2014年9月5日金曜日

驚異の谷 Vallée des Merveilles

ベゴ山(Mont Bégo)
ヴァレ・デ・メルヴェーユ Vallée des Merveilles =驚異の谷という素晴らしい名前の地は、ニースから北80キロほどの標高2872mのベゴ山(Mont Bégo)の麓。ここは氷河で削られたU字谷で、1万年ほど前、つまり石器時代、旧青銅器時代に掘られた絵がある。この岩の掘り絵は15世紀から文献に載るようになったが、不吉な谷として恐れられ(地獄湖、悪魔の頂とかの地名もある)、系統だった学術調査が行われるようになったのは20世紀後半、現在では4000ほどの岩に4万以上の絵があると記録されている。刻まれた絵の鉾のスタイルから、新青銅器時代にはぱったりと姿を消したことがわかるらしいが、その後の羊飼いの落書き、あるいは近代の観光登山者の落書き彫刻もある。と言う訳で現在では登山路を制限し、一部を除きガイド付きでないと見ることができないことになっている。
ベコ山下の氷河動きが眼に見えるような岩

ここへ行くのはダムの人造湖のMèches湖から登山で3〜4時間(8月中は、鉄道、バスが通るSaint-Delmas-de-Tendreからもう一つの登山口であるCastérinoまでナヴェットが運行)。宿泊予定の山小屋付近居着いたら全輪駆動のジープが走っていてびっくり。これには私はガックリしたが、「私も行くー!」と喜んで同行してくれたCさんは長い上り道に根を上げ「今度はこれに乗る」と言うありさま。このCさんの体調もあり、第二日目は長い行路はあきらめ、午前中はガイドについて岩に彫られた絵を見ることにしたのだがこれは大正解。というのも何と我々二人のプライベートツアーだったから。

絵は尖った水晶で穴を刻んだ点描画。描かれたモチーフは多彩だが、圧倒的に牛の頭が多く(45%)、後は領土の区画のような幾何学模様(7%)、鉾などの武器・道具(4%)が多く、少数だが人や渦巻き模様のようなものもある。解りやすい牛の頭も角を会わせて対象になっていると、丸の両側に三角の尖りのある幾何学意匠としか見えない。牛が二つ並んで四角があると鋤を引いているとか説明されないとそうとは解釈されないだろう。象形文字の走りだという仮説が立つほど、つまりあまり写実的ではない。

絵の刻まれた岩の割れ目には草も生え、、、
岩絵はあちこちに点在し、一つの岩に沢山あったり、巨大な岩壁の下の方にちょっとだけあったりで、どうしてなのかは色々仮説があるがミステリー。「何故ここに」と言う疑問への唯一確実な答えは「氷河で表面が滑らかに平に削られた、彫りやすい岩があったこと」。ガイドさんによると、繰り返し繰り返し牛頭を描いたのは明らかに呪術的。古代地中海文明の「雄牛信仰」が伝わっていた! これも彼の仮説で、私は「ただ牛の数を数えていたのでは?」なんて思うのだが、、、。解釈は研究家に任せることにして、私の鑑定眼(?)では技術も描写も稚拙で何れにせよ「優れた美術作品」とは思えない。だから写真で見た時はそれほど興味が沸かずガイドも不要と思っていた。だがポツンポツンと自然の中に散在し、その景観と光はやはり重要。マチスの礼拝堂ではないが、これも写真と本物を現場で見るのとの印象は大きく隔たっていた。

この谷間はミルティーユの宝庫!
実は最初はニースから、一昨年のプロヴァンス列車に続き、これまた絶景が楽しめるというメルヴェーユ列車 Train des Merveilles 参考 に乗るというのが目的だったが、「やっぱり山に行ったら登らねば」と登山靴を持って来た。結局Cさんの参加で車で行くことになり列車は乗らずじまい(でも9月はナヴェットバス日運行がなかったので助かった)。
そのメルヴェーユ列車行ける中心都市タンドル Tendre には、これまたの命名の「メルヴェーユ博物館」サイトがあって彫り絵の複製と幾つかのオリジナルも見える(入場無料)。何とこの博物館には日本語の案内もあって、、、前回のマチスやマーグ財団の様に日本では知られていないだろうといつもより詳細に書きましたが、ひょっとして有名なのでしょうか???(クイズ番組とかで?)

最後の写真はガイド氏と私。下の湖岸奥に山小屋があるが、フランスの山岳観光地ではモンブラン周辺に続く地域で、小屋と言っても80人収容、毛布もあって寝袋をわざわざ持って行く必要もなかった。とはいってもシャワー自然の冷水、寝室は2段の大板間で鰯状態で寝る。私が驚いたのは、利用者の優に過半数がシルバーという年齢層とドイツ、イギリス、イタリア、スペインなどからの国際性の豊かさでした。

仏語参考ページ:http://www.hominides.com/html/lieux/vallee-des-merveilles-gravures.php



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