先週はチャップリンウィークだった。チャップリンが彼のキャラクターを生み出して百年なことは5/8で既に述べたが、短編シリーズが外れだったので、多分観ていないと思っていた、マーロン・ブランド、ソフィア・ローレン主演のチャップリンが監督した最後の映画「伯爵夫人」(67年公開、原題:A Countess from Hong Kong)を観に行ったが、ドタバタ芝居のよくあるパターンであまり面白くなかった(でも映画ファンの集まるシネマテックでは珍しく最後に拍手があった)。
連続のバッドチョイスを払拭すべく、直後上映の「ライムライト」を梯子。映画の梯子は20年ぶりぐらいか? でもその甲斐あって、よかった! この映画は私はいつも観ても「涙ちょちょ切れ」だったのが、感受性が衰えたか、あるいはフィルムのデジタル修復があまりにも見事で、今まで見たことのない細部に目を奪われたからか、目が潤む程度でおさまった。
そして火曜にはテレビでチャップリンの人生を追うドキュメント番組、実はこれはこの記事を書くのに色々参考になった。それに続いて「独裁者」も上映されたが疲れたので半分でやめた。
さて、ここからが本題。
連続のバッドチョイスを払拭すべく、直後上映の「ライムライト」を梯子。映画の梯子は20年ぶりぐらいか? でもその甲斐あって、よかった! この映画は私はいつも観ても「涙ちょちょ切れ」だったのが、感受性が衰えたか、あるいはフィルムのデジタル修復があまりにも見事で、今まで見たことのない細部に目を奪われたからか、目が潤む程度でおさまった。
そして火曜にはテレビでチャップリンの人生を追うドキュメント番組、実はこれはこの記事を書くのに色々参考になった。それに続いて「独裁者」も上映されたが疲れたので半分でやめた。
さて、ここからが本題。
何ヶ月も前から予約していたチャップリンの娘、最後の奥さんオオナさんとの子供のヴィクトリア・チャップリン Victoria Chaplin(カリフォルニアで51年生まれたが、52年にレッドパージでチャップリンは事実上米国から追われた注のでスイスで育つ)と彼女の旦那のジャン=バティスト・ティエレ Jean-Baptiste Thierrée の「見えないサーカス」(cirque invisible)。彼らは69年に最近流行の詩的情緒ある芸術的振り付けをする「新しいサーカス」の先駆けとなるグループを作った。ティエレはほぼ何もしないマジシャン、色々な道具を持って来て観客を笑わせる。ヴィクトリアは綱渡りもする曲芸師で、旦那さんより大規模な装置や衣装を裏返したり、分解しては組み立てて、しばしば「奇怪な昆虫・動物」右下参考になる。右の写真では衣装につけられたコップやお鍋をたたいて音楽を演奏。何れにせよ私の好きなローテク発明の世界。
実は彼らの息子にジェームズ・ティエレ James Thierréeという、ふにゃっとした滑るような動きでシュールな世界を作る不思議なパーフォーマー(好きな単語ではないが俳優でもありダンサーでもありアクロバットかピエロでもあるから他に言いようがない)がいて、詩的な劇を作る。彼の劇団 Compagnie du Hanneton のLa Veillée des Abyssesというのを10年前アルテ(文化テレビ)の劇場中継で観てびっくり。中継を観ながら友達に電話してすぐTVをつけるようにと勧告?したほど感動した。彼がチャップリンの孫であることはその後知ったこと。かつこの劇の衣装は母親ヴィクトリアが担当していて、彼女も不思議なサーカスをし、娘のオレリア Aurelia(つまりジェームズの妹)とも作品を作っていると知ったのは後の後のこと。という訳で興味津々となり、前大統領サルコジの居城であるヌイイーまで見に行くことになった(同市のサブロン劇場は比較的小規模で座席は階段状でどの席でもみやすそうで、かつまあまあいい席が残っていた。加えてお金持ちの町なのに(だから?)安かったのでサイトで直ちにチケットを買ったのだった)。さて肝心の「出し物」の方だが、だいたいは夫婦が替わり変わり寸劇を披露するオムニバス方式。面白かったけれど期待していたほどではなかった。お笑いマジシャンみたいなのは日本でも昔からいるし、Cirque Plume などの80年代以来の「新しいサーカス」も私は色々観ている、それに短いコントの連続だとビデオで見た抜粋から本物があまり発展しないという面もあって(cirque invisibleのサイトにその抜粋ビデオあります)、、、というのがその理由だろう。でもこの夫婦、ヴィクトリアさんがはや63歳、ジャン=バティストはもっと上、調べてみたら何と1937年生! 唖然、もうそんな辛口は言えない。観客総立ちになるのも無理はない。メルシー、メルシー、大人子供一緒に楽しめる幻想童話的な世界、ありがとうございました。
しかしやはりチャップリンは本当に天才だと思う。近年(フランスでも)「親の七光り」の俳優や歌手がますます多くなったが、娘や孫がこのように舞台で類いない「創造性」を発揮するのは並大抵のDNAでない。そればかりか想像・創造の楽しさを伝えた。チャップリン本人も芸人夫婦の子供だが、シングルマザーに育てられ、14歳にして気の狂った母を自身で精神病院に連れて行き、そして路地で寝るという、上に行くしかなかった生活を送ったのにくらべ、子供達はスイスの邸宅で何不自由ない生活環境だ。親の財産管理しか能がない(興味がない?)多くの大芸術家の子供に比べてこれは驚くべくすばらしいことではないか。TVのドキュメンタリーでは邸宅の庭でチャプリンが子供達(36歳年下の若きオーナ夫人と8人もの子をもうけた)と一緒に変装して遊んでいる様子などが映ったが、米国時代は仕事のことしか頭になくて離婚の連続(いつも奥さんが異常に若くて、、、)だったが、スイスでの引退を余儀なくされた彼はそう言う時間生まれ、それを楽しむ第二の人生を過ごしたとか。「ライムライト」の冒頭の言葉で、正確に覚えていないが「古きが去り新しい世代へと移りゆく」というようなことが流れていたが、それをあの名作映画の中のごとく現実に体現した。
最後に私の推薦、ジェームズ・ティエレの、チャップリンのギャグを思い出さないこともないが、彼にはなかった新しいコミカルな身のこなしを見てもらいましょう
http://www.dailymotion.com/video/x1lgc1_la-veillee-des-abysses-james-thierr_creation
チャップリンの孫であろうがなかろうが素晴らしい(他にもウェブ上に抜粋は沢山ありますよ。でも劇全体のDVDはなくて、、、)
注:左翼的意見と未成年との再三の結婚(せざるえなくなる)スキャンダルのため目を付けられていたチャップリンは、52年ロンドンで「ライムライト」の世界初上映すべくニューヨークからクイーン・エリザベス号に乗船した翌日、電報で「米滞在ビザの取り消し。来米の際は尋問をする」との由を知らされた
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