dégâts des eaux というのを直訳すると「水害」ということになるだろうが、台風や津波のないフランス、もちろん雷雨で川が氾濫して家が浸水ということもあるが、ふつうは洗濯機が壊れてとか配管のジョイントが痛んでとかで絨毯が水浸しという程度の「水の被害」。
「水は低きに流れる」、私のアトリエは日本流で1階が入り口、地下に大きなスペースがあるので何かあると我が家に「水」がやってくる。一度は上階に水道水を送るためのポンプが壊れ、もう一度は配管不備、これは理由が明白だったが、3度目は雷雨の雨が不思議な経路で我がアトリエに至った(これはひどい雷雨がないと発生しないだけにどこから来ているのか一年以上わからずアトリエ奥の天井に穴が開いたままだった)。
そして今回は、天井からの水漏れなので二階の留守らしい住人の水を止めれば解決と思ったのだが、それが止まずユー島のバカンスから帰らざる得なくなった。このため我がアトリエの上にアパートが2軒あることを初めて知ったのだ。そのもう1件はガーディアン曰く「『ごみ屋敷』で修理工が入れない」(でも住人がいるので水は止めれない)!!! 公団住宅にかけあうと「ソーシャルサービスの許可を取らないと入れない」と意味のわからないことを言う。「実際に水がポトポト落ち続けているのに何なんだ」と怒って、受付の玄関払いとわかっていても毎日電話&メールしていたのだが、突然解決!
その糸口は日本流でいう4階にあるHさんのアパートの床に水が侵入、Hさんが被害を訴えた故にそのお隣Dさんの水道の配管不備で我が家にも「害」にあったことが発覚した。しかし2階3階のアパートには何も被害なし。だから難しいケースであったのだが、19日もかかった :(
これで万事解決と言いたいところだが、なかなか。
フランスでは住宅は保険に入ることを義務付けられていて、こういうことが起きると「被害届」を被害者と事故の元となった住人とがそれぞれの保険会社に送ることになっているのだが、Dさんから連絡(返事)がこない。これは私が孤軍奮闘ではなくHさんもいるので助かるが、そのHさんは今朝ガードマンに「全部住宅公団が請け負うからDさんのサインはなくていい」と言われたとか。だが私のところには前日公団住宅から「Dさんに連絡するよう」という手紙がきて、さっきやっとそのDさんからメールが来たところなのだ。またまた情報の錯乱、、、。
ところでこの「水の被害」たるもの、非常に稀なものと思われるかもしれないがフランスでは頻繁に起こる(ちなみに前述のように我が家で4度目。いつでもたいてい知り合いの誰かの家で起こっている!)。F夫人の意見では dégâts des eaux は日本からの新参者が知るべき最重要単語だとか(笑)。電子機器に自動的に老朽化して使えなくなるよう仕組まれているとかいうスキャンダルがあったが、フランスの配管工事もローテクながらそういう細工をして、後日修理工事を請け負えるようにしているのではと私は真剣に疑ってしまう。
工事請負人はこれで儲かるが、住宅保険制度は不思議なもので、被保険者は被害を大きく申告して賠償金をもらうというのが常識なっていて、水漏れ程度では哀れがられるどころか、「しっかりお金取りなよ!」と応援される。「天井以外に被害ないけど」などと言っていると「こいつはバカか」としか思われないのである。でも本当にないし、、、。画用紙みたいな安い紙を濡らして、最高級の紙がダメになったということにするべきらしいのだが、私としては天井工事で毎日8時に起こされる日が来ると思うと憂鬱になるので、工事の時期に他のアトリエをもらいたい、、、。
工事・賠償金は、事故の元となったアパートの住人が加入する保険会社が支払う。だから私の歴代の「水の被害」は私の保険会社には痛くもかゆくもなかったはずなのだが、かつて「事故が多すぎる」という理由で契約打ち切りを一方的に通達された。事故処理が商売なのに、事故に関わる気がまったくないのだ。
「カフカがなぜフランスで生まれなかったのか?」とよく思うが、フランス人のほとんどはKをまどわす「城」の住人に他ならない。かつ彼らは一旦被害者となるや、Kやエイゾウとは違って「不条理」に悩まず、憤懣を大発散しながら見事にサーフする、カフカにはなかったラテン的天性を備えているのである。羨ましい。。。
私はこの「城」では知恵の回らない聖人君子の類だから、ちょうど水が垂れ出した日にちょうど友達が留守の我が家に泊まりに来ていたのですぐに発見され、かつ作品にはまったくダメッジがなかった、かつ汚水でないから、ということで文句は言いつつも、内心「あーよかった」と満足。つまり決定的な闘志に欠けているのだ〜。
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