ビデオありオブジェあり、オルセーからミレー来ているのがわかるでしょうか? |
意外にと書いたのは、自分でも「今更ダリの騙し絵」を見てもねーと思っていたし、友達仲間でも「映画(アンダルシアの犬)はいつみてもいいけど、、、」と絵を評価する人がいなかった。つまりダリは、ショーマン的な言動、お金儲け、それからフランコ独裁政権に靡いたことなどから、フランスのアーティストの間では人気がないのだ。私も「近くで見たら何とか、遠くから見ると何とか」の「騙し絵」は言うに及ばず、今となっては純粋なシューリアリズム時代の「ふにゃっと曲がった時計」も「足の細い象」も、コンピューターグラフィックの方が上手にできて余計に色あせてしまうのではないかと思っていた。それがなかなか、ダリの技術はCGを凌駕していた。重要部分(風景の中の点のような人たか)の解像度がすごい。ひょっとしたらそれ故に若い観衆が多いのかもしれない。加えて30年代前半の秀作の作品の数、この細密な絵がどうしてこんなに沢山描けたのか不思議だ(全作来ている訳ではないし)。パリの知識人の間で法螺を吹いている時間がよくあったものだ。Aさんが言ったように、小品には奇抜な効果を狙わないが圧倒的な細密画技術で見る者をシュールな世界に誘う至宝の名品が目立った。
かつ色々なドキュメントが充実していて、ダリがアクション・ペインティングのようなことをしたり、レーザーホログラフの3次元画像を作ったり、時代の潮流に合わせて色々なことをするのだが、それなりにそれぞれを面白く仕立て、自ら「天才」と豪語した作家の卓越した才能は否めない。私は観る前の過小評価とは逆に、今生きていたらCGで何を作っただろうと可能性さえ感じてしまう。というわけで私は24年前に85歳でなくなったが画家の現代性まで感じたのだが、この「今更ダリ?」と思った回顧展の企画者が意外なことに、1989年に先進国の現代美術と開発国の民族的美術を同レバルに並べて物議もかもした画期的な展覧会「地上の魔術師」(Magiciens de la terre) をキューレートしたジャン=ユベール・マルタン Jean-Hubert Martinであったのだが、これも腑に落ちた気がした。人の話ではユベール氏はこれを最後に引退するそうな。世界中を飛び回っていた人だから奥さん孝行かもね☺
以前から思っていたことだが、ポンピドーセンター所蔵の「ピアノに現れたレーニンの6つの肖像」は細密手腕が今ひとつ際立っておらず(6つの顔がもっと瓜二つにして欲しかった)、これが私の評価を落としていた原因でもある。どうしたことかサン・ペテルスブルグのダリ美術館に秀作が多数あることを知った (美術館の存在するも知らなかった)。ロシアに行かれたらエルミタージュの後にでも。