2019年12月11日水曜日

グラン・パレのグレコ

前回の貨幣博物館の展覧会とは違い、グラン・パレ(Grand Palais)のグレコ(Greco)展の「フランス初の大規模な回顧展」という謳い文句には素晴らしすぎるほど嘘がない。画期的な展覧会!

プラド美術館から、トレドから、イタリア、東欧、メトロポリタン美術館から、、、もちろんルーブルも。世界中の約300点の作家の作品から75点が集められ、グレコらしい特有の色彩とデフォルメの多くの代表作ばかりか、初期のイコン画から数多く注文を受けた肖像画、それに彼が設計した祭壇にいたるまで、彼の全体像が紹介されている。 (グレコについてはウィキでもご参考に)

中央のホールにはワシントン・アートインストチュートから来た、イタリアから彼の活動の拠点となったトレドへ移ってまもなく描いた、代表作の一つの超大作の「聖母昇天」がそびえている。

その横にはこの下の絵の「ピエタ」。
グレコの絵画は「ティチアーノ、チントレットなどのヴェネチア派の色彩とミケランジェロの彫刻性を融合させた」と要約されるが、この強いカラー、そのコントラスト、解剖学的には正しい域を遥かに逸脱した垂れ下がる腕、足、歪んだ(ピカソのように)多視点的とも見える体、顔、、、その集約的な独特な構成が醸し出す不吉なリズムとドラマティズムは優に常軌を超えている。制作年は1580-90年とされるがキュビズム、ドイツ表現主義、シュールレアリズムを300数十年先取りしてしまった!!! びっくりしますね〜。


それが因果でスペイン王フェリペ2世に「祈る気にならない」と退けられて宮廷画家にはなれず(だがその頃プロテスタントから突き上げをくらっていたカトリック教会には人気があったようで、よかった〜)、しかし異色すぎてメインストリームから外れ、かつ18世紀には文化の中心がトレドからマドリッドに移ったこともあり歴史から忘れらてしまった。
そして19世紀末になり印象派やセザンヌ、ピカソが注目して再評価につながった(と印象派やセザンヌにそっぽを向けたフランスが誇っているのが面白い)。
この時代を超えた「ピエタ」は個人蔵で、なかなか一般の目に触れられないものだとか。これ見るだけでもこの回顧展来る価値ありますよ〜。

この「オリーブ園でのイエスの最期 L'agonie de Christ au jardin des olives」(Oracion en el huerto)も、鮮明な色彩、誇張された遠近法、複数場面の画面構成、、、すごいですねー、シュールですねー、わくわくしますねー。


 残念ながら遠くで来れないという方は次のグラン・パレの広報ビデオで行った気になってください(笑)




もう少し長いキューレーターさんの特別ガイドビデオもあります。
私が「ピエタ」に瞠目したのも当然、キューレーターさんも大きく取り上げています。


作品、会場の模様はこちらリンクのページに20枚もの写真がある(最初の写真枠でスクロールする)

しかしこういう展覧会(日本でよくある、例えば「グレコとなんとか」とかいうインチキな展覧会ではない)を見るとパリに住むことでいかなる恩恵に賜っているかとつくづく思い幸せになりますね〜。

2月10日まで グラン・パレにて

昼間っからストでがら空きで、しっかり見れたし。今晩も行こうかな〜♫ (アーティストカードがあるので☺ 気分良くして急に遅らせていた来年の年会費を払いました)

この眼球に差す光もトレードマーク?
常に荒い筆のタッチかと思うと北方ルネッサンス風のこういう厳格なる肖像画もこなした



いずれにせよグレコは長細く引き伸ばした人物像の、単なるマニエリズムの異端画家ではなかった。。。(ちょっと過小評価していた) 「すごいですねー」の連発で淀川長治になってしまった気分です。

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