2013年4月5日金曜日

大臣の告白

昔のブログで今年はたて続けて事件から事件が起きて、、、と昔のブログで書いていた(「微分係数の世界」など)が、せっかく「美術案内」としてスタートしたブログコンセプトを爆破させる由々しき大事件ついにが起きた。

20年来スイスに隠し口座を持っていると12月に報道され、その疑惑に対しずーっとそれを否認し続けてきた財務大臣のジョローム・カユザック(Jérôme Cahuzac)、3月末にパリ検事庁が脱税容疑などの疑いの予審を開始するのを受けて辞任したのだが、2日に何とスイスの口座に60万ユーロ持っていること「告白」した。
こう書いてもフランスの事情を知らない方にはその大変さが伝わらないだろうが、現大統領オランドはサルコジーの金権政治を批判して5月に当選し、ギリシャ・スペインの経済危機の二の前にならぬよう財政赤字の減少をやっきになって助成金削減などの政策を推し進めざるえない状況だったが、その最先鋒の財務大臣が脱税をしていたのだ。そもそもカユザックは整形外科医で頭髪移植の診療所を夫婦で開いていて、そのお客さんは政財界の多岐にわたり、コンサルタント社を開いて薬剤会社と非常に密な関係にあった。どのように彼が政治家となり大臣までになったのかは私は知らない。ともかく「優秀」な人だったようで、オランドもなかなか辞めさせなかったのだが、潔癖政治を謳い、同様な事件が起きたサルコジ時代とはっきり差異をつけるなら、12月時点で辞職させるべきだった。そうしなかったのは「何とかもみ消せる」と思ったからではないかと勘ぐられるし、実際12月にカユザックの「隠し口座」を暴露したメディアパール(mediapart)は、現在ではその工作にも触れている。つまりただでさえも不況で落下一途だった大統領、内閣への信任はまさに一気に地に落ちた。右派はそれみたことかと一同に「社会党の潔癖性」を揶揄し、昨晩TVの討論会を聞いていたらサルコジの子分のような某議員は「政治の道徳(税による利益再分配)より市場を信用した方がましだ」とのたまった。つまり右派は内閣解散、政策の転換を要求しているが、いつも「知らなかった」との繰り返すばかりのオランドは「カユザック個人の問題で、内閣の問題ではない」と弁明した。しかし右派の合唱にもあきれる。そもそもかつての蔵相の同様なスキャンダルをメディアパールが暴露したときは、「トロツキスト集団」などと罵り、信用できない情報源としていたのである。こうして私のように新聞テレビで普通にニュースをフォローしている人間には完全な「政治的信任の崩壊」と言う大変なことが起きているのに、あの連中はわかっているのだろうか? 普通に行けば民意は極右極左に流れる。どうしたらオランドは信任を少しでも取り戻せるだろうか? ヴェリブに乗りながら名案がひらめいた。シラク時代の社会党内閣の首相で、2012年の大統領選一時選挙で極右に負けて政界から身を引いたジョスパンにここで復帰してもらうしかない。彼はその頃は工場閉鎖される労働者に向かって「政府が何でもできるわけではない」と言って人気をなくしたが、今ではそういう正直さが国を救うかも。と私は本気で思うのだが、「スポーツとしての資本主義」同様、これが名案だと思うのは世界で私一人だろう。

この事件は今後どう展開するかわからないので一応この時点で私の視点を書きましたが、このお先真っ暗の中、唯一救われるのはフランスではメディアパールというジャーナリスト集団がやるべき仕事をしているという点でしょう。


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