アートだけではありません。35年以上も住んでしまったパリから、役立つ展覧会案内、アトリエの日常生活、旅日記、それにフランスの政治社会問題など、色々とりあげる、美術作家、坂田英三の正直な主観的ブログです。 C'est un blog d'Eizo SAKATA, un artiste-plasticien japonais de Paris. Les articles sont quelquefois écrits avec son français : cliquez "bilingue" sur la colonne de droite.
2022年4月25日月曜日
外国人の私のヤキモキ
2022年4月15日金曜日
ついに果たした「春」との再会
先々日書いたように私の今回の旅行の目的地は、タルコフスキーの映画の撮影地のバーニョ・ヴィニョーニだったが、もう一つの要件はフィレンツェのウフィチィ美術館、特にボッティチェリの「春」。私は大学時代に初めてイタリアに旅行して以来、あまりの観光客の多さにおじけて入ったことがなかったのだが、「春」は19世期に使われたニスのため全体が茶色くなっていたのを(つまり私はかつてそれを見ていたはずだがたいして覚えがない、泰西名画ってのは茶色いものだと思い込んでいたし)、80年代に修復されて鮮やかな色を取り戻したことを写真で見知っていたのだが、、、今はルーブルもがら空きだから、ウフィチィだって。「このコヴィッドのもたらした千載一遇のチャンス(?)を生かさなくてボッティチェリが泣く」とパリの昨年秋ジャックマール・アンドレ美術館のボッティチェリ展を見たときに思った。この展覧会のことは10月5日の投稿に2行書いただけだったが、結構混んでて、かつ同行人(ハンディキャップのあるご婦人でそのおかげでタダで入れてもらえる)に「このヴェールが、、」なんて絵の前で指差したら大声で監視に注意され、「注意人物」とみなされて以降本当に感じ悪かったのだ。ウフィッチ美術館、私の着いた6日の昼は「春」の前にも「ヴィーナスの誕生」の前にも、ガイド付きグループ、修学旅行(?)の若者をいなせばこの写真の通り。来てよかった! (アドバイス:団体はランチを普通の時間に取るのでそれが狙いどきのような気がするが、私の言ったのは予約もなしですぐ入れた特別な状況下だから参考になるかどうか)
ウフィチィのこと夕食を食べつつ以下のメモを携帯にしたが、これは掘り下げず自らの備忘録としてコピー(だから読まなくて良いです):
2022年4月14日木曜日
なんか楽しかったバーニ・サン・フィリポ (Bagni San Filippo)
さて昨日の続き。温泉が目標だったこの旅、お湯も出ていないバーニョ・ヴィニョーニにあっさり見切りをつけ、バーニ・サン・フィリポ (Bagni San Filippo) に行くしかなくなったが、、、
去年ベリル島で電動自転車を貸してもらって、こんな便利なものはないと思っていたのだが、島と大陸は大違い、なだらかなトスカーナといえどバスに乗っていても起伏の差がずっと大きくて私の今の体力では叶わんことは明らか。
結局バーニョ・ヴィニョーニではあの石囲いのプールを見ながらカフェしただけで、大体の目安で山道を辿って宿泊先のサン・クイリコ・ドルシア (San Quirico d'Orcia) へ徒歩約1時間。(もし行くならサン・クイリコで泊まる方がいい:旧市街の他に新市街もあって宿泊、食事のバラエティがある。バス路線も種類多)
ゆっくりランチして3時過ぎのバスに乗ってバーニ・サン・フィリポに。バス停でぼけっとしていたら急に全く路線バスらしからぬシルバーのミニバスが止まってびっくり。乗客の少ない路線はこんなもので十分と、イタリアしっかりしています。(フランスの地方は、鉄道は駅を減らし、バスは通学用に朝晩に1本づつとか、「コヴィッドで乗客減ったからローカル線の頻度を減らす」なんていう仏国鉄の方針がまかり通るぐらいで、公共機関なくした過疎化路線を邁進していおり、車がないとどうしようもない。これが「黄色いベスト」運動(18年の関連投稿)の原因にもなった。だからフランスでは田舎のバスの旅なんてほぼ不可能。その点イタリア、スペインは私の経験では、乗客が私のような迷える旅行者、老婦人、移民系労働者、総数多くて4、5人しか乗ってなくても一応日に数本はある)
2段目の風呂 |
最上段の小さな風呂の奥:唐三彩のような岩の上からお湯がポツポツと滴れてきていた |
第3、4、5段の棚風呂 |
お湯が流れて風呂から風呂へとの岩の上が歩きにくいので、地元の人は岩場のビーチ用のスポーツサンダルを履いていた。さすがー。でも履いたままお湯に入ってしまうのがおかしい(まあ水着も来てるけど)。水底にも泥が溜まっているしな。
これも日本の温泉では見られない風景ですなー(笑) |
サン・クイリコでもらったパンフにはユネスコマークがあり、風光明美、名産ワイン、チーズのあるこの辺はオルシア渓谷 Val D'Orcia としてここもまた世界遺産になっていた。旅行客の少ないコヴィッド余波期に来ておいてよかった〜
ところで今回、バス(乗る方のバスです)がコヴィッドのために運転手との接触不可:単純に1段目のシートあたりで紐が張ってある(笑)。つまり乗車下車後部から。だからいつものように運転手から乗車券が買えない。どうもQRコード写してバス用アプリ入れて、、、という仕組みらしいが、風の向くままの私、そんな面倒なことやってられるか! 運転手に「チケット持ってない」と宣言しても降ろされることはなかったので、結局すべてキセル乗車。バス停で待っているのはいつも私1人だったから、妙なところから乗って妙なところで降りるユネスコ遺産無賃乗車長髪アジア人としてバスドライバーのカフェあたりでは話題になっているかも😄 公共機関維持大賛成派だから払いたいのだけどな〜
2022年4月13日水曜日
バーニョ・ヴィニョーニ、あーあ世界は救えなかった。
Résumé : La première destination de mon voyage était Bagno Vignoni qui a été un lieu de tournage de "Nostalgia", un film de Tarkovsky (voir la scène vers 33-39min de film youtube ci-dessous) . Les choses ne se sont pas passé comme prévu...
ロシアというよりソ連の反体制映画監督であったアンドレイ・タルコフスキー 、彼の「ノスタルジア」(83年)という作品をご存知だろうか(ウィキ:あらすじ)。その中で映画の主人公のロシア人作家が乗る車が曲がりくねった山道を登って辿り着く*、真ん中に石で囲まれた四角い温泉プールがありそこで村人がお湯に浸かっていたその村。ここに昔から行ってみたかったのだが、90年頃トスカーナに行ったとき観光案内所で尋ねてもよくわからなかった:当時映画ファンにはタルコフスキーは有名でも、観光案内所のお姉さんは知らなくて、、、。
トスカーナ地方には温泉が多くて、名前から♨️を適当に探して偶然マストロヤンニが主演、ニキータ・ミハルコフ監督(ウィキ)のこれまたソ連イタリア合作映画「黒い瞳」(98)に登場する温泉に出くわしたことは覚えているが、どこだったかな? この映画はチェーホフものでタルコフスキーと全く傾向が異なるが良い映画だった。それはともかく「黒い瞳」の撮影の温泉地はヨーロッパではよくある、贅沢で近代的な療養施設、それに対しタルコフスキーの方は片田舎の山村の温泉で全く異質だった。だから知られざる場所かと思い込んでしまっていたのだが、今回飛行機会社からの来たバーゲンに釣られて急に思い出し、、、
90年代とは違ってネットを見ればなんでもわかる今、そこは全然知られぬ秘湯どころかバーニョ・ヴィニョーニ Bagno Vignoni という有名な歴史ある「温泉地」だった。新たに購入したトスカーナとオンブリアの観光ガイドによれば「ローマ帝国以前のエトルリア時代からある温泉で、(フィレンチェのルネッサンス最盛期を築いた)ロレンツォ(・デ・メディチ)豪華王も愛した硫黄泉。町の真ん中にある広場ならぬ四角い浴場はタルコフスキーの映画で有名になった」。しかし今のフランス人は宮崎アニメは見ていてもタルコフスキー知っている人いるのかなとかなり疑問(ガイドブックの著者の年齢を疑わせる)。その割に行き方が書いてなくて、、、そこで私の挑戦が始まった。というのも私は車を運転しないので!
Googleの「行き方」ツールも便利だが、簡単に「ない」なんてことや、なかなか厄介そうな乗り換えのものがよく出てくる(それが正しいこともあるが)。そこで色々試してわかった「うまく探すこつ」は、近くの比較的大きい街を見つけて点々と繋げてみる。かつイタリアでは田舎のバスは日曜日はほぼ運行しないという条件もあって、可能性を探るのに写真のようにメモを書いて作戦を練ったのだった。いろいろ検索してみると日本語のブログもあって、その中に「タルコフスキーとバーニョ・ヴィニョーニ温泉」という私同様タルコフスキーに熱い思いのあるイタリア在住の方の投稿があり(映画からの写真もあり)、実はそれを読んで現状を知り少々期待が冷め、、、でも別の観光ブログでは崖のほうに温泉が流れワイルドな池同様の温泉もあるみたいで「おお、地獄谷みたいなのかな」とまた期待を取り戻し、、、かつ英仏語情報だとこのBagno Vignoniから車で20分ぐらいに Bagni San Filippo というまさに日本の露天風呂風のところがあって、一応バスも通っているし、Bagno Vignoniでレンタルの電動自転車もあるようなのでグーンと期待が再度高まり、温泉を今回の旅行の目的地として出発!
そして着いたバーニョ・ヴィニョーニだったのだが(4月8日)、芝刈り機が轟音を上げ、四角い温泉プールからは湯気も上がってなく、足湯をしている写真のあった水路にも流れる湯もない。村の下の滝も同様。湯が枯れ上がった??? どうも変だと作業服着て何やらやっている人に向かって叫んだところ、私の解釈(推測?)では「週末(あるいはシーズン?)前に湯元を切っていろいろ点検工事中」だったようで、あらま〜。貴方ならどうする?:今日はここまで=上のリンクのブログもあるし、下には「ノスタルジア」もあるし(笑)
なんか湧き出てるけど? ここを蝋燭ともして渡れば世界が救えたのだが |
これがお湯が流れて滝になっていたはずの崖。この池でも湯あみできたはずだった |
湯量は豊富でかつては水車もあったとか |
「ノスタルジア」33分〜39分ぐらいの温泉シーンをご覧あれ。私の思い入れがわかっていただけるかも。(* 注:つまみ食い的に見ると私の記憶はかなりあてにならないような気もしてきたが)
航空券を買ったときはまだロシア軍のウクライナへの侵略は始まっていなかった。つくづく戦争ほど愚かな行為はないと思わされる。ましてや地球規模の経済があり環境問題がある今、尚更。当然それ以上に翻弄される市民の悲劇、報道を見て涙してしまう。ちょうど今フランスでは大統領選挙、日曜が第一回の投票だったが、論点が原油上昇による「購買力」の低下などになってくると「それどころじゃないんじゃない?」と私は正気ではいられなくなってくる。そうでなくても選挙前の狂騒からの逃避が旅行を計画した一つの理由だったが、こんなことになろうとは。全くの無力だと蝋燭ともしてプールを横断して世界を救えたらと夢想もしたくなる(悲)
2022年4月3日日曜日
ガッテンできないガッレン=カッレラ評
細部:ラフなタッチで背景の方が盛り上がっている。白の多い雪景色の絵の写真の色バランスは難しいみたい |
参考 :ジャックマール・アンドレ美術館サイト ガッレン=カッレラ展は7月25日まで
私のアドバイス:もし行くことがあったら入って二部屋目を左に入り出口の前の2つのホールを見れば十分です。美術館自体も見る価値あるし、イタリアルネッサンスの名作などがありますから余力を残して😄