3/29のケ・ブランリ美術館での「不思議の谷」展の記事に「また書きます」と予告したジャック・ヴァナルスキ(Jack Vanarsky) の動く彫刻が沢山見られる展覧会が現在パリ16区の在仏アルゼンチン大使館のアートスペース(Galerie Argentine)で行われている。
大使館でなのはジャックがアルゼンチン人だったからだが(1936年生)、これは彼の良き友であったオランダ人作家マルク・ブリュッスとの二人展で、「二人の友、一つの言語(Deux Amis, Une Langue)」というタイトルがつけられている。
タイトルらしく言語と訳したが langue は舌でもあり、会場には写真の様に二人それぞれの大きな「舌の作品」が、、、。つまり二人ともユーモラスで皮肉っぽい作品が多いのだ。
前述の記事に書いたように、ジャックはご近所のCおばさんのご主人だったので建物で時々顔を合わせたし、パリ近郊で自主展覧会を企画するコレクター夫婦のApacc(サイト)や2003年に扉やピアノの鍵盤が動いたりする大きな個展の時に話したことがある。元気だったのだが、2009年に突然亡くなってしまった。その後Cおばさんと娘さんがパリ郊外にある彼のアトリエを保管しようと「基金」を作って時々見せてくれるので作品は結構知っているつもり。知らないことは公式サイトで補い、そしていつものように独断的意見を交えて解説させてもらうと:
ジャックは62年からパリに居住(アルゼンチンでは62年に軍事クーデターが起きている)、65年から動く彫刻を作り出した。 この頃は13/4/19の投稿に書いたようなキネティック・アートが脚光を浴びるようになった時代で66年にはフリオ・レ・パルクがヴェニスビエンナーレの大賞を得ている。パルクもアルゼンチン人、ソトーはヴェネズエラ人で、南米とキネティックアートの関係は大きそうなのだが(多分南米ではリベラやシケイロスなどのメキシコ革命プロバガンダ的な壁画運動の影響が大きかったのでその反発か?)、視覚的な効果を重んじた抽象幾何学的なキネティックアートに対し、ジャックの作品は一見して「身体」、「本」といった「具象作品」で、実際ビデオを見てもらえれば感じてもらえるだろうが、見ているうちに身体がゆらりゆらり、自分もぐにゃぐにゃになりそうになってくる。 こういう不安感と自虐性を伴うユーモアと皮肉が所謂「キネティックアート」と全く異なるところ。
今回はおそらく日本で紹介されたことがないのではと思うジャックの紹介なので、マルク・ブリュッス(Mark Brusse)氏にはあまり触れないが、彼は次の日本語サイトで既に紹介されているのでこれを参考にしてもらおう。実は彼はこのブログの13年6月4の記事にも登場している。彼の作品は非常にコンセプチュエルである一方、写真の様に可愛いのや可笑しいのががあったり、もろ日本風のものがあったりして正直言って私にはもう一つ掴みどころがないのです。。。
会場では写真の様にモチーフに関連して二人の作品が交互に対話すべく上手く並べられている。
今回はこの記事を書く気になってCおばさんの許可を得て三脚を持ち込みビデオを撮影、編集で幾つかの作品を割愛しましたので会場にはもっと動く彫刻がありますよ。
会期は延長されて8月末まで
Galerie Argentine - 8 rue Cimarosa 75016 Paris
大使館内ですので
平日のみ:9時〜13時、14時〜17時
(アルゼンチンの祭日もお休みとのことです)
入館は厳重:入り口ではインターフォンをプッシュ、受付では身分証明書の提示を求められますので忘れないように。そのかわり一旦展示会場に入ってしまうと全くのトランキーロ。
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