2022年6月7日火曜日

キーファーファンの批判的「ヴェニス詣で」

One Kiefer fan's critical report on his exhibit Palazzo Ducale in Venice
 
今からヴェニスに出発。最近創造が枯渇、アトリエでだらだらしていると余計にやりきれないので社会見学:ヴェニスにはビエンナーレっちゅうもんもありまして(以下とBと略します)。プロのアーティストにあるまじく、実は私は今まで行ったことがないのです(笑)
 
でもそれは本命でなくてお目当てはBと同時開催中の、、、これがオンラインで切符が買えなくて(満席)、心配なんです〜(以上まだパリ=6月1日火曜)
 
目的地はあの海に面したピンクっぽいドゥカーレ宮、ヴェニス最大の観光スポットだから着いた午後は敬遠、2日目の朝9時半ごろに行ったところ行列もなくあっさり入れた〜! 中に入ると通常の観光コース通りでヴェロネーズとかティントレットなどが壁、天井にあまねく絵を描いた豪勢なホールを仰山見るのですわー。 キーファー、キーファーと矢印がしてあるのにちっとも行きつかない。そうそう、お目当ては私のブログで「またまた」のキーファー(Anselm Kiefer)なんです。4月に始まったばかりのBの報道で、ドゥカーレ宮のホールの壁が彼の絵で覆い尽くされた写真を見て、「また無茶苦茶やりやがって〜」と妬みと見たさ心頭に達し、我が忙しいスケジュール(笑)とフライトのプロモーションを見合わせて今回の「キーファー詣」にあいなったわけ。
 
ともかく通常の見学ルートで宮殿内をぐるぐると巡り、2000人を収容できると言う54m×25mの広大な「大評議会の間」にいたり、その幅いっぱいに描かれた、8年かかったとかいうティントレットの「天国」(ウィキ)に驚嘆しているうちに、私より遅く入館した観光客達に追いつかれ、みるみる人が増えている。これはやばいと先を急ぐと突然キーファーあった!(ほっ)
 
まずは控えの間みたいな小さなスペースに今回の表題作"Questi scritti, quando verranno bruciati, daranno finalmente un po' di luce" (これらの著作は焼かれた時少しの光を最後に放つ)が半円形に据えられている。 キーファー得意の地平に求心させる「荒野の遠近法」パターンで、いつもながらとはいえ効果的、はっとさせられる。表題は2018年のThaddaeus Ropac画廊(過去投稿)でのテーマだったイタリアの哲学者Andrea Emoによる。
 
その後が私が写真で見た四方の壁が絵で覆われたSala dello Scrutinio(「選挙の間」?)
今年はヴェネチア建国1600年でこのキーファー展はその記念行事で、彼はこのため特別に2020から21年にかけて制作したそうで、、、。確かにおそらく火事で焼けたドゥカーレ宮とライオンマークのヴェネチアの旗までが描かれ、天使もいる(前回紹介の今年のRopac画廊での個展にも天使が一枚あってなんじゃこりゃと思ったが、習作だったのか)。
しかし巨匠にしては注文を意識し過ぎたんじゃないかな〜。荒野の沼(?)で海と運河のヴェネチアの地形を考えさせないではないものもあったが、この程度の示唆でよかったのでは。でも宮殿と旗がないと、潜水艦の模型とかスーパーの手押し車がばんばんくっついているのとか、架設グラン・パレであったんじゃないかい? でもあん時は Emoでなくて詩人Paul Celanがテーマだったろ、どうなってんだ?おんなじやないかい? EmoもCelanも知らぬ私をたぶらかしたらあかんで〜。ビジュアル的な語彙が貧しいんやないかい? 
 
と期待が大き過ぎたからかもうひとつ感がある:絶対に架設グラン・パレの方が素晴らしかった。それはなぜか?
 
左の壁中央にドゥカーレ宮、その上が旗。正面の出入り口の上に天使がいる
 
下の光景をベネチアと見るのは私の深読みかどうか?

これが奥の方

肖像画を隠さなかったので余計に雑多感があるのだけど

火の手の回るドゥカーレ宮? 上に旗、下には沢山船が描かれていた
 
再問:架設グラン・パレの方が素晴らしかった。それはなぜか?
 
架設グラン・パレでは一枚一枚の作品が巨大な石碑のように暗い中に独立して屹立していたのに対し、「選挙の間」の絵画インスタレーションは異なった絵を並べてくっつけたオムニバス感(雑居感)が否めない。ドゥカーレ宮でやるのなら完全連続ものでやってほしかった。ティントレットのみたいに8年かけて(笑)。結局私が一番パワフルに感じたのは入り口の独立した作品だった。
 
これが表題作

と文句は出るがまたまた派手に鉛かけもしてあって 、無茶苦茶具合が気持ちいいが、これは破壊と再生という Emo の思想と関係しているのかもね?
 
若き女性も気にする鉛かけ。結構エロチックだからか?

天から降る鉛。迫力あります。おばさんたちを焼き焦がせ

剥がれたところが影になって強調されて凄みがある
 
ということでキーファーさん、まだまだやれますよ、頑張ってね 🏁
 
このあと見学コースは「ため息の橋」、牢獄と続き、カサノヴァを想い、出るまで歩きに歩き大変でした😄 
 
なのにこのあとビエンナーレに!(もちろんその前にランチをガツーンと食べて)
 

これが「大評議会の間」のティントレットの8年モノです(奥)

この展覧会は10月29日まで(情報量少ないけど一応ドゥカーレ宮のサイト
 
Questi scritti, quando verranno bruciati, daranno finalmente un po’ di luce (These writings, when burned, will finally cast a little light).

https://palazzoducale.visitmuve.it/en/mostre-en/mostre-in-corso-en/anselm-kiefer-at-doges-palace/2022/02/22305/anselm-kiefer-exhibition/

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