パリに話を戻しましょう 😀
ポンピドーセンターで「パリのアメリカ人」という映画の題名をもじった(ただしAméricaineと女性形なので米女?)このあまりにくだらないタイトルで Shirley Jaffe シャーリー・ジャッフの回顧展が催されているのだが、これが意外に1人の作家がこつこつと辿った作品の変遷と制作の舞台裏を垣間見させる素晴らしい展覧会なのだ。
シャーリー・ジャッフ は言わずもがな、アメリカ生まれ(1923年)。ニューヨークの美術学校で学んだ後1949年にジャーナリストの旦那さんにくっ付いてフランスにやってきた。その頃は偶発性とかジェスチャ(動作)を重視する「抽象表現主義」がまっさかりで、彼女もその洗礼を受けた絵画を制作していた。その後彼女は63ー64年に奨学金を受けてベルリンに滞在したのだが、その時に転機が訪れ、徐々に簡略化された形のエレメントで構成する独自な抽象画に至り、その後はその道を地道に発展させた。
左に見えますが初期の作品、中央+右が晩年 |
私がパリに来た80年代はパリの有名画廊でよく目にしたが、世界的に著名な作家とは言えないように思う。ひょっとするとフランス暮らしだったのが災いしたか? その反対が同じく旦那さんについてニューヨークに行ったフランス人のルイーズ・ブルジョワ(世界的になった。ジョットと並んで私のベッドの上にも肖像が貼られている(笑)前投稿参考)だけど、ジャッフは一時ブルジョワのパリのアトリエを借りていた。サム・フランシスは彼女の制作を応援して自分のパリ郊外 Arceuil のアトリエで仕事をさせたそうだし、終の住まいとなった5区のアトリエは同じ通りにジョアン・ミッチェルが住んでいた。「パリのアメリカ人」にはこうした連帯がある(あった?)ようだ。
1956年 "Arceuil Yellow" サム・フランシスのアトリエで描かれた。まだ完全に抽象表現派 |
この辺が転機の作品 1964年 "Red Diamond" |
ジャッフが行きついた抽象作品はありそうで意外にない世界:幾何学的だがそれぞれにデッサンされた形とコントラスト最大の色彩の対比、それらの厳密で微妙な配置(均衡と不均衡)からリズムとポエジーが生まれ出される。
成熟期の作品、1985年 "Sailing" 初めてパリ近代美術館が購入👏 |
1991 "Criss Cross Center" T.モンクのジャズに関係? |
1993年 "4 square black" |
晩年になるとカラーが総て完全に平坦でなくて手塗りタッチがでてきます
"New York" 2001 |
"Las Vegas" 2010 |
"On the edge" 2009 |
結構気に入っているので例外的に沢山写真出しましたが、彼女の微妙なバランス感覚を味わってもらえたでしょうか? 逆に飽きられたかな〜?
最後に時代を遡って1968年、やっぱりマチスを研究しています。「ふーむ、これがああなるのか」と思うと感慨深くありませんか?
1968 "Little Matisse" |
ポンピドーセンター常設展内の特別会場(4階が入口で3階)、まだまだ8月29日まで続きます
美術館サイト:https://www.centrepompidou.fr/fr/programme/agenda/evenement/agYUNKn
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