2018年6月6日水曜日

セニョール・セラーノ

今日は前々回予告した、パリ公演はあっさり二回で終わってしまったバルセロナの劇団グループ、セニョール・セラーノ Agrupación Señor Serrano のことを書く。

パリ市の劇場からヨーロッパの若手の新しい動きを紹介する週間のプログラムが届き「15ユーロなら何か見てもいいけど、どんなものか下調べを」と幾つかのカンパニーのサイトを見だしたのだが、、、

彼らのグループ紹介がなかなか傑作だった。最初は「2006年にアレックス・セラーノによりバルセロナで創設され、、、」とまっくありきたりで始まったが、下の方にスクロールすると黄色の帯に「きっと貰うに相応しくない他の賞」と黒の太字タイトルで堂々と大きく書かれて、テクストには「2015年の貰うに相応しくないヴェニスの銀獅子賞の他にカンパニーは間違って幾つかの賞をもらっている」「色々なフェスティバルが連続して間違え続けで我々の仕事に賞を与え」などと、冗談か嫌味かわからない不思議な受賞歴を紹介している。「美術史上最強の少女」ではないが(参考投稿)、私これに釣られた〜♫

でも舞台の内容は冗談半分でない。私の見た最新作"Birdie"のテーマは移民問題! スペインは対岸北アフリカのモロッコ領に保有するメリリャ Melilla という飛地領を持っている(ウィキ)。そこには押し寄せる移民を阻止する為に立てられた国境の高さ6mの金網フェンスが存在し、そこによじ上りそこに座っているルポ写真 とヒッチコックの「鳥」のイメージをダブらせることが作品の土台となっている。今彼らのページを開くとそのクリップビデオ(予告編)が自動的に開始されるので(画面をクリックするとメニューに飛んでしまうのでそのままにして)それを見てもらうと舞台の様子がわかるだろうが:

舞台には左側にカメラを備えたデスクがあって雑誌 、写真、オブジェなどを2人の男性が操作しつつ撮影、それがバックのスクリーンに投影されて行く。それは時にはコンフェランスの資料説明のようであったり、 時にはアート的に、例えばゴルフボールに懐中電灯で照らして満ち欠けする天体の様に見せるとか。舞台の中心には動物、赤ちゃん、あるいはマスコットといった様々な模型の人形の行列するミニュチュアゴルフ場というインスタレーションがある。それもカメラで大写しされて行くが、模型の鳥をカメラの前にかざしつつその上を移動しながらあたかも自然科学映画の鳥の飛翔の如く見せたりと、潔く舞台で手のうちを全部暴露しながら披露するこのローテクが私には何とも言えない。

舞台の左側にもう一名、彼は舞台上構成されて行くイメージと、既に録画されているAVとを切り替えたりミックスしたりするDJがいる。

実際に舞台で写る画像は下のクリップビデオ(予告編)の様にバタバタしてなく、もっとテーマごとにじっくり物語られて行き、比べ物にならないほど素晴らしい。私がこの舞台で一番買ったのは繰り返しになるが、通常のビデオの利用とは違って、実際に目の前で行為される「手のうち暴露」のパーフォーマンス性の危機感あるいは緊張感。そして最後は舞台の人形たちは掃き清められてしまって、、、これはそれほど必要性があったのか疑問だが、毎晩この為に人形を並べ直すとはなかなかの勤勉さ:私ならそこまでしない(笑) 構成も緻密だし、なんかバルセロナの人とは思えない!(私の知っているバルセロナは90年代ですが、、、)
辛辣なところもある画像と歌謡曲のようなテーマミュージックのギャップもよかったなー

これはyoutubeにある予告編
 

ミニチュア人形の操作などが見えないと面白くないから小さなスペース用。煙霧を立ち込ませその中に画像投影し、自分が鳥になったような気分にさせられるところもあった。
もし何処かで見る機会があったらかぶりつき席でご覧下さい

Birdieという題はゴルフのバーディーと鳥のバードを掛けている。実際にゴルフ場の奥に移民阻止の金網フェンスがあるのだ。

Agrupación Señor Serrano

これが2014年に撮影された現実とは思えない実際のルポ写真



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