2016年3月29日火曜日

「不思議の谷」への旅

前回のハイテクアートがらみで、ロボットがサブテーマの "Persona, étrangement humain"(「ペルソナ奇妙に人間的な」)という展覧会を紹介しよう。

会場は「プリミティブ・民族アート」を展示するケ・ブランリ美術館、全体としては「人間の、他のものに人間を見いだす性向」がテーマで、美術館所蔵の呪術的なオブジェなどもあり4部門構成なのだが、ハイライトは日本のロボット博士の森正弘が名付けた「不思議の谷」、つまり機械が人間あるいは動物に似てくると最初のうちは似れば似るほど親近感がわくが、ある時点で急に違和(奇怪)感に反転する、そしてもっと似た高度なロボットになるとまた親近感が回復増加するという森氏の理論のネガティブ区間にスポットをあてている。でもこの谷の場所は明らかにその人の感性、時代、文化によるだろうからあまりピンとこなかったので、以下展示作品の紹介につとめましょう。興味のある人は次の詳しい説明でも読んで研究ください。

「不思議の谷」に入ってすぐ出て来たのは韓国 Wang Zi Won の「目玉」作品。目玉だけってのはそれだけでもう奇怪だと思うけど。私にはフランスのコインランドリーを思わせて面白かった。
彼女の「千手観音」(?)はこの展覧会のポスターになっていて、メトロなどで見ると「おお、すごそう」と期待してしまうが、意外に小品で少々がっかり。

目玉の横には私が好きなからくり人形系の「異様な」なメカ作品。作家は Stan Wannet というオランダの現代作家。私が美術館で撮ったのよりyoutubeに本人が投稿しているもののほうがよっぽどよいのでそれをリンク。




この作家は猿の剥製を使った、ボッシュ(ボス? Hieronymus Bosch 1450〜1516*)の絵 「手品師」をもじった作品も展示されていた。皮肉な感じで、 奇怪と言うより楽しいけれど。
youtubeを見ていたら横臥する剥製の兎がタイプライターを打っている作品(リンク)もありましたが、これはずーっと気味悪い。

それから彫刻を板状に切断して動かすジャック・ヴァナルスキ Jack Vanarsky(HP) の作品。


実はジャックは彼はご近所のCおばさんの旦那だった人で(09年逝去)、Cおばさんと娘さんは彼のアトリエを美術館の様にできないかと努力している。彼のことは書こうと思っていたけどそのままになっていた。後日紹介します。全般的にはジャックの作品も皮肉なユーモアものが多い。

そして最後にはインドの遊園地のキッチュな神様までいて、「不思議の谷」への旅のメカ編はとても「楽しめ」てしまった。

ローテク人形もので「気色悪い」のならやっぱり、以前にも紹介したチェコのヤン・シュヴァンクマイエル Jan Švankmajer のアニメ映画(youtube)ではないかと思うのだけど、どうでしょう? まさに「不思議の谷のアリス」! でもヤンさんはこの展覧会には入っていたかった。

 メカ編の後で日本のロボット開発のビデオとか 「不思議の谷」の部門だけでも全部見るのは大変ですので心して行って下さい。期間も長いのは何回も来いということか?

11月13日まで。サイト:仏語 英語



* 注:つまりボッシュは逝去500周年で今大きな展覧会がオランダの生誕地で開催中

ボッシュといえば「悦楽の園」にポケモンがいるこんな変な絵もありました。確かにボッシュも漫画と言えば漫画で笑っちゃいました。ちゃんと3屏風形の大作で、作家はWolfe von Lenkiewicz (HP)
これは「不思議の谷」へ入る前の章でした。


最後に苦い想い出:この展覧会は至極幅広いレパートリーの作品が多くて個人から貸し出しのも多いことに気がついた。実は数年前にここで企画された「雨」の テーマの展覧会の最後の壁に私の「雨の絵」を飾りたいと企画の民族学者のおばさんは言っていたのだが、最終的には個人蔵の作品の借出しできないとのことで没になった。それ以降方針が変わったか、作家の無名性ゆえだったのか? また言わずもがなの愚痴になりました〜☂

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