2015年6月15日月曜日

美術の Sens

説明上手の作家自らのガイドツアー
特産エスカルゴならぬ発掘された古代の貝殻
これは兵馬俑にみたてた中国製の西洋小人ですって
青銅の鉾と並んだ飛行機ナイフ
自分が展覧会をしている一方で最近は色々なものを見た。実は風邪を引いて、2日間は寝て療養していたが、咳・鼻づまりに悩まされる以外はそれほどどうということはないのだが、制作に腰が入らないから、「こんないい天気で海水デッサンしないなんて、、、」と思いつつもぶらぶらと。

特に土曜日はパリから南、のどかな丘陵の広がるブルゴーニュ地方の入り口のサンス(Sens)市まで「美術ブロガー」として出張(特別バスで連れて行ってもいました)! 
以前「ゴムボートに乗る消費文化」と題したアルノー・コーエン(Arnaud Cohen) 君が、サンス美術館(Musée de Sens)にて、特別インスタレーションと「回顧展」的に昔からの作品を通常の歴史博物館的展示物のなかに混ぜて発表中。私の「キャビネ ドゥ キュリオジテ」論などを読んで下さっている読者には「ああ、最近流行の手法ですねー」と頷いてもらえることだろう。アルノー君は奇怪なミュータントを思わせる作品を多く作っていて、そこには身体性、ジェンダーの問題、それに社会性と歴史、加えて個人史、はたまた呪術性などが含まれており、一作品の中でもリフェランスが一杯。だから説明を聴くのは楽しいことだが、それで「なるほどガッテン」しないのが私のへそ曲がりなところで、、、だって美術ってそこから始まるのでしょ? つまり作品の持つ単語はわかったけれど全体が散文にすぎないのか詩になっているのか? that's the question.
大聖堂に付随したこの美術館(むしろ博物館)の中にある「聖遺物」やただの発掘品などが、そんな解釈(意味付け)を不必要なレベルで意外に美術的に訴えてくるのはどういうことなのだろう? アルノー君のお陰でまたまたそんなことを考える機会になりました。

つまり私の興味はそんなところで、おそらくこの展覧会の意図とはかなりずれがありそう。彼の作品は文字通り「現代アート」の文法(手法)をキレイにさらっているので、学生さんや現代アート作家志望の人にはお薦めかな
古代遺跡に見なされた自宅の工事現場

私は複雑すぎるインスタレーション作品(概してリフェランスが多すぎると思う)より、自分の家の建築の為に土地を掘り起こしたところでてきたナイフ(実は昔のナイフ工場跡がだった)を古代文明の遺跡のように見立てて解説するビデオとか、「飛行機ナイフ」のようにわざわざ9.11を含蓄しているという解説など読まなくてもスパッと分かる作品の方が断然好み。
ナイフと言えば「キャビネ…論」で触れた「世界の劇場」展ではクネリス(ウィキ)の金魚の泳ぐ洗面器に包丁を突っ込んだ作品にショックを受けたし(「写真入りで書いていると思っていたので、今見て、ないのが不思議)、最近の「毎日のデッサン」では「マーラの死」(女性に短刀で刺された)が続いたし、どうも私はナイフ好きのようだ)

私が思っていた以上にずーっと有名だったアルノー君のこの大規模な個展は9月20日まで。infoはコチラ
ミュータントの一例

(付記:大インスタレーションの写真はサイトから拝借しようと思っていたのだがなかった)
ボロ切れからなる「正真正銘の聖遺品」


ちなみに表題は、市の名サンスに名詞sens(=意味)をかけた駄洒落でございます


Note: exposition "Arnaud Cohen : Rémissio" au Musée de Sens, jusqu'au 20 septembre



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