2014年12月28日日曜日

働くべきか、働かざるべきか? 悩ましき日曜日

 「日曜日は休み」というのは今更言うこともないが、若き経済大臣のマクロン(Macron、37歳)は現行の年間5日から、12日まで日曜の店舗営業を可能にする緩和法案を提案。マクロン大臣によれば、これが消費すなわち経済そして雇用拡大に繋がる。
日本の日曜日のデパートの混雑ぶりを知っている私は「まあ当然そうだろうなー」と簡単に納得していたのだが、疑問に思ったきっかけは、この比較的簡単な施策がどれだけの雇用創出になるかの見込みが言う人によってあまりに異なること。確か政府予想では約5万人なのが、経営者団体によれば何十万人、しかし中小企業組合によれば大店舗に食われることで小さな店は潰れて逆に雇用は減少。いつもどおり「それぞれの利害を代表」と結論してしまえばそれまでだが、ここで紹介したいのが、得をすると思われる大手スーパーの社長さんが意外な発言。彼によれば「スーパの売上げのメインは食品と日常製品、人間日曜日に店が開くとなったからといって食事の量が増える訳ではない。だから売上げは変わらない、つまり彼は日曜日開店に興味なし!」なのである。ある経済学者も「生産が拡大しないのに消費だけが拡大する訳がない」と言っていたが、同じことなんだろうが、このスーパー社長の超具体的な議論は説得力がある。

ということだとこの施策は結局外国人旅行客の買い物だけが標的になってしまう。私はそれならばもっとサービスをよくするだけで売上げが伸びて、日曜日開店するほどのこともないと思う。(「フランスの『格別のサービス・おもてなしの悪さ』は逆に見ればその負をプラスに換えうる大資産(ポテンシャル)なのだ」というのが私の持論。今の従業員教育のままだと、日曜の混雑時にパートの店員がパニクってかんしゃくを起こすからパリの不人気はもっと高まるかも)

この数値論争のほかに、というか数値がいかがわしいので余計に火がつくのが、もっとわかりやすい( =誰でも意見が持てる)「日曜日に家族団欒とか映画とか美術館に行くかわりに、スーパーや百貨店に買い物に行くアメリカや日本のような「消費社会」にフランスをしていいのか?」というのイデオロギーあるいは社会ビジョンの大論争。人気のないオランド大統領、いまや党内でも不満が噴出し、社会党左派からこういう突き上げをくらっているのです。

しかしながら交通機関、病院などは言うに及ばず飲食業、商店など、現在でも日曜出勤をしてる人は少数どころではなく、就業人口の4人に一人に当たると確かニュースで言っていた。かつ世論調査では多数が日曜営業賛成。「消費社会」云々というより、共稼ぎですごく慌ただしい日々を過ごしている人を見ると、日曜日に店が開いていた方がテンションが下がって良いのではと思ってしまうが、、、。実際昔と違って今では日曜日の朝開いているスーパーも珍しくなくなったし、スーパーチェーンに吸収された元食料品店の小スーパーは勿論午前中は開いているし(この小売店のスーパーチェーン化も前述の大スーパーの「興味なし」発言の裏にあることも確かでしょう)、本当にそんなに大問題なのか不思議。

フランスの日曜日と言ったらこのブレッソンの写真でしたが、、、
日曜日にお店がやっている方が一般的には便利、そこで考えねばならないのはその便利さの社会的功罪で、当てにならない雇用者数ではないでしょう。でもマクロン大臣が雇用を一番に掲げるのは現政府は「雇用戦争に勝つ」ことを目標としてしまっていて、、、(昨年はオランド君、どうしてそんな自信があったのか「年末までに失業率のカーブが逆転する」とバカな約束して、勿論できず、いまや連戦連敗のワーテルローと言われている)。私はいい加減歴代政府が失敗を続けた闘いをやめ、「高失業率でも幸福な社会」という開き直った逆転ビジョンを建てた方がいいと思うのですが。

というわけで、みなさん、ボン・ディマンシュ(良い日曜日を)





2014年12月20日土曜日

お人好しの私

あれれ、また1週間経ってしまったが、最近は今度の2月の名古屋での個展のためのビデオ・ドキュメンタリーの撮影(インタビュー)と編集に忙しい。私はビデオの編集は一年に一度するかしないか(前回は13年10月のアミアンでの「キス集め」の後だった)、だからお仕着せの素人用の簡単なビデオ編集ソフトといえど、使い方をすっかり忘れてしまう。逆に新たにやりだすと覚えているうちに一挙に全部終えたくなってくる。というわけで終日連夜マックとにらめっこしてかなり疲労。

今編集しているビデオはまだ見せれませんけど、ご存じない方は右の前回の Lギャラリーの個展用のドキュメント用ビデオでもご覧あれ。

それから10月以来一枚もなくなっていた大きな紙のストックが突然大量にできた。先ずは当てにならない画材の老舗のスヌリエ大昔の参考記事、2年前と全く同じミスをして配達されたクリーム色の紙10月1日記をやっと白い紙に交換にやって来た。そこで思ったのは画材スーパー店。このスーパーから11月に「お誕生日割引」というメールが届いていたからだ。実は元からスーパーの方が値段が断然安い。スヌリエに何ヶ月も待たされている間に「高いからサービスしなさい」と文句をつけたら「うちは小規模でやってますのでスーパーにはかないませんけど、、、」と少し安い価格を提示して来た。まだ十分高かったけれど、私は「市場経済」に支配されるのは絶対反対だから、努力を評価して承諾した(そう言う意味では私は「まことにお人好し」なのである)

さてスーパーのサイト、11月にを見た時は私の紙の在庫は「ゼロ」だったが、スヌリエに入ってスーパーに入らないはずがない。そこで見てみてびっくり。在庫があるどころか70%引セール中!!! 「お誕生日割切」とダブルには使えないが、「お誕生日」のお陰で数千円から配達してくれるし、何かプレゼントもある。だから即注文(誕生日有効期間は1か月でギリクリア)。これは倉庫にもうあるので3日で届いたが、配達のお兄さん、扉を開けるなり「あんたの住所には電話も書いてないじゃないか、30分も探した」と文句たらたら。注文のときに固定電話も携帯も登録済み。発送者と配達会社の問題で私が文句を言われる筋合いでは全くない。当然反論してしまうので、向こうもコチラも気分はよくならないよね〜。やっぱりスヌリエのほうがなごやかで良いかと思ったが、一枚あたりの購入価格を比べてみると、、、流石70%引だけあってスーパーの価格はスヌリエの半額以下! 私は「まことにまことに」お人好しなのです。

そうそう、2月の個展の日程は2/14(土)〜3/1(日)L-Galleryにてですので宜しく


2014年12月12日金曜日

補遺:ハイチ近代絵画史

Hector Hyppoliteの作品例
前回書いたハイチの展覧会、副題が「2世紀のクリエーション」というわりには歴史順でなく、今日流行の「テーマ(コンセプト?)別」展示で余計わかり難い。前回のリンクの写真にもあるジャコメッティvsエジプトのミイラなら地理的にも時間的にも遠いので混乱はしないけど、ハイチの2世紀の美術では、、、残念ながらハイチのイメージは普通、「地震」「貧困」「独裁政治」ですからね〜。

というわけで前回の補足として、展覧会の小パンフレット*にもない簡単なハイチ絵画史を:

ハイチはかつてフランス植民地、だから金持ちプランターは仏絵画を買ったり、召使い(奴隷)をフランスへ絵画を勉強させに遣ったりしていた。1804年に独立(世界初の黒人共和国)、16年には首都ポール・オ・プランスにフランス絵画を教授する美術学校が創立。展覧会でも画題が、民俗的日常生活、呪術的なものばかりでなく古典的肖像画にまで及ぶのはこういう背景がある。

どんと飛んで第二次大戦後の44年、アメリカ人のDewitt Petersが絵画学校を開いたのだが、街で目にするナイーブ絵画に興味を持ち、そうした教育のない画家たちも学校に受け入れ、画材を与えて彼らの才能を開花させた。これがハイチ素朴派の始まり。

この中にはた Hector Hyppolite もいたが、彼の絵は43、45年に旅行に来たシュールレアリスとの領袖アンドレ・ブルトンの眼に止まり、彼をフランスに紹介した。

Robert Saint-Briceの作品例
こうしてますます注目されるようになったハイチ素朴派、50年代にはニューヨーク現代美術館が作品購入、これが火をつけ60年代には買い漁られることになった。

この商業化(商売絵)への反動として、ヴードゥー教的ルーツに戻ろうとする運動がポール・オ・プランスの近郊のPétionvilleにコミニテイーを作ったサン・ソレイユ(Saint Soleil)グループ。75年にアンドレ・マルローがここを訪れ、Robert Saint-Briceなどの作品を絶賛し、著書 L'Intemporel に記述した。

実はハイチとアートでグーグルすると本当にコマーシャルとしか言えない絵のサイト出てくる。 こういう誤解を避けることもあり、前回の記事を受け入り知識で補足しました

注:写真の2点の作品はインターネットより。展覧会の作品ではありません。(へへっ、ちょっと僕の絵に似てますね〜)

*パンフレットにはブルトンの名もマルローの名もありません。これって意図的なんだろうな〜



グランパレのハイチ

手前がGeorges Liautaudの彫刻
シャンゼリゼに行ったのはグランパレでのハイチの歌手の無料コンサート。

グランパレは北斎の素晴らしい「超」大回顧展と、これも何故か大人気のニキ・ド・サンファールの回顧展(行っていません)と思っていたらハイチのアートの展覧会をやっていると言うではないか。そこでサイトをみたらコンサート情報がおそらく直前だったので一面に出て来た。James Germain、全く知らないミュージシャン(スタンダードなジャズ・ポップ系)でしたが「これが無料で聴ける?!」と驚くほどの歌唱力のある実力派だった。かつ南国の人は陽気で、、、!!!

メインの展覧会の方はどうかというと、ヴードゥー教的なシャーマニックなナイーブ系のアートが並ぶはずと期待していたが、何か面白くなかった。小さいスペースに植民地時代の肖像画や80年代のニューヨーク絵画シーンの寵児だったバスキアウィキ(父がハイチ系移民)まで色々混ぜ過ぎなのかなとも思ったが、その二つは他よりも私の眼を引き、逆に70年代にアンドレ・マルローウィキが絶賛したサン・ソレイユ(Saint Soleil)グループなどのナイーブ系のほうが久しぶりに見てインパクトが欠けて感じた。

いい線行ってると思ったら作者不明
よく書いているように最近アウトサーダー・アートが大流行り。しょっちゅう見ているので素人絵画的な作品に飽きが来たところもあるが、考えてみるとサン・ソレイユ・グループ、そのずっと以前、40年代にアンドレ・ブルトンに評価されシュールレアリストに含められたHector Hyppolite1894-1948、そしてこれも良く引き合いに出す「大地の魔術師」展参考投稿でも紹介された金属彫刻のGeorges Liautaud(1889-1991)らの造形はあくまでも素朴で、近年の強迫症、偏執狂的なアウトサーダーとは趣を異にする。つまり現代アート界が望むアウトサーダーは後者なので、私もその傾向に少しは染まっているようだ。と反省しつつも、私の総合評価は、そうですねー、ステージから「是非見てくれ」と言っていたJamesさんには悪いけど「わざわざ見に行くほどでもない」でしょう。

2月15日まで

2014年12月11日木曜日

おー、シャンゼリゼ

さっき社会保健局がしてくれる健康診断に行って来た。召喚状には「その自営業者は権利がありません」と書かれているのだが、向こうから送って来たものだし、健康は何より大事ですから、そんな条項を無視して出頭したらやはり何も言われなかった。まじめに考える方が損をする。何故か血圧が高くて4度も測ったがかわらず、「緊張してませんか」「よく寝られましたか」なんて訊かれたがゼンゼン。しかし「高血圧」なんて出たのは生まれて始めてで、、、ちょっと気になるなぁ。ブログ書かなくちゃなんて思っていたからか(笑)

ところで先週土曜、シャンゼリゼ・クレマンソーで地下鉄を降りたら、大きな駅でもないのに出口に向かう地下道で大渋滞。ただ乗り取締(切符のチエック)でもやっているのかと思ったら、さにあらず。出口を過ぎても人の波。原因はクリスマス市だった。

その為に行ったのではなかったがその人気に興味を引かれて少し見学。お店より街頭食堂の方がずっと楽しい。大規模でアルザスかドイツに行ったみたい。素朴に肉とライトが釣り下がっているのが気に入って珍しく記念撮影(「不健康食」そうで食べなかったけど)。

それに袋が捨てられたゴミだらけになったサンタクロースがいた。「クリスマスの義務的に贈るプレゼントなどゴミみたいなものだ」という思う私の意見を代弁するかのようで、これまた一緒に写真を撮ってもらった。

変な写真はこれまで、最後はお馴染み、シャンゼリゼ大通りのイリュミネーションです




2014年12月2日火曜日

定番メニュー

パリに戻った金曜日の朝は空港のトイレでわざわざ「股引」を履いた割りには寒くなく、かつ昼間は青空も見えていたのが、日曜日から急に寒くなり、今日は最高気温5度付近、かつ霧雨混じりの曇天、朝は遅いし夕は早いし、「辛いヨーロッパの冬」が始まりました。

加えてニュースは帰仏以来サルコジばっかり(私が真剣に危惧する通り=例えば13/7/5の投稿をご参考に 万難にめげず上昇中、保守党UMPの新党首に選ばれた) 。

うんざりしてきた気分転換は久しぶりのブラッセリーのランチ。定番中の定番のステーキとポテトの組合わせ。 グラスで頼んだテーブルワインはおそらくこれも超定番のコート・ド・ローヌだったと思うけど、帰仏はじめて違和感なく飲めた。結局私の口はテーブルワイン向きなのかな?安上がりでいいけど、、、。

注:私はそんなものの写真は撮りません。ウェブで似たものが見つかるから。実際に食べたのはポテトがもっとわんさかとあった :)

2014年12月1日月曜日

どうしちゃったのフランスワイン?

パリに戻った金曜日、スーパーに買い物に行ったらボージョレ・ヌーボーが並んでいた。無視するつもりだったが「酸化防止剤なし」*と大きくラベルの張ってあったのがあったので「一応話のタネだし」と買ったのだが、これがまずかった。高い料理用ワインの買い物になってしまった。
翌日はマトモなワインを飲まねばと肉屋で羊肉を買い、その隣のワインチェーン店ニコラ(最近神戸に住んでいたことのあるカナダ人女性が勤務していて、日本式サービス精神を学んだのか親切なので昔よりよく行くようになった)へ。それが今や「クリスマス商戦への品揃え」で、高いワインばかり並んでいる。その中でコメントが付いていた、まあ手頃な(でも私の日常には高いが、帰仏祝いと)ボルドーを買って飲んだのだが、またまたまずくて飲む気がしない(値段を考えるともっと舌がイタむ)。 
日曜の昨日は朝市で魚を買って(急に寒くなり、手がかじかむ魚屋のおばさんはいたって不機嫌だった。10月も暖かかったが、私のいなかった11月も記録破りの暖かさだったらしい)、赤でも軽いロワールのワインをと馴染みのワインカーブ店に行ったらここも品揃えをグレードアップしていて、いつも飲んでいる銘柄の一ランク上なのがあった。口直しだからと高い方を買ったのだが、、、
こちらは変わらぬ味で、かつ結構アートしている朝市の野菜

基本的にはどれも渋く感じる。 日本ではビールか日本酒しか飲まないので、味覚が変わってしまったのか??? 最近の日本酒はあっさり、かつまろやかでとても飲みやすいですよね。かつ1ユーロ150円近くのレートだと私が浪費したボトルの値段なら断然美味しい純米吟醸酒が手に入るではないか! 私の舌が変なのか、高いパーティーシーズン用ワインが口に合わないのか?
 
この円安時代のクリスマス、おそらく日本酒メーカにとっては新たな市場開拓の願ってもないチャンスだと思いますよ

*注:殆どのボトルは含有。フランスではラベルにこの有無の記載が義務づけられていて、ラベルの縁に虫眼鏡を使わないと読めないような小さな字で contient des sulfites と書かれています