2015年8月3日月曜日

楽しいフラメンコ

昨晩ピカソ美術館の庭での現代フラメンコ、イスラエル・ガルバン Israel Galván のソロダンスを見に行った。「現代フラメンコ」ってのはうさんくさいなーと思っていたが、日本の「目利き」のプロからも、フランスの知り合いからも推薦され、、、

フラメンコだからタップの音が響くよう板が敷かれて階段座席と勝手に思い込んでいたら、美術館の砂利庭が舞台。観客はその周りにマットを敷いて座るようになっている。「絶対かぶりつきだよ」と言われていたが、右翼の席はマット2列、その後に日本の風呂の椅子のようなものがあったのでそれに座った。私の様に尻に贅肉がないとすぐ痛くなってくる類いのもので、着席自由とのことだったので開演40分前に着いたから余計、案の定舞台が始まるまでに居心地が悪くなり、「地面かこんな椅子にしては入場料高いな」と思ったが、、、(今サイトを見直したらちゃんとそう書いてあった)

と少々不服気味で始まった舞台:当然かれ一人、音楽なし。音響は、ガルバンが指を鳴らす音、手拍子、胸や脚を叩く音、それに口ずさむカウント(鼻歌?)それに靴が蹴る土の音。舞台前部に黒いコードが張っていると思ったら、マイクで地面の音を拾っている。左側に靴拭きの様な人工芝の緑の小さなマットが一枚、その上で踊ると音が異なる。
砂利の上で白煙を上げ、対角線に滑べり走るかと思えば、観客の前にどっしり座ったり。でも常に身体はリズムを刻んでいる。周りの街の音や観客にも反応して笑いを誘ったり、「すべてアドリブ?」と思ったら、館に沿って金属板が置かれていて、そこで踊るとガシャガシャ音、加えて館の階段下のテラス(両方とも私の座った右側だった!)では石を伝わる音がボーンと低い音が増幅されるようになっていて、45分の踊りの後半の盛り上がりを支えていた。

フラメンコというといつもは失恋・離郷のコラソン(心)の悲痛な叫びだが、ガルバンのダンスは、調子に乗って椅子や机を跳ね回って踊りまくる初期のフレッド・アステアのタップダンスように、見ていてとても楽しい。「踊ることが楽しくてしょうがない」 というのが観客に伝わってくると言う感じ(実際はどうなのかわからないが、、、観客にも私同様のニコニコ顔がいるかと思うと、ものすごく真剣な顔で見つめている人もいたので)。

パリ祭のケースマイケルは無機質な繰り返しのダンスと思っていたのが、どろリと情念が出てきて驚かされたが、昨晩は逆にフラメンコから緊張感を保ちつつも「どろり」を抜いてひたすらリズムに身を捧げる、まさに存在しないはずの「楽しく陽気なフラメンコ」だった。音楽を使わないことにもその意図が如実に表れていると思う。

それから伝統的なフラメンコだと男性役女性役ははっきり別れるが、彼のダンスは両性具備と言おうか、かなり女性的仕草が多かった。男性役はソロの所為か砂埃の所為か、闘牛士(あるいは広くファイター)を感じさせた。

グーグルしたところこの公演に関する2分のインタビュービデオ付きサイトを発見。
http://culturebox.francetvinfo.fr/scenes/danse/au-musee-picasso-lextraordinaire-flamenco-solo-disrael-galvan-225007

ビデオでは上に書いた舞台の仕掛けもアップで見られます。金属板と思ったのは雨水溝の蓋、つまり舞台はその場に合わせて創り出している。インタビューでは「踊りながら自分の身体で自分だけの音楽を作る。こうして自分はあらゆる種類の音楽を空想でき本当に自由に踊ることができる」と言っております。しかしダンスはTV取材用のデモと本当の舞台はやっぱり違いますね。本番は靴も黒かったし(笑)。

日本ウィキがなかったので超簡単な略歴:
1973年セヴィリア生まれ。両親とも有名なフラメンコダンサーで、母方からジプシーの血をひく。98年に自分のカンパニーを設立。自由なフラメンコ解釈故に本国より海外で評価されることが多かったが、2014年にはスペインの劇場芸術で最も重要なPremio Max を受賞

ナチスによるジプシー虐殺という重いテーマも扱っており、「楽しい」と思ったのはこの舞台に限るのか、私の感性がおかしいのか? 何れにせよ感化されやすい私は昨日から、踊れなくても手足がタンタタタタタと始終リズムを刻んでいます。

しかしあの舞台、今年のパリは天気良いけど、雨だとどうしたのだろう? 企画者も腹が据わっている???




2 件のコメント:

  1. いいもの観ましたねぇ。日本語で検索したサイトも一度見るとリズムが頭の中でリフレインしてしまう魅力のあるもの。
    http://video.baile.jp/tag/israel-galvan
    タップダンスでなくフラメンコというところに流浪の民の悲哀が溢れているという気にさせるのかも。とっていうよりガルバンの声って中田英寿に似てません?サッカーもきっと上手でシュート決めたらダンスすること間違いなし!

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  2. 「悲哀にあふれないところがよかった」というのが私の趣旨なのですが、、、(>_<)  リンクしてもらったビデオも普通のフラメンコと比べるとずっとメカニック。だから当初スペインでは認められなかったのだと思います。中田選手は、、、声知りません。風貌は団十郎系かなーと思いましたが。

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