2013年6月14日金曜日

第三のパラダイス 前編

(前回からの続き)

アルテ・ポーヴェラ Arte Povera は直訳すると「貧しい芸術」。多分「貧しい」とは素材のことだろうか、木、石から生野菜、それに工業製品などを素材にした彫刻もどき(今で言うインスタレーション)を60年代に行った。確かに写真のビーナスのように、ピストレットのぼろ切れは「貧しい」が、ネオンや冷凍装置など、当時としては高価な加工費の素材もあるので「貧しい=安価」という意味ではなく、社会が邁進する物質文明に対する精神性を求めた運動であったとうのが一般的(正しい?)見解。

それはともかくこの運動は幾人もの大作家を生んだ。去年ショーモン城の記事で作品を褒めたヤニス・クネリス、ネオン付きのカマクラからワニの絵に変貌したマリオ・メルツ、これも去年のカッセルで触れたアリギエロ・ボエッティ、パイプに湿気を凍らせるジルベルト・ゾリオ、それから今週からヴェルサイユ宮殿で展示する(だから後日書くことになるだろう)ジュゼッペ・ペノーネなど。ボエッティはアフガニスタンでホテルを経営(!?)、ピストレットさんも一時引退、スキーのモニターをしていたとかで、この変な生き方も作品の非物質性指向(これが「精神性」との一般的解釈に繋がるのだが)と関係してそうだ。

ピストレットの非物質性の第一シリーズは「鏡」。鏡に人がプリントしてあり、絵の中と環境が混じり合ったり入れ替わったり。あまりに単純で今まで関心を引かれたことがなかったが、今やディスニーランドかと思い誤るほど雑踏するルーブル(お陰で館内でスリが多発とか。それを理由に警備員のストもあった。皆様気をつけて)では、鏡の世界の方がまともな世界に思えてくる(周りの観光客に比べて鏡のアルテ・ポーヴェラのメンバー3人には「美術の使徒」のような趣が)。鉄格子の向こうで掃除する若者の状況も当時より社会批判力が冴えてきている(ともに元々の制作年は62年)。ボロ布ビーナスも67年の作品で、新しい作品はルーブルの基礎建築を見せる地下に作ったビデオとネオンの作品。古い作品も新作もうまく場所で生きている。

しかしこの古着の山とビーナスは何なのだろう? 説明も読んだこともないが自分で納得のいく説明を考えだしたこともない。ポンピドーでも豊田市美術館でも壁に向かっていたが、今回は窓でバックが開かれて違う次元があってより良いと思った。かついつもは影になる顔や手が照らし出されて 、、、「何もぞもぞ探してるのー?」と横からビーナスに聞く私であった。


(というわけで謎の臍にはまだ到達しない。パラダイスは遠い=後日に続く)

注:「毎日のデッサン」を見て下さっている方はご存知のように、カメラが壊れたため、携帯で撮影しました。沢山撮ったけどひどいのが多くて、、、

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