2017年9月18日月曜日

オイルの鏡

前回の投稿から随分日が経ってしまい、実際に見たのは大昔になったが、予告したロワール川沿いの町のトゥールの展覧会について。

トゥールに行ったのはノルウェーのアーティストのペール・バークレイ(Per Barcley)の鏡面インスタレーションを見る為だった。建造物の床に黒いオイルを引きつめて、それが鏡となって空間全体が映る。パンフレットによれば89年以来、小さな部屋から巨大な工場跡や宮殿の間など、40近くの様々な箇所で制作されたらしい。何度も雑誌などで目にしたことがあるが本物は見たことがなく、ユー島へ行く道で丁度よい機会かと途中下車した。


さてその本物の印象は、、、「想像以上でも以下でもなかった」:失望もしないがあっと驚くこともなかった。

面白かったのはインタビュービデオ。いかにも現代アーティスト風で、難しい話をするのかと思って見始めたところ、随分率直で正直な話が飛び出してびっくり。というのも私は「ノルウェーは石油産国だから黒いオイルは原油で、、、」という話をどこかで読んだ覚えがあり、それも大きなコンセプトと思っていたら、黒いオイルはウリの種かなんかの植物油。床面に先ず水を張りその上にオイル、その層は1センチぐらいだそうで、、、。オイルの鏡面を初めて作ったのは自分の彫刻を見せるための工夫だった。それが独り立ちし、、、。黒面だけでなくミルクやワインで作ったり、、、。

「なんだそりゃ」私は自分の思い込みと違ってびっくり。
かつ彼は自分が彫刻家であることを強調し、この油の鏡面インスタレーションも、インスタレーションではなく撮った写真が作品と主張。実際にはこのインスタレーションで世界的に知られているので、意にそぐわず? 「売れっ子アーティスト」の悲哀を感じないでもないですね〜(笑)。

私はベトベトの原油だと思い込んでいたから、表面が塵で汚れてしまうのではという疑問も「本物詣で」をした理由だったが、さらさらの植物性オイルの表面はきれいなもの。毎朝掃除するそうです。


ノルウェーのデブレ画伯
このインスタレーション行われていたのは2015年に新設されたオリビエ・デブレ現代創造センター(website)。ロワール地方にアトリエの一つを持っていたオリビエ・デブレ Olivier Debré(1920~1999)はフランスの戦後を代表する抽象画家の一人。広い流れるようなペインティング空間の片隅にアクセントを置くような違うタッチの色彩を置く、小さなキャンバスから巨大な壁画まで応用が利く、なかなか上手いシステムを考えた(多くの絵がそういう構造)。ベールの展示に呼応して「ノルウェーシリーズ」が展示されていたが、白い空間の右上に青いポイントがあるのは、朝靄の上に山頂が頭を出しているようで、横の写真にも示される通り彼の抽象には具象的イメージが強かったことを初めて知った。でもセンターにあった白と青の基調の巨大な絵(下写真)は「ノルウェー」とばかり思っていたらロワール川で、、、つまりは何でも一緒になっちゃうんだけど。


 地下ではリー・ウーファンのインスタレーション。いつものようにアジア哲学していて(困)、、、「説明無用」と彼自身が言っていますのでノーコメント(笑)。


注意:ペール・バークレイの展示は9月3日、リー・ウーファンは17日で終わっています



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