***の表紙にアイデアを得たそうで本を持った人々の残した指の跡を想像したとのことでキーポイント1の「触覚」であると同様2の「時間」でもある。かつこれってCovidでなんでも洗い取ることになった「今」と対比すると興味深いですなぁ。確かに近代文明は「跡(自然のまたは自然な跡)」を消し去ることを良しとしていた。

かくして皮膚、指紋、樹皮、変化=形成される時間の形跡にこだわり作品を作り続けるペノーネ。結局基本は60年代からブレていなくて、「未発表のものが沢山ある」という展覧会の宣伝を真に受けると「本当に見たことなかったかな?」と少しがっかり。私には発見と言うよりキレイにまとめられた確認の展覧会でした。

未発表と言えば、アカシアの巨木を西洋ニワトコ(sureau)の葉で擦ってフロッタージュした最初の写真の作品はそれ。見えるかなー、絵の周りにペノーネがアート、自然観などを手書きでイタリア語で書き込んだ(句読点が一つもないとか)。これが一つの大きな本でタイトルは「思考と樹液」(Pensieri e linfa)、これが今回の展覧会の題名にもなっているが、何が書かれているかは??? そのうち豊田美術館で展示されたら和訳もサイトに載るでしょう(期待)

私にはやっぱり彼の作品の中で、木の角材から一つの年輪に沿って木を削り昔の姿を再現させた作品が常に一番印象的だ(2番目の写真)。「本当にそんなことできるの〜」と見る度に思う。すごい綿密で時間のかかる作業だと思うのに、世界中に作品幾つもあるし、、、不思議不思議。→豊田美術館での「12mの木」

これはまさに次のペノーネのお言葉通りです:

「目の前にある物が論理的な理解を越え、驚き、感動、信じられないという感覚の領域に場を譲る。この次元が最重要なのだ。時代を生き残った芸術作品のすべてはこの感動を生み起こす力を持っている」

 

Bravo!

 

あれー、結局沢山書いてしまった(時間もかかった〜苦笑)

*** 注 "Leafs of Glass" Walt Whitman :19世紀のアメリカの詩人だそうで、キーファーのツェランと同じく私知りません(悲)英文wiki 

 

こちらが会場の国立図書館のサイト

https://www.bnf.fr/fr/agenda/giuseppe-penone-seve-et-pensee 

29日までだと思っていたらおお〜、今日で終わり。ちゃんとカレンダーに大きく書いておいてよかった♫ 

 
参考投稿
 
* ショーモン城(時代順)
2020年7月城の生活
 
** アルテ・ポーヴェラ


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