のんびりした異国情緒の陰に、、、 |
そもそもはこの遊園地は帝国動物園なる会社がパリ市からブーローニュの土地の利権を得て、ナポレオン3世によって1860年にオープンされた。基本は「動植物園」だが、植民地主義のエキゾティズムは19世紀後半から20世紀初めにかけて「民族園」なる名でアフリカ、南米などの種族を連れて来ては、所謂「未開人」として動物の様に「展示」するに至った。
そして時代は下り、、、フランク・ゲーリーの建築の完成までの成り行きが面白く書かれたルモンド紙の記事sourceによると、「この動物園の『野獣の叫び声がうるさくて寝られやしない』と思っていた大資本家のブッサク氏(注:ブーローニュの森界隈はパリきっての超高級住宅地域です)が遊園地の利権がフリーになっていることを知り買い取り、吠える野獣どもを他の動物園に追いやった!」 これが1950年代のこと。
ブサック・グループはディオールのオートクチュールや大手繊維企業を牛耳っていたが、業界の激変に対応できず会社は衰退、1978年には某金融機関に買収された。そしてその金融機関を1984年にアルノー氏がを傘下に入れたときに、それが管理していたブサック・グループとともに遊園地の利権が付いて来たわけ。これに関しては某左翼ソースによると、当時の首相のファビウス(今の外務大臣)が、人員解雇をしないという条件で1フランで譲る裁定をした。これをはじめ、社会党の様々な政治家がヴィトン・グループと関わりがある。私でも知る人ではクリスチャン・ジェラール氏、「宵越しの金は持たない」的な一晩限りの現代アートの大イベント「Nuit Blanche(パリの白夜)」を企画した彼は、社会党のドラノエ前市長の文化顧問であると同時にヴィトン・グループの戦略部長であった。それから前記ルモンドの記事によるとルイ・ヴィトンのメセナ活動推進員は元文化大臣ジャック・ラングの顧問だったそうで、、、うーむ。
日本人の私にはなかなか理解し難いことなのだが、フランスには「右派の経営者」(これは当たり前)と「左派の経営者」というのがいて、つまりアルノー氏は左派!「心は左、財布は右に」というミッテラン時代の標語(?)は政権を担当する仏社会党のジレンマを言い当てていたが、11/2に書いたようにアルノー氏は税金逃れでベルギー国籍を取ろうとし、それを批難するのに品が欠けるとは思うけど「出てけクソッタレ」と一面タイトルで報じたリベラシオン紙(写真)への制裁に関係会社は広告を打ち切り、同紙の試算によれば70万ユーロの損害とか!source ここまで金の力を見せつけられると「身も心も財布!」ですよね〜。だから「どこがパッション?」と問いたくなる。前記左翼ソースでは「献金の60%の額が税金控除の対象となる」という企業メセナ制度は大企業にとって大もうけで、国の歳入を合わせるのが大変になるとのこと。まあこの辺はそんな感じもするが全く専門外ですのでここまで。私は手短に、半年にしてあの汚れの建物の維持費を心配している。というのも今の遊園地営業権は55年後には切れ、その時にアルノー氏は建物をパリ市に寄贈するという大プレゼントをして下さるから。
遊園地と財団のことなど簡単だと思っていたのが、ちょっと調べてみるとこんな具合で次から次へ読み物があって、まとめるのにいつもによりずーっと時間がかかった(専門外のことばかりなので用語など正確さに欠くかもしれません)。最近はブログに美術制作より時間をかけているかも。かつ本当に一銭にもならないないでしょ、ひょっとしたらこれこそ私の本当のパッションなのかも(まあ本業も同じようなものかもしれないが、、、笑)。 昔は作文なんて大嫌いだったので不思議。
ところで私は引用=つまみ食しているだけだが、様々な圧力にもめげず調査をし吠え続けるプロの「野獣」たちが金持ちに追放されると困る。だから皆さん、数ユーロでも寄付や記事購入などで超微力ながらもそういうメディアを支援をするようにしましょうね。
そして、しかし以上にも関らず、すべてを忘れ、(特別展の)マチスの前にたたずむ甲斐はあると思います。
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過去の参考投稿
ヴィトン財団 :
二つのダンス、二つの叫び(5/20)
フランスの新名所 ルイ・ヴィトン財団(2014/11/2)
ルイ・ヴィトン財団 追加写真 (2014/11/2)
Nuit Blanche de Paris :
「光り物」は化ける(2013/10)
パリの白夜(2012/10)
白夜のラグビー(2007/10)
白夜(2006/10)