2019年12月9日月曜日

パリ貨幣博物館のキキ・スミス

11/23の手抜き投稿のキキ・スミス Kiki Smith、作品は80年代から知っているし名前も容姿も良いので(笑)「超有名」と思っていたが、フランスではそれほどでもなくて今回のパリ貨幣博物館 Monnaie de Paris が初めての大規模な個展らしい。キキさんに関しては日本のギャラリーの紹介(ソース)をそのまま使わせてもらうと:

「1954年ドイツ生まれ。79年のはじめ頃から現在まで、身体の部位に関心を持ち、85年にはより専門的な知識を得るため緊急医療技師の資格を取得している。身体を内外の双方向から同時に洞察し、身体から器官や機能へと興味の対象が向かわせた。
 これまで、「生命の循環」「死と復活」などをテーマに、哲学的、社会的、精神的なアプローチで絵画、書籍、彫刻、ドローイング、版画を制作、またそれらをインスタレーションとして展開。古典的な神話や民話からストーリーが引用されることもあり、人間の本質を探るとともに、動物と人間との関係性について考察している」

まあこれで彼女の作品説明として完璧。つまりある意味「かなりわかり易い」。近年の個を宇宙の一部として捉えるヴィジョンのものは特にそう。80年代は解剖学的、生物的な「女」を、ガラスなどのちょっと一般的でなかった素材との組み合わせで新鮮な表現をしていて(それで頭角を表した)、ちょとギクッとするものもなきにしもあらずだったが、、、。
わかり易いことが悪いことでは全然ないのでそれはいいのだが、主人公は常に女性(彼女自身?)で彼女の具象的なイメージの世界に男性像は出てこない。動物はいっぱい出てくるけど。。。

ところで、というかちょっと本質的な気がしないでもないのは、彼女の父親はトニー・スミス Tony Smithという、公共彫刻も多くてがけたミニマリズムの有名作家で、グーグルすると厳格な幾何学形の作品が沢山出てくる。会場のビデオによるとキキさん姉妹は子供の頃、紙を折って姉妹でミニュチュア作りを手伝していたとか、、、。ちなみにお母さんはオペラ歌手で、妹は写真家になった。まさしく「アーティスト家族」。うらやましいような恐ろしいような家庭環境だが、この親子の作品似ても似つかない。この違いは強烈だと思いませんか? 

座っているのはお父さん本人と思われる

「父親像の全面否定? 男は?」と心配(詮索?)したくなるがこれ以上私にはなす術なし (笑)

さて貨幣博物館に戻ると、「80年代から現代までの100点近くの作品を展示する」と謳われていた割には昔の作品は少なく、大半が2000年代以降の神話的宗教的なテーマの作品。圧巻はアンジェ (Angers) の城にある14世紀の黙示録のタピストリーとそれに影響された20世紀のフランスの作家 Jean Lurçatの「世界の歌」"Le chant du monde" という大連作タピストリーから触発されて現在までに12枚制作したタピストリー(その6枚を今回展示)だろうか。デッサン、写真のコラージュをデジタル化し、それにまた手を加え、それをジャカード織機で織られたもので、版画っぽくもあり、浮世絵あるいは日本の屏風絵的なところもあり、面白い視覚的効果が出ていたと思う。



細部

でもこの展覧会、全体的にはもう一つインパクトを欠いたかな〜。大回顧展みたいな謳い文句と貨幣博物館は空間が面白いのでちょっと期待しすぎたか?

こんなに沢山書いて今更なんだ?…やっぱり父親不在が気になってしまった所為で、、、

彼女は女性を中心に据えてジェンダー問題なんかをテーマにして知られるようになったのだから「何言ってんの」かもしれませんけどね〜。

ブロンズ像とガラスのビーズ。やっぱり昔の方が謎めいていた
男はいたけど精子か〜。確かガラスのも見たことがある(と思う)多分80年代 

結局一押しではないけど(グレコ、ベーコンなんてすごい展覧会開催中なので)、
キキ・スミス(Kiki Smith):Monnaie de Paris にて、来年2月9日まで


 参考:2015年に投稿した貨幣博物館の記事(マルセル・ブロータス展) 一説によるとここでの現代アートの展示はこれで最後だとか

2019年12月4日水曜日

When I’m sixty four - 生まれてもいないのに

昨日「気分を良くし(?)」と書いたが実際にはもっと複雑な気分。ビートルズの歌にあるように「孫」と遊ぶわけでもなく、奥さんも子供もなしのなしなし尽くめ。友達たちが引退し身辺整理をし出す一方で、私はよく言えばアーティストの特権、悪く言えば永遠の幻想で、まだまだやりたいことがいっぱい、それどころか本当の仕事はまだ始まってもいないような、、、。ほんとにこの人生なんなんだ???

フランスを起点にして活動する舞踏家にして映画監督の岩名雅記さん(web site)が「生まれてもいないのに死ねるか」というような言葉をどこかで発していたと思う。昔はピンとこなかったが今日この頃それが切実に感じられるようになってきた。そろそろ膣から這い出せれるか、永遠に外界の光を知らずで終わるか? 正念場のシニア入り!

今朝は春に展示した郊外のウダン(Houdan)に「小品展」* の展示の手伝いに行く。ウダンのグループは私よりもっと年配層が中心で、私が「労力」として当てにされているところがあるのが恐ろしい(笑)* 。 これを思ってもシニアクラブなんかに入っていちゃダメですよね。



Petits formats(小品)は知っていたけど Petits prix(安価)てのは知らなかったのだけどどうすりゃいいの???今日どういう意図か聞かなきゃねー

* 後記:今回は参加者大勢だから各自が飾り付け、エゴイスティックに自分のだけで終わりました 

2019年12月3日火曜日

When I’m sixty four

今日は Will you still need me, will you still feed me, when I’m sixty four ♫
と何度も口ずさんでしまった。

64どころではなく11月に65歳になってしまい、パリの低所得老人は地下鉄バス無料乗車カードを請求できるらしいので区役所に申請に行ったところ、乗車カードは即座にはできなかったのだが、老人カードを作ってくれてパリのプールのリストを貰った。プールは老人無料なんて知らなかった〜。それに年末のプレゼントにチョコレートをくれるというので行ってみると会場では区長さんがいて来場者と握手していた。チョコはA3版ぐらい大きな箱でパリ市特製パッケージ。へーえ、来春は選挙あるしな〜(でも毎年こうなのかな〜?) なんだか急に知らない世界に入った感じ(ちょっとおおげさだが)。
というわけで気分を良くし(?)、帰りの道でビートルズの楽しい旋律のナツメロを口ずさみ始めたわけ *(この歌を知らない方は下のyoutube参考に)

さて日本から戻ったパリは以前より予告されていた木曜の「反年金改正スト」のニュースがまっさかり。当初は仏国鉄職員などが今まで享受していた特別システムが撤廃されるのに反対するものだったが、「黄色いベスト」運動に現れた社会に広く蓄積する不満を広く集めて「無期限ゼネスト」になる可能性大。まあこれは十分予知できたことで、実際私の「こっそり日本滞在」から日曜日に戻ったのは一つにはこれを考慮してのことだった。

年金システムに関しては私はよくわからないので書かないが、退職年齢に関し:
自身の経験および同年配の言うことから明らかなのは、当たり前のことだが、悲しいかな歳をとると体力も知力も衰える(個人差はあるとはいえ)。特に物忘れはひどくなる。だから私は、老人は責任ある任務から退いた方がいいと思う。世の中では(フランスでも日本でも)寿命延長に伴い退職年齢の延長が云々されるが、これは年金制度の会計収支的な議論でしかない。こうして老人の「能力低減」の観点は、会計的には不都合、一方老齢者に侮蔑的であるから誰も言い出さないのでそれを理由に退職年齢延長に反対する人を聞いたことがない。勿論仕事を続けたい人は重要度が低いポストで、、、それよりも社会活動に参加する形で続ければ良いと私は思うのだが。

ところで飛行場で「フランスは治安が悪くて心配だ」と言っている日本人二人組に「心配するならストでしょう。テロに巻き込まれる確率は極めて少ないけどストやデモはほぼ確実に少なからぬ迷惑を皆さん被るでしょうから」と教えてあげたけど残念ながら私の意見を聞く気配はなかった。きっと彼ら木曜以降苦労するよ〜。

* 追記:月曜にラジオをつけたら、仏文化放送はすでにストをしていて、私の好きな音楽ストリーミング(参考投稿)。結構ナツメロもかかるので、ビートルズが浮かんだのはそのせいもありますね。(でも「スト」リーミングのDJは博学的でもう少しマイナーの「軽音楽」曲がかかります。当分続きそうなので日本のみなさんも聞いてみたら:例えばGoogleしてFrance Cultureのサイトに入ってDirectというボタンをクリック)


2019年11月24日日曜日

身体より木

昨日は身体がテーマだったが(というほどの内容はなかったが)、樹木間のコミュニケーション能力について書いた本がベストセラーとなり対地球温暖化のエコロなご時世を背景に、一般的には最近パリの展覧会のテーマで目立つのは「木」。

カルチエ財団は「私たち樹木」。ここはいつものとおりよく言えば「博学的」(1/5まで)。改装オープンしたザドキン美術館(かつてのZadkineのアトリエでルクセンブルグ公園の裏にこじんまりと隠れている)は「森の夢想者」というテーマ(2/23まで)。超有名な「近代作家」が中心 * だが、以前紹介した「化学実験」する Hicham Berrada 君やボール紙をカットして「林」を作る Eva Jospin の作品もある。Evaさんの作品は着色されたここのより、SUZANNE TRASIEVE 画廊の"WOODS"(森)展の比較的大きな作品の方が、枝が入り乱れ、灌木に覆われたうっそうとした林を思い出させ迫力。これはまだ今週中まだ続く。


向かい側の同画廊のメイン会場では懐かしい感じのする Jörg Immendorff の個展昔(=80年の"Bad Painting"の時期)ドイツの売れっ子の一人だった彼はもっと漫画みたいな雑な絵だったと思うのだが、腕を上げた(?)のかこれ意外に楽しめた(下写真)。 これも同じく今週中


今日も手抜き記事ですが私の「備忘録」ですのでお許しあれ(メモしないとアーティスト名忘れるので) 

* 注:それこそ有名作家林立状態、マックス・エルンストの「森」も良いですよ見難いところに掛かっているけど(笑) 

後記:何か書き忘れたと思ったら「木」がテーマで知り合いが私の昔の「あぶり出しデッサン」の複製を一枚アミアンで展示してくれているのだった。J'ai oublié d'écrire : une amie organise une exposition dans le cadre du Festival de l'Arbre à Amiens, Une reproduction d'un de mes "dessins Aburidashi" sera là : 15, Mail Albert Ier, du 22 au 29 novembre 

「木を運ぶ人」
 

2019年11月23日土曜日

三体三様

これキキ・スミス(Kiki Smith):Monnaie de Paris にて、来年2月9日まで







Eizo Sakata(@eizo_sakata)がシェアした投稿 -

これ湯浅美浦(Miho YUASA)の欅の木彫:名古屋Lギャラリーにて、
個展は明日までですのでお早めに(?)



これ私(Eizo SAKATA)の「原始の人」
勿論「海水ドローイング」、これはアトリエから一歩も外に出たことがない😞


湯浅さんの個展の作品には私の「サナギ」シリーズに相通じるものもあって、頭の中で二人展を想像した。
キキさんも入れてあげてもいいけど(笑)*

「身体」といえばポンピドーセンターのベーコン(Francis Bacon)。技術も構成も色彩も、全て見事。 かつ展覧会としても充実しているのだが、昔は「切実」に感じられたあのデフォルメが実は今の私には滑稽に感じられてしまったのはどうしたことだろう?
これはすごく混んでいるから木曜のノクチューンの21時ごろから行った方がいいですよ:1月20日まで 

* 注:キキさんは2月まであるのでまた書くかも

2019年11月14日木曜日

新ヴェリブ利用での老翁心的ご注意

私のブログのヒットランキングを見ると18年5月の新ヴェリブの問題に関する投稿が上位なので、そのフォローとして新ヴェリブに関するご忠告を。

投稿から1年半経った今、流石に最近は自転車は簡単に見つかるようになった。

しかし新ヴェリブは以前に比べて使いにくい。最悪は単色液晶画面のハンドル中央にある標識板。暗くて見にくい。昔は自転車を戻した時、ガチャンといれてポートのLEDが緑になってOKというわかりやすさだったが、新ヴェリブはガチャンと入れたつもりでも上手く行かないことが多く、その度液晶画面でどうなったのか見ねばならない。かつその「標識」がわかりにくくて*、これはやっと最近になってやっと気がついたことなのだが、自転車から人が左に向かっている絵はストップ(つまり自転車がちゃんと戻せた)で、自転車から人が正面に向かっている絵は一旦停止(例えばパンを買ってすぐ戻るとか)でその場合はレンタルは継続されている。老眼の私にはこの分かり難さは致命的で、携帯に「一時間以上の使用中です」というアラームが入り始めてわかりその度に電話で「人が自転車を離れる絵を確認した」と抗議していたのだが、毎度罰金(超過料金)を取られた。1度目は仕方がないとしてそれ以降かなり注意してこれである。あほらしくなって余程の時しか使わなくなった。皆さんも使われる時には気を付けてください。

* 注 : 下がその標識。紙の上だと白黒でわかりやすいが、コントラストの低い現実の液晶上では特に昼間がわかりにくい。でもこの記号言語、新ヴェリブのスタート時期よりは改善されており、以前は左の記号でなぞなぞのようであった。お笑いでしょ。 絵なしで文字を画面いっぱいにしてくれた方が余程わかりやすくない? (新旧移行時に工事も満足に進められなかった会社らしい!)

2019年11月10日日曜日

パリの東のアートセンター

ブログも最近あまり書いていないが、舞台関係は皆無。というの実はこの1年以上見るものハズレばかりで、、、。先週見たロボット(メカ仕掛け)と踊るイスラエル・ガルバンなんてひどかったな〜。アーティストは自分に飽き足らず新しい試みをしてみたくなるものだが、昨年末見たサーカス小屋とのコラボも見ていて欲求不満になったし、もうファンやめます。(彼が素晴らしかった時の投稿はこれ)

他にも間違えなさそうと思ったブランデンブルグ協奏曲でのリプリーズのケースマイケル(以前の投稿)もひたすら眠たかったし、でもこれはほぼ天井桟敷の席だったからかもしれないが、日本大使夫婦と隣席するような特等席で見た 杉本博司も美しいけど紋切りで大枚叩いた甲斐はなかった(大使はどうせ招待だろうからうらやましい。冬に来た「能」の時も開幕寸前にさっと移動して座った特等席でも大使がいたので、ひょっとしたら本当にお好きなのかもしれないけど(???笑)。これはパリのホールに能楽堂が組み直されていただけでもちょっと感動ものだったが私には「能」は良し悪し判断不能なので「失敗チョイス」のうちには入っていません:)

加えて月曜日にカルチエ財団で素人芸をお友達に見せているような代物を見させられ(これは知り合いが行けなくなって券をもらったので実害はないけど)、舞台はもう勘弁とおもっていたところ、先日新鮮に感じるダンスを観た!

といっても展覧会の中の2分間だけのプロジェクションで。
これです。

La Minute de silence d'Ohad Naharin from Théâtre de Chaillot on Vimeo.

展覧会そのものは "Le Silence du Mouvement"(運動の静寂)というタイトルでパリの北東20区の区営アートセンター Pavillon Carré de Baudouin で開催中、これがなかなかレベルが高くびっくり。全体にはキネティック・アート的な作品が多かったが、円板が陰から陽に映るDamien Bénéteau の作品は仕掛けが分かっても見飽きないし、単純に見えるがそれほど単純ではない小さな小石が沢山天井から吊り下がってビジターが操作して動かす南ア出身のJustin Fiskeの作品はまさに「運動の静寂」(この二作、画像でも紹介したかったのだがビデオにすると面白くなくて、、、)。ドイツの Karina Smigla-Bobinskの 天井、壁に木炭のトレースを残すヘリウムバルーンは子供はもちろん私も楽しめた(楽しすぎてあまり静寂ではなかったが☺︎) アルゼンチンの Gladys Nistor も巧みに動と静の虚構を構築している。我が祖国(笑)を代表して仏在住の理科大出身の異色作家、砂川さん(Haruhiko SUNAGAWA) がテーマと経歴にふさわしい数学的作品を出品。加えて以前は20区のアーティストの展示が多かったように思うこのセンターでかくなる国際的展示(ビデオのダンスはイスラエルのコレグラフィー)を企画したのが Eko Sato という日本名の人でびっくりした(パリ生まれのハーフとのこと=面識ありません)。








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この20区に隣接する郊外のモントルーユ市はアーティストのアトリエの多い街として有名だがここに1年前にできた Centre Tignous ではモントルーユで制作する5人の女性アーティストが「考える素材」なるタイトルで展示中。文字通り素材がテーマなので金属、石、土、紙の彫刻家がメイン。次の写真はそこでの一風変わったファンタジーがあるMonica Mariniello 陶の彫刻




以上の2つのセンターは公営で入場無料。ともに下町と言える地区での文化政策、立派だと思う。3月に紹介したが20区にはこれは私営財団だが2014年以来Espace Monte-Cristoもあるし、意外にパリの東は充実している。同じ東でも私のいる13区はセーヌ河の南側で市長さんは「ストリートアート」一辺倒だからなー、悲しい(以前に書いたようにストリートアートは時代の潮流であっても芸術的創造性はあまりみられないと思う)

注:ヨーロッパの大都市は(何故か知らないが)概して中心から西に向けて、いわゆる「山手」が広がる傾向が強く、パリの美術館などは中央から西にあると思っていい。東は下町で小さな工場などがあったところにアーティストが住み着くようになったが、最近は不動産の値上がりでお金持ちがそれをロフトにするようになってきた。

今回は写真はインスタにリンクして簡単にと思ったらなかなかやりにくいことがわかった。もっと作品写真を紹介したかったのですがこのまま公開します。

Pavillon Carré de Baudouin  "Le Silence du Mouvement" は12月21日まで

Centre Tignous "Matières à penser" 12月14日まで