2015年10月12日月曜日

窓ぎわのトッドちゃん

フランスの人口論学者エマニュエル・トッドのインタビューを集めた新書を貰って、帰途の飛行機の中で読んだ。フランスでは1月のテロ事件以降、トッド氏はうさんくさく見られることが多くなったと思うが、私はちゃんと彼の本を読んだことがないので、彼の理論を知りたい方はウィキにもしっかり要約されているのでご参考を。
この「ドイツ帝国が世界を破滅させる」とセンセーショナルな題がつけられた本だが、インタビューなのでとても大雑把。私は全くドイツ通でないので本当に彼らが「支配的状況にあるとき、非常にしばしば、みんなにとって平和でリーズナブルな未来を構想することができなくなる」(彼は歴史が物語っていると言うが、、、)という特性を持つのかよくわからない。確かにユーロの危機に際して自国の経済倫理を絶対と押し付けているが、これはヨーロッパの当初の「合意」もあるし、それが世界レベルになりうるかも疑問だが私は経済通でもないので、、、。それから「地政学的には‥」という指摘も多かったが、7/19の投稿の末尾で書いたように、私は「地政学では何故すべての利害の対立が常に紛争に帰結せざるえないのだろう」といつも根底的な疑問を抱いているので何をか言わんや。

それなのに何故この本を紹介するかと言うと、フランスのことに関してはなかなか妙を得た指摘が幾つもあって、例えば2013/4/13「大臣の告白」の脱税していた財務大臣のカユザックに関し、
「私でも、医者のくせに病気にかかった人々の治療を目指すより、せっせと植毛クリニックの営業にいそしむカユザックのような人物に会ったら、こいつは金の亡者に違いないと勘づいただろう。ところがオランドは、そんな医者を大臣に抜擢した。いくらなんでも倫理的におかしんじゃないか。カユザックを選んだと言う事実が示唆するのは大統領が倫理的能力を不十分にしか持ち合わせていないということだ」とか、本当だよね〜(大笑い)。
そしてオランドの失敗:まず第一は「税率75%を強行することができなかった。大統領には国民投票という武器があるのに、彼は勝負にでなかった」というのは私も全く同感(旧ブログ2013/3/4参考)

他に自分の覚書き的に抜粋すると、
「金融権力(金融を統治する権限ということだと思う)はもともとは廉直で愛国的なドゴール主義の高級官僚らの手中にあったのだが、それが民間セクターに移行した。唯一保存されたのがシステムの超集権的性格だった」
「フランス人は普遍性を重んじるあまり特殊性が見れなくなる」(引用メモを忘れたのでこれは私なりの言い替え)、加えて 「自分たちの道徳観を地球全体に押し付けようとするアグレッシブな西洋人は、自分たちの方がどうしようもなく少数派であり、量的に見れば父系制文化の方が支配的だということを知った方がよろしい」とか。

つまりフランスに関してはなるほどと思うので、ドイツおよび世界状況についても彼の論は正しいと思うのが一応筋なのだが、、、やっぱり住んでない国のことはわからんです。(最近私は日本のこともすっかりわからない。私はこの本のメインではないフランス政治のことで楽しめてしまったのだが、日本の読者はカユザックとかオランドへのコメント、わかるのかなァ? 10万部突破ですよ! 本当に不思議) 読書後の結論、強いていえば、トッド氏も私も結局のところフランスが好きだということでしょうか。



過去の関連投稿
2015/7/19「戦争放棄を放棄してはいけない理由」
2013/4/13「大臣の告白」
2013/3/4「スポーツとしての資本主義」



2 件のコメント:

  1. 故ミッテラン大統領が死ぬ前に「私の後(の大統領)はもう会計士(Comptable)でしかなくなるだろう。」って予言したのと似たような事をトッドさんは言ってます。政治家でなくて会計士だからその場限りのお金の計算しかでけへんのんよ。ギリシャがEUに加盟する時、少なくともフランスを中心とする南ヨーロッパの国々は「ギリシャは欧州文明の源」と「ルーツを抱合せずしてヨーロッパは有り得ない」という論理だったのに、会計士の集合体だから、「ギリシャはまだ無理」に変わってしまったのと同じ。でも、日本も人の事は言えない。「中国はアジア文化のルーツだから」と尊敬する人が減ってる。誰もきちんと歴史を習わない、お金の計算しか習わない、、、歴史習わず短期的お金計算だけ習うととは長期的に眺めると滅び去るんだけど・・・。

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  2. ポムさん、コメントありがとうごじます。コメントを私の投稿の下に出したいのですが、色々試すのですが設定の仕方がわからなくて。つまり隠れてしまうのは私の趣旨ではありませんのでご容赦を。ところで「会計士になってしまう」というのはジャック・ブレルもその昔言っています。もしXXならばの前提を忘れてしまいました(笑)が、その時の主語は「我々全員」でした

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