「お恵みを」で下に賽銭用の帽子が |
80歳の今でも元気旺盛に巨大な絵を描き、その絵は人で充満している。特に顔、顔、顔の連続。それらはラフに筆使いでサッサと描かれ、キャンバスには宴会の後のワインや食べ物が汚したテーブルクロスの様に絵の具がぶちまけられている(その種の物が貼ってあったりもする)。もうぐちゃぐちゃ描きまくる。これは僕が初めて会った時から全く変わっていない。「作品の初めは瞬間的な印象だけでそれ以外頭の中には何もない」と語っているが、彼はきっと描き出したらもう止まらない。つまり彼は落書きおじ(い)さん。本人も昔のニューヨークの落書きが好きだったようで、よくうつろな人々に混じってミッキーマウスのようなものも登場する。良く出てくる「目玉焼き」は赤貧時代の象徴らしい。落書きおじさんと言ってもキース・ハーリングなどの落書き兄さんとは違ってまったく溌剌とはしていないが、、、。
写真の男性がミルシュタイン氏 |
そのズーイに知り合ったのはもう30年ほど前。
私がパリで今のような生活をするようになったのは、パリ市のアトリエでリト(石版画)を習い始めたのがきっかけだが(参考:旧ブログ)、写真画像を転写したいと先生のジャックリーヌに言ったところ、オペラ座近くのミルシュタインのアトリエを紹介された。彼は自分のアトリエの半分を「市の版画教室」とし、先生をしていた。だが実際は、簡単な説明をされたぐらいで彼に何か教えてもらった記憶はない。アシスタントの女性もいたが、いないことも多く、かつ生徒は私ぐらいしかいなかったような気がする(まあここでも。授業時間内に限るが、やりたい放題させてもらった)。アトリエは「教室」の雰囲気はなく、人のプライベートな空間に入り込んでいるようで、、、。作品を見てもキレイにアトリエを整頓するタイプでないことはあきらかだろうが、そこには彼の絵やデッサンが一杯散らかっていて、彼自ら作品数の多さに驚いていたことがあった。僕はその「先生」の絵を結構気に入っていたのだが「色が濁って売れなさそう」と思っていた。しかし豈図らんや、その頃から彼はすでにまあまあ有名な作家で、ユダヤ人脈もあるからか結構「売れっ子」だった。今思うと小さいキャンバスの一枚や二枚簡単に失敬できたなぁ〜。
展示作品の一つ。右上はブルゴーニュの家かも |
今はブルゴーニュの田舎にアトリエがあるそうだ。
Claire Corcia 画廊(パリ三区)のページには絵の写真も充実していますのでご参考に。7月17日まで。(画廊は地下に大きなスペースがあります)
Note : Exposition de Zwy Milshtein à la Galerie Claire Corcia (Paris 3e), jusqu'au 17 juillet. (La galerie pocède un grand espace au sous-sol)
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